賃貸借トラブルにおける原状回復費用や敷金返還をめぐり、少額訴訟を起こして見事に勝訴したものの、肝心の相手が支払いに応じてくれないというケースは決して少なくありません。「裁判に勝ったのにお金が返ってこないなんて」と絶望してしまうかもしれませんが、まだ打つ手はあります。
今回は、裁判所から相手へ「判決に従って支払え」と無料で促してもらえる「履行勧告」という制度について詳しく解説します。弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所が、その仕組みと具体的な活用法を分かりやすくお伝えします。
【支払わない場合の次のステップ】履行勧告に応じない場合でも、財産の差し押さえを行う「強制執行(財産開示手続や債権差押命令)」へスムーズに移行することが可能です。泣き寝入りせず、弁護士などの専門家に相談して確実な回収を目指しましょう。
少額訴訟で勝訴!しかし相手が支払わないときは?
退去費用トラブルや敷金返還請求で少額訴訟(60万円以下の金銭請求をスピーディーに解決する手続き)を利用し、見事に勝訴判決を勝ち取ったとします。これで一安心、すぐにでもお金が振り込まれるだろうと思いきや、相手(大家や管理会社、または借主)が期日になってもお金を支払わないというトラブルはよく起こります。
判決は「お墨付き」ですが、相手の銀行口座から自動的にお金が引き出されるわけではありません。相手が任意で支払わない場合、債権者側で次のアクションを起こす必要があります。そこでおすすめしたいのが「履行勧告」の制度です。
履行勧告とは?費用をかけずに使える裁判所の制度
「履行勧告」とは、少額訴訟の判決や和解調書などに基づき、裁判所が相手方に対して「裁判の結果に従ってきちんと支払いなさい」と口頭や書面で勧告(促す)してくれる制度です。
この制度の最大の特徴は、以下の3点にあります。
- 費用が一切かからない(無料)
- 手続きが比較的シンプル
- 裁判所という公的機関の威光を使える
強制執行(差押え)を行う場合、予納金や書類作成の手間、財産調査の難しさなど一定のハードルがあります。しかし、履行勧告であれば費用負担がなく、裁判所の名前で「早く支払わないと法的措置をとられますよ」というプレッシャーを相手にかけることができます。
履行勧告のメリットと注意点
履行勧告を利用する最大のメリットは、相手が「裁判所からのお達しなら無視できない」と観念して、任意で支払いに応じるケースがある点です。特に相手が法人の場合、裁判所からの通知を放置することは信用問題に関わるため、効果的です。
一方で、知っておくべき注意点もあります。
- 法的な強制力(財産を差し押さえる力など)はない
- 相手が無視を決め込んだ場合、強制力がないためそれ以上進まない
- 相手の居所や連絡先が不明な場合は利用できないことがある
つまり、履行勧告はあくまで「相手の任意の支払いを促すための第一歩」として位置づけられます。相手に誠意が見られない場合や、履行勧告を無視された場合は、速やかに次のステップである「強制執行(差押え)」へ移行する必要があります。
履行勧告の具体的な申し立て方法
履行勧告を利用したい場合、複雑な書類を新たに作成する必要はほとんどありません。基本的には、事件を担当した簡易裁判所の窓口に問い合わせ、「履行勧告の申出書」を提出します。
申出書には、以下のような必要事項を記載します。
- 事件番号(少額訴訟の番号)
- 申出人の氏名・連絡先
- 相手方の氏名・連絡先
- 請求内容(未払いの退去費用や敷金など)
裁判所が申出を受理すると、裁判所の書記官などが相手方に対して電話や文書で支払いを促してくれます。相手から直接あなたへ連絡が来るか、あるいは裁判所を通じて入金の意思が示されることになります。
履行勧告で解決しない場合の次の手立て
残念ながら、履行勧告をしても相手が支払いに応じない、あるいは居直ってしまうケースもあります。その場合は、履行勧告に固執せず、速やかに「強制執行(差押え)」の手続きに移行しましょう。
強制執行では、相手の預金口座、給与、あるいは賃貸人であれば家賃収入や所有不動産などを差し押さえて強制的に回収することができます。ただし、相手の口座情報や勤務先を特定しておく必要があるため、事前の調査が重要になります。
退去費用や敷金返還をめぐるトラブルで、判決を取ったものの回収に悩んでいる方や、強制執行の手続きに不安がある方は、泣き寝入りする前に専門家である弁護士にご相談ください。
原状回復・退去費用の高額請求でお悩みの方へ
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