賃貸住宅から退去する際、お風呂の浴槽や壁についた傷の修繕費用を請求され、戸惑ってしまう方は少なくありません。特に、FRP素材の浴槽やプラスチック製の壁に刃物を落としてしまったり、固い物をぶつけてえぐれたような傷を作ったりした場合、高額な修理代を請求されるのではないかと不安になりますよね。
浴室の傷は、全体を丸ごと交換する必要があるのか、それとも部分的なリペアで済むのかによって費用が大きく異なります。今回は、FRP浴槽や壁にできた傷の適切な査定方法と、リペア費用に関する正しい知識について弁護士の視点から解説します。
【不当請求への対処法】管理会社から新品交換の見積もりを提示された場合は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を根拠に、部分補修代および経年劣化を差し引いた金額への減額を交渉してください。特約がない限り、通常損耗を超える部分についても経過年数が考慮されます。
お風呂の傷と借主の責任範囲
賃貸物件の退去時における原状回復では、借主が故意や過失によってつけてしまった傷や破損(善管注意義務違反)について、修復費用を負担する義務が生じます。
お風呂のFRP浴槽やプラスチック壁の場合、以下のようなケースは借主の負担となりやすい傾向にあります。
- 浴室に刃物や重い陶器などを落として深くえぐれてしまった
- シャワーヘッドや硬い掃除用具を強くぶつけて大きな亀裂が入った
- 乱暴な扱いや不注意による明らかな破損
一方で、普通に入浴していて自然についた細かいスレ傷や、経年劣化による変色などは、貸主側(オーナー側)が負担すべき「通常損耗」とされています。したがって、どこまでの傷が借主の責任になるのかを正しく見極めることが重要です。
FRP浴槽・プラスチック壁は「部分リペア」が基本
刃物を落としたり固い物をぶつけたりしてできた傷について、管理会社や大家さんから「浴槽の交換が必要なので数十万円かかります」と請求されるケースがあります。しかし、これは法的・技術的に見て適正な査定とは言えない場合がほとんどです。
FRP(繊維強化プラスチック)や浴室の壁面パネルは、専門の浴室リペア業者による部分補修(リペア)技術が非常に発達しています。
- 傷の周囲を削って下地を整える
- 特殊な樹脂やパテで傷口を埋める
- 周囲の色に合わせて調色し、塗装・コーティングで仕上げる
このような専門技術を用いれば、浴槽を丸ごと交換しなくても、新品同様にきれいに修復することが可能です。そのため、原状回復の費用は「浴槽全体の交換費用」ではなく、あくまで「浴室専門リペア業者の施工費(数万円程度)」が適正額となります。
高額請求を防ぐためのポイント
もし管理会社から法外な見積書を提示された場合は、以下のポイントを確認し、冷静に対応しましょう。
- 見積もりの内訳を確認する(「浴槽交換」になっていないか)
- 専門業者によるリペアで対応可能ではないかと打診する
- 国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を確認する
- 経年劣化による価値の低下(耐用年数)が考慮されているか確認する
賃貸借契約の期間が長いほど、設備の価値は下がっていきます。入居から何年も経過している浴槽であれば、仮に交換が必要なほどの傷であっても、残存価値に応じたごく一部の負担しか発生しないのが原則です。
浴室の傷の修繕費用をめぐって納得がいかない請求をされたときは、一人で悩まずに専門家に相談することをお勧めします。
原状回復・退去費用の高額請求でお悩みの方へ
国交省ガイドラインに基づき、弁護士が適正金額への減額交渉・返還請求をサポートします。諦めて支払う前に、まずはお気軽にご相談ください。