交通事故の損害賠償問題の大部分は、当事者同士(または代理人弁護士)の話し合いによる「示談」で解決します。
しかし、過失割合で真っ向から意見が対立している場合や、後遺障害の存在を保険会社が頑なに否定してくる場合など、いくら話し合っても示談がまとまらない(決裂する)ことがあります。 そんな時でも、泣き寝入りする必要はありません。示談以外の2つの強力な解決手段、「ADR(紛争処理センター)」と「民事裁判」について解説します。
1. 無料で利用できる「ADR(交通事故紛争処理センター)」
ADR(Alternative Dispute Resolution:裁判外紛争解決手続き)とは、裁判所を使わずに、中立的な第三者機関に間に入ってもらってトラブルを解決する仕組みです。 交通事故においては、「公益財団法人 交通事故紛争処理センター」が代表的です。
ADRのメリット
- 利用料が無料:申立てや手続き自体に費用はかかりません(弁護士を代理人に立てる場合は別途弁護士費用がかかります)。
- 解決が早い:裁判が1年〜2年かかることがあるのに対し、ADRは数回の期日(数ヶ月程度)で結論が出ることが多いです。
- 強力な拘束力:センターが出した「あっせん案」に被害者が同意した場合、保険会社側は原則としてそれを拒否できない(拘束される)というルールになっています。
ADRのデメリット(限界)
- 争点が複雑すぎる場合(事故の目撃者がおらず、主張が完全に食い違っているような重い過失割合の争いなど)は、「ここでは判断できない」として手続きが打ち切られることがあります。
- 加害者本人が任意保険に加入していない場合などは利用できません。
2. 最後の切り札「民事裁判(訴訟)」
ADRでも解決しない場合や、最初から白黒はっきりつけたい場合の最終手段が、裁判所を通じた「民事訴訟」です。
「裁判」と聞くと、面倒で怖いものというイメージがあるかもしれませんが、被害者側にとって裁判を起こすことは、実は非常に大きなメリットがあります。
裁判を起こす3つの大きなメリット
- 完全な「弁護士基準(裁判基準)」で判決が出る 示談交渉の段階では、保険会社も意地になって弁護士基準の80%〜90%程度で妥協させようとすることがありますが、裁判になれば、裁判官は情け容赦なく「100%の弁護士基準」で適正な賠償額を命じます。
- 遅延損害金(利息)が上乗せされる 裁判で勝訴した場合、事故発生日にさかのぼって、賠償金全額に対して年3%(※民法改正により変動)の「遅延損害金(利息)」が上乗せされて支払われます。裁判が1年長引けば、それだけ利息がつき、被害者の受取額は増えます。
- 弁護士費用の一部を相手に負担させられる 判決までいった場合、裁判所が認めた賠償額の「約10%」に相当する金額を、「弁護士費用相当額」として加害者側に追加で負担させることができます。
裁判のデメリット
最大のデメリットは「時間」です。示談交渉なら1〜2ヶ月で終わるものが、裁判になると短くても半年、長ければ1〜2年かかることも珍しくありません。また、弁護士費用特約に加入していない場合、裁判のための着手金などを一時的に持ち出しで支払う必要がある場合もあります。
どちらを選ぶべきか?は弁護士の腕の見せ所
「今の段階で示談に応じるべきか」「ADRを使うべきか」「一気に裁判まで持ち込むべきか」。 この判断には、事故の証拠の強さや、依頼者の「時間とお金のどちらを優先するか」という希望など、高度な戦略が必要です。
夕陽ヶ丘法律事務所では、依頼者様にとって最も有利でストレスの少ない解決方法を見極め、徹底的にサポートいたします。「示談がまとまらない」とお悩みの方は、お早めにご相談ください。