交通事故の「年金逸失利益」で障害年金・遺族年金は控除されるかのポイント
交通事故にあわれた際、相手方保険会社との交渉や各種手続において以下のポイントを把握しておくことが極めて重要です。
- 控除対象となる年金・対象外の年金。
弁護士基準(裁判所基準)での適正解決に向けて
交通事故の被害では、保険会社の提示額(自賠責基準や任意保険社内基準)と、裁判所や弁護士が適用する弁護士基準(裁判所基準)との間に大きな乖離が存在するケースが多々あります。
2020年4月の民法改正に伴う最新の法定利率(年3%)や適正な慰謝料計算基準に沿って対応することで、賠償額が増額する可能性が高まります。妥協される前に、まずは当事務所の無料相談をご利用ください。
交通事故の被害に遭い、後遺障害が残ってしまった場合や、万が一ご家族を亡くされてしまった場合、将来得られるはずだった収入の補償として逸失利益を請求することができます。この逸失利益の計算において、国から支給される各種の年金(障害年金や遺族年金など)を受け取っている場合、「賠償額から年金が差し引かれる(控除される)のか」という点は、多くの被害者やご遺族が直面する切実な疑問です。
損害賠償と社会保障給付の調整に関する法理は複雑ですが、正しい知識を持つことで適正な賠償金を受け取ることができます。ここでは、控除対象となる年金と対象外の年金を明確に解説します。
交通事故の逸失利益における年金控除の基本原則
交通事故の損害賠償においては、被害者が二重に利益を得ることを防ぐため(損益相殺の観点から)、同一の事由によって得た利益を損害額から差し引く調整が行われます。
これを「損益相殺」または「控除」と呼びます。年金についても、それが交通事故による逸失利益を補う性質を持つものであれば、受け取った金額が賠償額から差し引かれることになります。しかし、すべての年金が無条件に控除されるわけではありません。
控除の対象となる年金とならない年金の判断基準
年金が控除対象になるかどうかは、「交通事故による損害(逸失利益)を補う目的で支給されているか」という点が判断基準になります。
国から支給される社会保障としての年金は多種多様であり、その制度趣旨と交通事故の損害賠償との関係性を個別に吟味する必要があります。裁判例や実務においては、どの年金が控除の対象となるかについて一定のルールが確立されています。
障害年金は逸失利益から控除されるのか
後遺障害が残った場合に支給される障害年金は、労働能力喪失による減収を補う性質を持つため、原則として将来の逸失利益から控除されます。
ただし、どのような計算式ですべてが差し引かれるわけではありません。
障害基礎年金と障害厚生年金の扱い
障害年金には、国民年金から支給される「障害基礎年金」と、厚生年金から支給される「障害厚生年金」があります。
- 障害基礎年金:原則として逸失利益の算定期間に対応する部分が控除対象となります。
- 障害厚生年金:報酬比例部分なども含め、労働能力喪失に伴う損害を補填するものとして控除対象に含まれます。
実務上は、将来受け取る障害年金の現在価値を算出し、これを逸失利益の総額から差し引く方法がとられます。ただし、被害者がすでに支払った保険料の対価としての側面を考慮すべきという議論もあり、専門的な法的判断が求められる場面です。
遺族年金は死亡逸失利益から控除されるのか
被害者が亡くなった場合に遺族に支給される遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)についても、基本的には死亡逸失利益から控除されます。
遺族年金は、一家の大黒柱を失ったことによる生活費の喪失や、遺族の生活維持を目的として支給されるものであるため、性質上、死亡逸失利益と目的が重なるからです。
遺族年金控除の計算上の注意点
遺族年金を控除する際には、いくつかの注意点があります。
- 受給権者(配偶者や子供など)の年齢や人数に応じて支給額が変わるため、将来の受給見込額を正確に算出する必要があります。
- 損害賠償額から年金をそのまま全額引くのではなく、ライプニッツ係数を用いて中間利息を控除した現在価値の状態で引き算を行います。
- 複数の遺族が受給している場合、誰の逸失利益からどの部分を控除するのか複雑な調整が必要になります。
控除の対象外となる年金・給付
すべての年金が逸失利益から控除されるわけではありません。以下の年金や給付は、原則として控除対象外となります。
- 老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金):これらは高齢期の生活保障を目的として積み立てられてきたものであり、交通事故の有無に関わらず受給できるものであるため、原則として逸失利益からは控除されません。
- 恩給法に基づく年金の一部や、被害者自身の自助努力による私的年金など。
ただし、被害者が高齢であり、事故がなければ将来老齢年金を受給しながら労働収入を得ていたはずの期間など、事例によっては複雑な主張・立証がなされるケースもあります。
交通事故における年金控除の問題は、法律的・数理的な専門知識が不可欠です。保険会社から提示された示談案に納得がいかない場合や、年金の控除額が妥当か不安な場合は、交通事故に強い弁護士へ早めにご相談ください。
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