交通事故の民事裁判(第一審・通常は地方裁判所)において、約1年〜1年半の長きにわたる戦いの末に下された「判決」。
もし、その判決があなたの主張(過失ゼロの主張や、重い後遺障害の存在など)を完全に否定し、相手の保険会社の言い分を丸呑みしたような不当な内容であった場合。 このまま泣き寝入りしなければならないのでしょうか?
日本の裁判制度には「三審制(さんしんせい)」が保障されており、第一審の判決に納得がいかない場合、上の裁判所に再審査を求めることができます。これを「控訴(こうそ)」と呼びます。
「控訴」のタイムリミットは極めて短い
第一審の判決を覆すための「控訴」には、極めて厳格なタイムリミットが設定されています。 それは、「判決書(判決の理由が書かれた書類)を受け取った日の翌日から起算して【2週間以内】」です。
この2週間の期間を1日でも過ぎてしまうと、どれほど判決内容に不満があっても、その判決は「確定」してしまい、二度と争うことができなくなります。 そのため、敗訴的な判決を受けた場合は、落ち込んでいる暇はありません。直ちに担当弁護士と「控訴審で戦える見込みがあるか」を協議し、控訴状を提出しなければなりません。
控訴審(高等裁判所)は「やり直しの場」ではない
控訴して高等裁判所での第二審が始まると、被害者の方は「よし、もう一度自分の口から裁判官に痛みを訴えよう」「新しい裁判官に一から事情を説明してわかってもらおう」と考えがちですが、これは大きな誤解です。
控訴審は、第一審のように証拠を1から出し合い、再び本人尋問を行うような「やり直しの場(覆審)」ではありません。 控訴審の目的は、「第一審の裁判官が下した判決(事実認定や法解釈)に、間違い(エラー)があったかどうかをチェックする(事後審)」ことです。
そのため、控訴審は非常にあっさりと進みます。 多くの場合、第一審で提出された証拠の記録(分厚いファイル)を高等裁判所の3人の裁判官が読み込み、「第1回期日」がわずか5分程度で終了し、そのまま「結審(審理終了)」となって、次回期日でいきなり判決が言い渡されることも珍しくありません。
控訴審で「逆転」するためのハードルと戦略
では、高等裁判所で第一審の敗訴判決をひっくり返し、逆転勝訴を勝ち取ることは不可能なのでしょうか? 決して不可能ではありませんが、ハードルは非常に高い(控訴が認められるのは1〜2割程度)のが現実です。
逆転を勝ち取るためには、単に「第一審の判決は間違っている、ひどい!」と感情的に主張するだけでは全く相手にされません。 弁護士が、以下のいずれかの高度な戦略を立てる必要があります。
- 第一審の裁判官の「論理的矛盾」を突く 第一審の判決文を徹底的に読み込み、「証拠Aと証拠Bがあるのに、なぜか証拠Aだけを採用して結論を出しているのは、経験則・採証法則に反する(論理的に破綻している)」という法的なエラーを鋭く指摘する。
- 決定的な「新証拠」を提出する 第一審の段階ではどうしても入手できなかった(または提出する必要性が見見えなかった)新たな強力な証拠(新しい医師の医学的意見書や、専門機関による工学鑑定書など)を提出し、「この新証拠を見れば、第一審の判断が間違っていたことは明白である」と裁判官を説得する。
和解で決着するケースも多い
控訴審においても、裁判官から「和解勧告」がなされることが多々あります。 高等裁判所の裁判官が「第一審の判決は少し相手(加害者)に有利すぎるな」と感じた場合、第一審の賠償額にいくらか上乗せした金額での和解案を提示し、双方が合意して控訴審が終了する(実質的な一部勝訴となる)ケースもよく見られます。
控訴すべきかどうかの「冷徹な判断」を
第一審で負けた悔しさから「絶対に控訴する!」と熱くなるお気持ちは痛いほどわかります。 しかし、勝算のないまま控訴しても、さらに半年以上の時間と弁護士費用を無駄にし、結局「控訴棄却(第一審の判決を支持する)」という冷たい判決文を受け取るだけで終わってしまいます。
控訴の決断において最も重要なのは、敗訴の原因を冷静に分析し、「高等裁判所の裁判官を説得できるだけの新たな法理や証拠の弾があるか」を見極める弁護士の「冷徹な相場観と法的判断力」です。 夕陽ヶ丘法律事務所では、第一審の判決を客観的に評価し、依頼者様にとって本当に利益となる(勝機がある)場合にのみ、控訴審での徹底抗戦をご提案いたします。