専用庭・庭付き賃貸の「草むしり・除草・樹木剪定」は借主の義務か

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」、民法(通常損耗・経年劣化の減価償却ルール)、および多数の退去費用減額・敷金返還交渉の裁判実務に基づきわかりやすく解説しています。

専用庭・庭付き賃貸の草むしりや剪定は誰の義務?

Q 専用庭の草むしりや樹木の剪定を怠ったとして、退去時に高額な費用を請求された場合、どこまでが借主の負担になりますか?
A 【結論】日常的な草むしりや除草は借主の善管注意義務の範囲内ですが、高木の専門的な剪定や、入居当初からの荒れ果てた庭の修復費用、また貸主が業者に丸投げした高額な見積もり全額を借主が負担する法的義務はありません。
【対処法】賃貸借契約書の特約の有無を確認し、過大な請求に対しては「善管注意義務の範囲外であること」や「専門的・構造的なメンテナンスは貸主の管理義務であること」を主張して減額交渉を行いましょう。必要に応じて消費者センターや弁護士などの専門家に相談することが有効です。

賃貸物件でありながら、戸建てや1階の部屋などで「専用庭(庭付き)」がついている物件は、ガーデニングや子供の遊び場として人気があります。しかし、入居中や退去の際にしばしば問題になるのが、庭の草むしりや除草、樹木の剪定といった手入れは誰の義務なのかという点です。

「庭に雑草がボーボーに生えてしまった」「植えてあった木が大きくなりすぎて隣家に迷惑をかけそうだ」といった状況のとき、管理費や修繕費をめぐって貸主と借主の間でトラブルに発展するケースが少なくありません。

弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所には、退去時に高額な除草費用や剪定費用を請求されたという相談が多く寄せられます。この記事では、契約上の敷地管理義務や、荒れ果てた庭の費用負担の考え方について詳しく解説します。

賃貸の庭における「善管注意義務」と日常管理の範囲

賃貸物件の庭を利用する場合、借主には民法上「善管注意義務(良き管理者の注意義務)」が発生します。これは、契約期間中、社会通念上要求される程度の注意を払って物件を維持・管理しなければならないという義務です。

これを庭に当てはめると、次のような日常的な管理は原則として借主の義務の範囲内と考えられます。

  • 伸びてきた雑草の定期的な草むしり・除草
  • ゴミの放置や害虫が発生するのを防ぐための基本的な清掃
  • 花壇の簡単な手入れなど、日常生活で想定される範囲の美化

もし、借主がこれらの手入れを全く行わず、雑草を放置した結果として害虫が大量発生したり、悪臭によって近隣トラブルに発展したりした場合は、善管注意義務違反と評価される可能性があります。

契約書(特約事項)の確認が最優先

庭の管理については、通常の賃貸借契約書とは別に、「専用庭利用細則」などの特約が設けられているケースが多くあります。

特約に「庭の雑草処理および除草剤の散布は借主の責任において行うこと」「芝生の刈込や簡易的な剪定は借主の負担とする」といった具体的な記載がある場合、原則としてそれに従う必要があります。契約時にこの規約に合意している以上、借主は庭の日常管理を行う義務を負うことになります。

荒れ果てた庭・樹木剪定の費用は誰が負担すべきか?

日常的な草むしりは借主の義務であることが多い一方、退去時などにトラブルになりやすいのが「高木の剪定費用」や「荒れ果てた庭の原状回復費用」です。これらについては、すべてを借主が負担しなければならないわけではありません。

1. もともと植えられていた高木の専門的な剪定

入居当初から庭にあった大きな木(シンボルツリーなど)の枝が伸びすぎた場合、それを一般の借主が自力で安全に剪定するのは困難です。 このような専門的な業者の手配が必要な大掛かりな剪定費用は、物件の資産価値維持や構造維持に関わるため、原則として貸主(オーナー)側の負担で行うべき性質のものです。借主が日常の手入れを怠った結果として特に傷んだ場合を除き、退去時に法外な剪定費用を請求される筋合いはありません。

2. 入居前から荒れ果てていた場合の原状回復

入居した時点ですでに雑草が生い茂り、庭が荒れていた場合、退去時に「元通り綺麗にして返せ」と要求されるのは不当です。契約時の状態(入居時チェックシートや写真)を証拠として残しておくことが極めて重要になります。

3. 国土交通省のガイドラインにおける考え方

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、借主の故意・過失や善管注意義務違反による損耗以外は、経年変化や通常損耗として貸主が負担すべきとしています。庭の管理においても、この基本原則が適用されます。

高額な除草・剪定費用を請求されたときの対処法

もし賃貸借契約の終了時や退去の際に、管理会社や大家から法外な「除草費」「剪定費」「庭の復旧費」を請求された場合は、以下のステップで冷静に対応しましょう。

  1. 請求内容と根拠の確認 なぜその金額がかかるのか、見積書の詳細な内訳を書面で提示してもらいましょう。
  2. 契約書と特約の再確認 庭の管理義務について、自分がどのような契約にサインしていたかを確認します。
  3. 入居時の状態を証明する 入居時の庭の状態がわかる写真や、日頃から管理を行っていた証拠を集めます。
  4. 専門家への相談 貸主側が不当に高額な費用を請求して譲らない場合や、話し合いが平行線をたどる場合は、泣き寝入りする前に法律の専門家である弁護士へご相談ください。

専用庭・庭付き賃貸のトラブルは、契約内容や庭の状態によって判断が分かれるため、個別の状況に応じた法的なアプローチが解決の近道となります。

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弁護士 井上正人

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弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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