交通事故の被害者が、まだ一度も働いたことがない「子ども(幼児、小学生、中高生、大学生など)」であった場合。
後遺障害が残ったり、命を落としてしまった場合、将来稼ぐはずだった収入に対する補償である「逸失利益(いっしつりえき)」はどのように計算されるのでしょうか? 「まだ働いていなくて収入がゼロだから、逸失利益はゼロ」などということは絶対にありません。子どもは無限の未来と就労の可能性を持っているため、国が定める統計データ(賃金センサス)を用いて、将来の収入を仮定して計算します。
子どもの逸失利益の基本的な計算ルール
子ども(未就労者)の逸失利益は、原則として「18歳(または大学卒業時の22歳)」から働き始めると仮定し、そこから定年(67歳)までの期間を労働能力喪失期間として計算します。
計算のベースとなる「基礎収入」は、以下の統計データ(賃金センサス)が用いられます。
- 全年齢平均賃金を用いるのが原則 現在まだ幼児や中学生などであり、将来どのような学歴・職業に就くか不確定な場合は、学歴を問わない「全労働者の全年齢平均賃金」を用いて計算します。
- 大学生等の場合は「大卒平均賃金」を使用可能 事故時点で大学生である場合や、進学校に通っていて大学進学率が極めて高い高校生などの場合は、「将来、大卒として働く蓋然性が高い」と認められ、より高額な「大卒の平均賃金」を基礎収入として用いることができます。
歴史的な問題:「子どもの男女格差」の是正
かつて、子どもの逸失利益の計算においては、極めて理不尽な「男女の賠償格差」が存在していました。
統計上、女性の平均賃金は男性の平均賃金よりも約3割〜4割ほど低くなっています(出産・育児による離職や、非正規雇用の割合が多いため)。 過去の裁判実務では、被害者が男の子なら「男性の全年齢平均賃金(約540万円)」を、被害者が女の子なら「女性の全年齢平均賃金(約380万円)」をそのまま当てはめて計算していました。 その結果、全く同じ年齢の同じ事故であっても、女の子であるという理由だけで、賠償金(逸失利益)が男の子の約7割に減額されてしまうという、到底納得できない事態が起きていたのです。
現在の裁判実務:女の子も「男女計の平均賃金」へ
この不合理な格差を是正するため、現在(平成11年以降)の裁判実務や弁護士基準(赤い本基準)では、画期的なルールが確立されています。
「幼児や児童などの年少女子については、将来労働市場に進出する際に、現在の男女間の賃金格差が将来にわたって存続するとは考えにくいため、女性の平均賃金ではなく【男女計の全年齢平均賃金(約490万円)】を基礎収入とする」
このルールにより、女の子であっても男の子に近い(あるいは等しい)水準の逸失利益を獲得することが可能になっています。
保険会社の「姑息な提示」に注意!
裁判基準では上記の「男女計の平均賃金(あるいは全労働者平均)」を用いるルールが確立しているにもかかわらず、加害者の任意保険会社は、示談交渉の段階では平然と「女性の平均賃金」を用いて計算した、不当に低い逸失利益を提示してくることが多々あります。
「女の子ですから、女性の平均賃金を使うのがルールです」などと、もっともらしい顔で説明してきますが、絶対に騙されてはいけません。
子どもの未来の価値を、保険会社の出し渋りのために安く見積もらせてはなりません。ご自身のお子様が交通事故の被害に遭い、後遺障害の不安や保険会社の提示額に疑問を感じた場合は、迷わず夕陽ヶ丘法律事務所にご相談ください。弁護士が介入し、お子様の正当な権利と未来を守るための適正な賠償を勝ち取ります。