小型犬・室内犬の「走り回りによるフローリングの擦り傷」の原状回復

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」、民法(通常損耗・経年劣化の減価償却ルール)、および多数の退去費用減額・敷金返還交渉の裁判実務に基づきわかりやすく解説しています。

賃貸物件でペットを飼育している方にとって、退去時の「床の傷」に関するトラブルは非常に多い問題です。特に小型犬や室内犬を飼っている場合、リビングや廊下を走り回ることで、フローリングに細かな擦り傷がついてしまうことがあります。

「ペット可の物件だから多少の傷は仕方ないのでは?」と考えていると、退去時に高額な修繕費用を請求されて驚くケースも少なくありません。

この記事では、犬の爪によってフローリングについた擦り傷の原状回復責任や、ワックス掛け・リペア補修での適切な対応について、法律とガイドラインの観点から詳しく解説します。

Q 小型犬の爪によるフローリングの擦り傷は、退去時に借主が全額負担しなければならないのですか?
A 【借主の負担範囲とガイドラインのルール】犬の走り回りによるフローリングの擦り傷は、そのすべてを借主が全額負担する必要はありません。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づき、通常の生活やペット飼育に伴う自然な損耗(経年劣化・通常損耗)は貸主負担となります。責任が生じるのは、マットを敷くなどの予防措置を一切怠るなど、借主の善管注意義務違反にあたる過失が認められる部分のみです。また、補修費用についても床全体の張り替えではなく、ワックス掛けや部分的なリペア補修で済む範囲が妥当とされています。
【不当な高額請求への対処法と減額交渉のポイント】もし貸主側から「床全面の張り替え費用」など高額な請求書を提示された場合は、安易に支払いに応じてはいけません。フローリングには経年劣化による資産価値の低下(耐用年数)が考慮されるため、古くからある床であれば残存価値はわずか数円〜数%まで下がります。ガイドラインや減額交渉の根拠を示して反論することで、理不尽な全額負担や過大な請求を大幅に抑えることが可能です。トラブルがこじれる場合は、消費者センターや原状回復に精通した専門家への相談も有効です。

犬の爪によるフローリングの傷と借主の負担範囲

賃貸借契約において、借主には部屋を善良な管理者の注意をもって使用する「善管注意義務」があります。ペットの飼育が許可されている物件であっても、ペットがつけた傷をすべて放置してよいわけではありません。

しかし、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、賃貸住宅の損耗を以下のように分類しています。

  • 通常損耗(経年劣化):普通に生活していて自然につく傷や汚れ(大家さん・貸主の負担)
  • 特別損耗(借主の責任):借主の故意や過失、善管注意義務違反によってついた傷や汚れ(借主の負担)

小型犬が走り回ることでついたフローリングの擦り傷は、ペット特有の損耗として扱われます。ただし、適切な対策(マットを敷くなど)を怠って床の木部下地まで達するような深い傷を作ってしまった場合などは、借主の責任(特別損耗)と判断される可能性が高くなります。

表面の擦り傷は「ワックス掛け」や「リペア補修」で十分対応可能

貸主や管理会社から、フローリングに犬の爪傷があることを理由に「部屋全体のフローリング張り替え費用」を請求されることがあります。しかし、これは法的に見て過剰な請求であるケースがほとんどです。

表面の浅い擦り傷であればワックスで対応できる

フローリングの表面にあるごく浅い擦り傷であれば、専門業者による「ワックスの塗り直し」や、表面の洗浄・コーティングで目立たなくすることが可能です。このような軽微な修繕費については、全体張り替えではなく、該当部分の軽微な補修費用として算出されるべきです。

深い傷や目立つ傷は部分的な「リペア補修」が基本

少し深い傷であっても、床全体を張り替える必要はありません。現代の建築・リペア技術は非常に進歩しており、傷ついた部分だけを削って色を合わせる「リペア補修(部分補修)」を行うことで、新品同様に綺麗に戻すことができます。

裁判例やガイドラインの考え方としても、原状回復は「経済的に合理的な方法」で行うべきとされているため、高額な全面張り替えではなく、リペア補修やワックス対応を主張することが非常に重要です。

ペット可物件における原状回復交渉のポイント

退去時に高額なフローリングの修繕見積もりを突きつけられたときは、冷静に以下のポイントを確認し、不当な請求に対しては毅然とした態度で反論しましょう。

  • 見積もりが「全面張り替え」になっていないか確認する
  • 経年劣化(時間の経過とともに価値が下がる点)が考慮されているか確認する
  • 国土交通省のガイドラインを根拠に、部分的なリペア補修やワックス対応への変更を求める

貸主側がペットの飼育を理由に「床の全てを綺麗にしなければならない」と主張してきても、契約内容やガイドラインに照らし合わせて、借主が負担すべき範囲は限定的であることを理解しておくことが大切です。

もし、管理会社や大家さんとの話し合いが平行線をたどる場合や、納得のいかない高額請求に悩んでいる場合は、一人で抱え込まずに専門家である弁護士にご相談ください。

原状回復・退去費用の高額請求でお悩みの方へ

国交省ガイドラインに基づき、弁護士が適正金額への減額交渉・返還請求をサポートします。諦めて支払う前に、まずはお気軽にご相談ください。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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