交通事故の過失割合で相手と意見が食い違い、かつ決定的な証拠となる「ドライブレコーダー」がお互いにない場合、どうすれば真実を証明できるのでしょうか。
この時、頼みの綱となるのが「刑事記録(警察が作成した捜査の記録)」です。ここでは、刑事記録の重要性と取り寄せ方について解説します。
過失割合の交渉で重要になる「刑事記録」とは?
交通事故が発生すると、警察(交通課)は当事者を処罰するために刑事事件としての捜査を行います。その過程で作成される膨大な書類の中で、民事の損害賠償(過失割合の決定)において特に証拠価値が高いのが以下の2つです。
1. 実況見分調書(じっきょうけんぶんちょうしょ)
警察官が事故現場に当事者を立ち会わせ、道路の幅、ブレーキ痕の長さ、衝突地点、見通しの状況などをメジャーで測り、詳細な図面と写真付きでまとめた書類です。 「物理的な痕跡」が正確に記録されているため、「相手は時速何キロ出ていたか(ブレーキ痕から逆算)」「どこでぶつかったか(衝突地点の破片から推測)」を客観的に証明する最強の武器となります。
2. 供述調書(きょうじゅつちょうしょ)
警察官が当事者や目撃者から聞き取った話をまとめた書類です。 事故直後の、まだ相手が「入れ知恵(嘘)」をする前の素直な証言が残っていることが多く、「実はスマホを見ていて前を見ていませんでした」といった相手の自白が記録されていれば、過失割合を有利に修正できます。
刑事記録は「物損事故」では作られない?
ここで非常に重要な注意点があります。詳細な「実況見分調書」や「供述調書」が作成されるのは、警察で「人身事故」として処理された場合のみです。
もしあなたが首を痛めているのに、警察への手続きを面倒がって「物損事故(ケガ人がいない単なる物の事故)」のまま処理してしまうと、警察は簡単な「物件事故報告書」という紙切れ1枚しか作成しません。これにはブレーキ痕などの詳細な記録は一切載らないため、後から過失割合で揉めた時に証拠として全く使えなくなってしまいます。 ケガをした場合は、必ず医師の診断書を警察に提出し、「人身事故」に切り替えておくことが極めて重要です。
刑事記録の取り寄せ方法(時期と場所)
刑事記録は、事故が起きてすぐに見られるわけではありません。
取り寄せができるタイミング
警察での捜査が終わり、検察庁に書類が送られ(送検)、検察官が加害者を起訴・不起訴・略式命令(罰金)などにする「刑事処分が確定した後」でなければ、原則として開示されません。事故から数ヶ月〜半年以上かかることもあります。
どこに取り寄せるのか?
書類はすでに警察署を離れているため、加害者を担当した「地方検察庁(または区検察庁)」に対して開示請求を行います(謄写申請といいます)。
弁護士による刑事記録の活用
ご自身で検察庁に足を運び、書類を閲覧・コピーすることも制度上は可能ですが、平日日中の対応が必要であり、非常に手間がかかります。
交通事故に強い弁護士に依頼すれば、「弁護士法第23条の2に基づく照会(弁護士会照会)」などの権限を利用して、迅速かつ確実に刑事記録を取り寄せます。さらに、取り寄せた分厚い実況見分調書の中から、「ブレーキ痕の長さ」や「路面の摩擦係数」といった物理データを抽出し、「相手の主張する速度(時速40km)でこのブレーキ痕が残るのは物理法則に反する」といった論理的な意見書を作成し、保険会社を論破します。
相手の嘘に悩まされ、証拠がなくてお困りの場合は、夕陽ヶ丘法律事務所にご相談ください。刑事記録という「隠された真実」を武器に、適正な過失割合を勝ち取ります。