交通事故の過失割合を判断する上で、大前提となるルールがあります。 それは「交通弱者保護の原則」です。
道路交通法上、車(四輪車)と比べて、怪我のリスクが高い自転車や歩行者は「交通弱者(優位性の低い者)」として強く保護されます。 そのため、同じような状況で事故が起きても、車同士なら「50対50」になるようなケースでも、車と自転車の事故であれば「車:80、自転車:20」というように、車の過失が極めて重く(自転車の過失が軽く)設定されています。
しかし、近年自転車による危険な運転が社会問題化する中で、「自転車なら何をしても許される」というわけでは決してありません。自転車側が明らかなルール違反を犯していた場合、自転車側にも厳しい過失割合が突きつけられるケースが増えています。
自転車の責任が重くなる「3つの重大な違反」
自転車は法律上「軽車両」であり、車の仲間です。以下のルール違反を犯して事故を起こした場合、自転車側にも30%〜50%、最悪の場合は100%近い過失が問われることがあります。
1. 赤信号無視による交差点進入
信号機のある交差点での事故は、信号の色がすべてを決定します。
- 車が「青」、自転車が「赤」で交差点に進入して衝突した場合: 基本割合は【車:20%、自転車:80%】と、自転車側が圧倒的に悪くなります。 ※もしこれが車同士なら「車A 0%:車B 100%」ですが、相手が自転車の場合は「車側も、赤信号を無視して自転車が突っ込んでくるかもしれないと予測して回避すべきだった」として20%の過失を取られてしまうのが実務の厳しいところです。
2. 逆走(右側通行)による事故
自転車は、車道の「左側端」を通行しなければなりません(道交法17条)。道路の右側を走ることは「逆走」という非常に危険な違反行為です。
- 見通しの悪い交差点等で、車(左側通行)と自転車(右側逆走)が出会い頭に衝突した場合、通常の自転車事故よりも+10%程度、自転車側に不利な過失(自転車の責任が重くなる)が加算される修正要素となります。
3. スマホの「ながら運転」や「無灯火・傘差し」
夜間にライトを点けない「無灯火運転」、傘を差しながらの「片手運転」、そして近年非常に多い「スマートフォンの画面を見ながらの運転」。 これらの著しい不注意(著しい過失・重過失)があった場合、自転車側に+10%〜20%の過失が加算されます。
自転車に乗る被害者の方へ:過失相殺の恐ろしさ
「自分は自転車に乗っていて大怪我をした被害者だ。過失が20%や30%あっても、相手の保険会社が治療費も払ってくれるだろう」と安易に考えてはいけません。
自転車側の過失が30%や40%と大きくなった場合、「過失相殺」のルールによって、相手から受け取れる賠償金(慰謝料や休業損害など)が3割〜4割も減額されてしまいます。 さらに恐ろしいのは、もし相手の車に大きな損害(修理費が何十万円もかかる高級車のヘコミなど)があった場合、自分の過失割合(30%分など)に応じて、相手の車の修理代を自腹で(あるいは自身の個人賠償責任保険等で)賠償しなければならなくなるという点です。
車を運転する加害者(被害者)の方へ
逆に、理不尽な自転車の飛び出しや逆走によって事故を起こしてしまった車のドライバーにとっては、「なぜこんなルール無視の自転車のせいで、自分ばかりが重い過失(80%など)を背負わなければならないのか」と強い憤りを感じるはずです。
保険会社はマニュアル通りに「自転車相手だからあなたの過失が大きいです」と済ませようとします。 しかし、ドライブレコーダーの映像を解析し、自転車の「一時停止無視」「スマホ操作」「イヤホン装着」などの修正要素を弁護士が法的に主張することで、自転車側の過失を大幅に引き上げ、自身の負担を減らす(あるいは自分の車の修理代をしっかり払わせる)ことが可能です。
自転車と車の事故は、双方が「自分の方が被害者だ」と主張し合い、泥沼化しやすい類型です。不当な過失割合を押し付けられる前に、夕陽ヶ丘法律事務所にご相談ください。客観的証拠に基づき、妥当な解決へと導きます。