相手の保険会社から提示された過失割合(例えば「8対2」や「7対3」)を見て、「どう考えてもおかしい」「相手のほうがもっと悪いはずだ」と納得がいかないケースは非常に多くあります。
過失割合は、そのまま最終的な賠償金額の減額(過失相殺)に直結するため、少しの妥協が大きな損害を生むことになります。 提示された割合に不満がある場合、どのように反論し、覆せばよいのでしょうか。その鍵となるのが「修正要素」と「客観的な証拠」です。
保険会社の「基本割合」を覆す「修正要素」とは?
前述の通り、保険会社は「別冊判例タイムズ」という過去の裁判例をまとめた本を基準に過失割合を算出します。 しかし、彼らが最初に提示してくるのは、あくまで典型的な事故パターンに当てはめた「基本割合」に過ぎません。
実際の事故は、天候、時間帯、道路状況、運転手の属性など、一つとして同じものは存在しません。そのため、判例タイムズには基本割合にプラスマイナス(通常10%〜20%程度)の修正を加えるための「修正要素」が定められています。
主な修正要素の例
過失割合を自分に有利に(相手に不利に)傾けることができる代表的な修正要素には、以下のようなものがあります。
- 著しい過失(+10%〜20%程度)
- 携帯電話(スマホ)を見ながらの「ながら運転」
- 著しい前方不注視(脇見運転)
- 酒気帯び運転
- 時速15km以上30km未満の速度違反
- 重過失(+20%以上)
- 居眠り運転
- 酒酔い運転
- 無免許運転
- 時速30km以上の速度違反
- 被害者の属性による修正
- 被害者が「児童(小学生以下)」や「高齢者(65歳以上)」の場合、運転者はより強い注意義務を負うため、加害者の過失割合が加算(被害者の過失が減算)されます。
- 状況による修正
- 夜間(見通しが悪い)
- 幹線道路(交通量が多くスピードが出やすい)
- 住宅街や商店街(歩行者が多い)
相手の保険会社は、支払う賠償金を減らすために、あえてこれらの加害者側に不利な修正要素を無視したり、被害者側に不利な修正要素だけを過大に評価して提示してくることがあります。
納得いかない過失割合を覆すための「3つのステップ」
提示された過失割合を覆すためには、「納得がいかない!」と感情的に反論するだけでは不十分です。客観的な根拠を示す必要があります。
ステップ1:絶対に示談書にサインしない
最も重要なのは、「納得がいかない間は、絶対に示談書(免責証書)にサインしたり、ハンコを押したりしない」ことです。一度合意が成立してしまうと、後から「やっぱり割合を変えてほしい」と覆すことは法的にほぼ不可能です。
ステップ2:警察の「実況見分調書」を取り寄せる
人身事故の場合、警察が事故現場で当事者の立ち会いのもと作成した「実況見分調書」という書類が存在します。これは刑事記録の一部ですが、弁護士などを通じて取り寄せることが可能です(検察庁での手続きが必要)。 この調書には、事故当時の車の位置、ブレーキ痕の長さ、見通しの状況などが詳細に記録されており、保険会社の主張と実際の警察の記録に矛盾がないかを確認する強力な証拠となります。
ステップ3:ドライブレコーダーなどの「客観的証拠」を集める
過失割合の争いにおいて、近年最も強力な武器となっているのが「ドライブレコーダーの映像」です。
- 相手は「自分は青信号だった」と主張しているが、ドラレコには「赤信号」がはっきり映っている。
- 相手は「そっちも動いていた」と主張しているが、ドラレコでは「完全に停車」している。
このような「言った・言わない」の水掛け論を、映像という動かぬ証拠が一瞬で解決します。 もし自分の車にドラレコがなくても、現場近くの防犯カメラの映像や、目撃者の証言が有力な証拠になることがあります。(※防犯カメラの映像は上書き保存されてすぐに消えてしまうため、事故直後のスピード勝負となります)
過失割合の争いは弁護士の専門領域です
過失割合を適正なものに修正するには、判例タイムズを正しく読み解く法的知識と、警察や検察庁から記録を取り寄せる実務的なノウハウ、そして保険会社と論理的に渡り合う交渉力が必要です。
「相手の主張が嘘ばかりで許せない」「保険会社の高圧的な態度に押し切られそうだ」と悔しい思いをされている方は、ぜひ夕陽ヶ丘法律事務所にご相談ください。弁護士があなたの代わりに証拠を集め、徹底的に争い、正当な過失割合の獲得を目指します。