交通事故によるケガ(骨折、むちうち、打撲など)で入院や通院を余儀なくされたことに対する精神的苦痛を金銭で補償するものが「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」です。
入通院慰謝料の金額は、「どれくらいの期間、治療にかかったか」によって決まりますが、計算に用いる基準(自賠責・任意・弁護士)によって金額に雲泥の差が生じます。ここでは、入通院慰謝料の正しい計算方法の仕組みを解説します。
基準によって全く違う計算方法
入通院慰謝料は、以下の3つの基準のどれを使うかによって計算式や相場が変わります。
1. 自賠責保険基準(最低限の補償)
計算式が明確に定められています。
- 1日あたり 4,300円 (※令和2年4月1日以降の事故の場合)
- 以下のAとBのうち、少ない方の日数を採用して 4,300円を掛けます。
- A:初診から治療終了までの「総治療期間」
- B:「実際の通院日数」× 2
(例)治療期間90日(3ヶ月)で、実際に通院したのが30日の場合 Aは90日、Bは60日(30日×2)となり、少ない方の「60日」が採用されます。 60日 × 4,300円 = 258,000円 が自賠責基準での慰謝料となります。
2. 任意保険基準(保険会社の独自基準)
各保険会社が独自に定めている非公開の基準ですが、かつて統一して使われていた「旧任意保険支払基準」とほぼ同等か、自賠責基準に少し上乗せした程度の低い金額になります。
3. 弁護士基準 / 裁判基準(適正な補償)
弁護士が介入した場合や裁判で使われる、最も高額な基準です。 計算式ではなく、赤本(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準)に掲載されている「入通院慰謝料算定表(別表Ⅰ・別表Ⅱ)」の縦軸(入院月数)と横軸(通院月数)が交差する部分の金額をそのまま用います。
弁護士基準の「別表Ⅰ」と「別表Ⅱ」の違い
弁護士基準(赤本)の算定表には、ケガの程度によって2種類の表が用意されています。
- 別表Ⅰ(重傷用):骨折、脱臼、靭帯断裂、他覚的所見(MRIやレントゲンで異常が確認できる)があるむちうちなどに適用される、金額が高い表です。
- 別表Ⅱ(軽傷・むちうち用):打撲、捻挫、他覚的所見がない(画像検査で異常が見られないが痛みがある)むちうちなどに適用される表です。別表Ⅰに比べて金額は約3分の2程度に抑えられています。
(例)通院のみで3ヶ月(90日)治療した場合の比較
※他覚所見のない「むちうち(別表Ⅱ)」を想定
- 自賠責基準(実通院30日の場合):約25.8万円
- 任意保険基準:約37万円〜40万円程度(推定)
- 弁護士基準(別表Ⅱ):53万円
このように、ケガの治療期間が長くなればなるほど、弁護士基準と他の基準との差額は数十万円から数百万円にまで開いていきます。
注意!通院頻度が少なすぎると減額される
弁護士基準の算定表は、原則として「治療期間(月数)」をベースに慰謝料を算出します。 しかし、「仕事が忙しくて、月に1回しか通院していなかった」といった場合、通院期間が長くても、実際の通院日数が少なすぎるとして「実通院日数×3倍」などの少ない日数を基準に慰謝料が大幅に減額されてしまうことがあります(これを実通院日数の修正と呼びます)。
適正な慰謝料を受け取るためには、「医師の指示に従い、適切な頻度(むちうちなら週2〜3回程度)で継続して通院すること」が非常に重要です。
保険会社から提示された入通院慰謝料が妥当かどうか迷った場合は、絶対に示談書にサインせず、まずは夕陽ヶ丘法律事務所にご相談ください。弁護士基準での正確な見込み額を無料で算定いたします。