交通事故で車にはねられたり、バイクで転倒して頭部を強く打った(脳挫傷・クモ膜下出血・びまん性軸索損傷など)場合、命を取り留めて身体のケガが治った後にも、被害者の心や生活に深刻な影を落とす障害が残ることがあります。
それが「高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)」です。
これは脳のネットワークが損傷したことによる認知・行動・感情の障害であり、外見からは分かりにくいため「見えない障害」とも呼ばれ、周囲の無理解によって被害者とご家族が深く苦しむケースが後を絶ちません。
高次脳機能障害の4つの代表的な症状
高次脳機能障害の症状は多岐にわたりますが、代表的なものとして以下の4つが挙げられます。
- 記憶障害 新しいことが覚えられない、数分前に言われたことを忘れてしまう、同じことを何度も繰り返し聞く。
- 注意障害 一つのことに集中できない、気が散りやすい、同時に複数の作業(料理など)ができなくなる。
- 遂行機能障害 自分で計画を立てて物事を進められない、手順が狂うとパニックになる、指示されないと行動できない。
- 社会的行動障害(人格変化) 事故前は温厚だったのに突然激しく怒り出す(感情失禁)、子供っぽくなる、こだわりが異常に強くなる、TPOに合わない不適切な発言をする。
これらの症状は、病院の短い診察時間では医師も気づきにくく、毎日一緒に過ごしているご家族の「以前とは明らかに違う」という違和感・気づきが障害発見の最大の鍵となります。
高次脳機能障害の後遺障害等級(1級~9級)
高次脳機能障害が残ってしまった場合、自賠責の後遺障害等級では、その症状の重さ(介護・見守りの必要性や、就労の可否)に応じて、原則として1級、2級、3級、5級、7級、9級のいずれかに認定されます。
- 1級・2級:常に、または随時、他人の介護が必要な状態。
- 3級:介護は不要だが、一生を通して労務に就くことができない状態。
- 5級:単純な作業はできるが、新しい仕事や複数の手順を踏む仕事はできない状態。
- 7級:一般就労は可能だが、ミスが多く、効率が著しく落ちる状態。
- 9級:一般就労は維持できるが、問題解決能力などに軽微な低下が見られる状態。
高次脳機能障害が認定された場合、後遺障害慰謝料や逸失利益に加え、重度(1級・2級)の場合は将来の「介護費用」も認められるため、総賠償額は数千万円から1億円を超えることも珍しくありません。
認定の壁を突破するための「3つの要件」
高次脳機能障害は賠償額が非常に高額になるため、審査機関は極めて厳格な審査を行います。認定の壁を突破するためには、以下の「3つの要件」を客観的証拠によって完璧に立証する必要があります。
1. 頭部外傷(脳の損傷)の画像所見があること
事故直後、または治療経過中に撮影されたMRIやCT画像において、脳に出血や萎縮(脳が小さくなること)などの「器質的損傷」が写っていることが大前提です。特に「びまん性軸索損傷」は通常のMRIでは見落とされやすいため、微細な出血痕を発見できる特殊な撮影手法(T2*強調画像など)が必要になる場合があります。
2. 事故直後に一定期間の意識障害があったこと
事故直後から「半昏睡以上の意識障害が少なくとも6時間以上続いた」、あるいは「記憶がない・意味不明な言動をする状態(健忘症)が少なくとも1週間以上続いた」という医療記録(カルテ記載)が必要です。
3. 日常生活における具体的な支障(症状)の証明
ここが最も難しい部分です。医師が作成する「後遺障害診断書」や専用の「神経系統の障害に関する医学的所見」の他に、ご家族が被害者の日常の様子を事細かに記録した「日常生活状況報告書」が認定において極めて重要な役割を果たします。「いつ、どのような状況で、どのような不適切な行動をとったか」を具体的に記載する必要があります。
ご家族の皆様へ:弁護士が伴走します
高次脳機能障害の立証は、交通事故案件の中でも最高難度に位置します。 「病院の先生がよく分かってくれない」「家族がいくら言っても、本人は『自分はおかしくない』と怒り出し、検査を拒否する」といった困難に直面し、ご家族が疲弊しきってしまうケースも少なくありません。
夕陽ヶ丘法律事務所では、高次脳機能障害に特有の医療的・法的な課題に精通した弁護士が、専門医や医療コーディネーターと連携しながら、ご家族の負担を軽減し、適正な等級認定と賠償獲得まで全面的に伴走いたします。「もしかして…」と思ったら、手遅れになる前に、まずはお気軽に無料相談へお越しください。