交通事故の民事裁判は、その大半の期間が「書類と証拠の提出(書面でのやり取り)」で静かに進みます。 しかし、裁判が終盤に差し掛かり、お互いの主張(特に過失割合や、事故とケガの因果関係など)が真っ向から対立して書面だけでは決着がつかない場合。
裁判官が自らの目で真実を確かめるために、当事者(被害者と加害者)を裁判所に呼び出し、証言台に立たせて直接質問に答えさせる手続きが行われます。 これが交通事故裁判の最大の山場である「本人尋問(ほんにんじんもん)」です。
尋問のプロセス:主尋問と反対尋問
本人尋問は、通常、被害者と加害者の双方が同じ日に法廷に呼ばれて行われます(おおむね半日〜1日かかります)。 尋問には、大きく分けて「主尋問(しゅじんもん)」と「反対尋問(はんたいじんもん)」の2つのフェーズがあります。
1. 主尋問(味方の弁護士からの質問)
まず、あなたが証言台に立ちます。そして、あなたの味方である弁護士(原告側代理人)が、事故の状況やケガの痛み、日常生活でどれほど苦労しているかなどについて質問をします。 これは事前に弁護士と綿密に打ち合わせをした通りに答える「アピールの時間」であり、裁判官にあなたの被害の大きさと真実性を伝える重要なプロセスです。
2. 反対尋問(相手の弁護士からの厳しい追及)
主尋問が終わると、今度は相手(加害者の保険会社)の弁護士が立ち上がり、あなたに対して質問をしてきます。 相手の目的は「あなたの証言の矛盾や曖昧な記憶を突き、信用性を落とすこと」です。
- 「本当に赤信号を確認したんですか?」
- 「事故の数日後にはもう痛みが引いていたとカルテに書いてありますよね?」 など、時には威圧的で意地悪な質問が飛んできます。ここで慌てて嘘をついたり、曖昧な返答をしてしまうと、裁判官の心証が悪くなってしまいます。
嘘をつく加害者を「反対尋問」で撃破する
被害者の尋問が終わると、次は「加害者(被告)」が証言台に立ちます。
自己保身のために、「私は一時停止しました」「スピードは出していません」「相手が急に飛び出してきました」と、息を吐くように嘘をつき続ける加害者がいます。 この加害者の嘘のメッキを剥がし、裁判官の面前で真実を暴き出すのが、被害者側の弁護士による「加害者への反対尋問」です。
弁護士は、加害者の主張が物理的・客観的にいかにあり得ないかを、証拠を用いて追い詰めていきます。
- 「あなたは時速30キロだったと証言しましたが、ブレーキ痕の長さが15メートルあることと物理的に矛盾しませんか?」
- 「一時停止の標識が見えなかったと証言していますが、現場のこの写真を見てください。これで見えないはずがありませんよね?」
- 「さきほど〇〇と言いましたが、警察の実況見分調書では全く違うことを言っていますね。どちらが嘘ですか?」
矢継ぎ早に矛盾を突かれた加害者は、やがて言葉に詰まり、証言がしどろもどろになります。この瞬間、裁判官は「加害者の証言は信用できない(嘘である)」という確固たる心証を抱くのです。
尋問の勝敗は「事前の準備(リハーサル)」で決まる
尋問は、テレビドラマのようにその場のアドリブで劇的な展開が起こるものではありません。尋問の成否は、当日の発言ではなく「事前の綿密な準備」によって9割が決まっています。
被害者様にとって、厳粛な法廷で、黒い法服を着た裁判官に見つめられながら、相手の弁護士から厳しい追及を受けることは、尋常ではないプレッシャーとなります。 だからこそ、夕陽ヶ丘法律事務所では、尋問期日の前に十分な時間をとり、弁護士が相手役となって「本番さながらの尋問リハーサル(尋問テスト)」を何度も繰り返します。
- 相手の弁護士が突いてくる弱点はどこか。
- 「覚えていません」「わかりません」と答えるべきラインはどこか。
- 挑発に乗って感情的にならないための心構え。
これらを徹底的にシミュレーションすることで、当日は落ち着いて真実だけを語ることができるようになります。 また、本番中に相手の弁護士がルール違反の不当な質問や、あなたを不必要に侮辱するような質問をした場合には、私たちが即座に立ち上がり「異議あり!」と声を上げてあなたをお守りします。 加害者の嘘を許さず、正義を貫くための裁判を、私たちは最後まで共に戦い抜きます。