認知症の高齢者が事故に遭った場合の休業損害と逸失利益のポイント
交通事故にあわれた際、相手方保険会社との交渉や各種手続において以下のポイントを把握しておくことが極めて重要です。
- 就労不能
- 生活費控除率の調整。
弁護士基準(裁判所基準)での適正解決に向けて
交通事故の被害では、保険会社の提示額(自賠責基準や任意保険社内基準)と、裁判所や弁護士が適用する弁護士基準(裁判所基準)との間に大きな乖離が存在するケースが多々あります。
2020年4月の民法改正に伴う最新の法定利率(年3%)や適正な慰謝料計算基準に沿って対応することで、賠償額が増額する可能性が高まります。妥協される前に、まずは当事務所の無料相談をご利用ください。
認知症を患う高齢者が交通事故に遭われた場合、一般的な会社員や主婦の事故とは異なり、休業損害や逸失利益の計算において特有の法的判断が必要となります。特に「就労していない状態」において、損害賠償がどのように認められるのかは、被害者ご本人やご家族にとって非常に重要な問題です。
適切な賠償金を受け取るためには、法律上の正しい知識を持ち、保険会社との交渉に臨む必要があります。
認知症の高齢者における休業損害の考え方
交通事故における休業損害とは、事故による怪我の治療のために仕事を休み、収入が減少したことに対する補償です。では、すでに認知症を発症しており、事故前時点で仕事をしていなかった高齢者の場合、休業損害は一切認められないのでしょうか。
現実の収入がない場合の原則と例外
原則として、事故当時無職であった高齢者の場合、現実の収入が発生していないため、休業損害は発生しないと判断されることが多いです。しかし、以下のようなケースでは休業損害が認められる余地があります。
- 事故前まで内職やパートなどの軽作業で収入を得ていた場合
- 認知症の症状が比較的軽く、家庭内で重要な家事労働を担っていた場合
家事従事者(主婦・主夫)としての評価を受けるためには、事故前において家族のために家事労働を行っており、その能力や実績があったことが立証できなければなりません。
介護負担の増加と休業損害の請求
認知症の高齢者が事故に遭い、受傷したことによって、それまで可能だった身の回りの動作ができなくなり、介護負担が急増することがあります。
直接的な「仕事の休業」とは異なりますが、近親者が付き添いや介護のために仕事を休まざるを得なくなった場合、その分の損害が被害者側の損害として認められるかどうかが問題になります。これらは個別の事情によって判断が分かれるため、専門的な法的判断が不可欠です。
逸失利益の算定における就労不能と基礎収入
逸失利益とは、交通事故がなければ将来得られたはずの利益(収入)のことです。死亡事故や重度の後遺障害が残った場合に大きな争点となります。
認知症高齢者の労働能力の有無
逸失利益を請求するためには、「将来労働して収入を得る可能性(労働能力)」があったかどうかが問われます。完全に就労が不可能な状態であったとしても、法的には高齢者の労働能力が全否定されるわけではありません。
裁判例では、年齢や健康状態、認知症の程度を総合的に考慮し、賃金センサスの平均賃金または年齢別の平均賃金をベースに、一定の労働能力を認めるケースがあります。
生活費控除率の調整について
逸失利益の計算では、将来得られるはずだった収入から「その人が生存していれば必要だった生活費」を控除(差し引き)します。これを生活費控除と呼びます。
- 一般的な成人の場合、生活費控除率は30%から50%程度とされることが多いです。
- 認知症の高齢者の場合、施設入所費用がかかっているか、あるいは自宅で家族の介護を受けているかなど、生活実態によって控除率の調整が行われます。
保険会社は、労働能力がないことや生活費控除率を高めに設定することを理由に、逸失利益を低く見積もった示談案を提示してくる傾向があります。しかし、実際の生活状況や潜在的な労働可能性を丁寧に主張・立証することで、適正な賠償額を勝ち取ることができるのです。
認知症高齢者の交通事故示談における注意点
認知症の高齢者が被害者となった場合、本人自身が事故の状況を正確に記憶していなかったり、示談交渉の意思表示(意思能力)が十分にできなかったりする問題が生じます。
成年後見人の選任と代理交渉
被害者本人の意思能力が著しく低下している場合、そのままでは適法な示談交渉を行うことができません。そのため、家庭裁判所に申し立てを行って「成年後見人」や「保佐人」を選任し、その代理人が示談交渉を進める必要があります。
保険会社との交渉を有利に進め、適正な休業損害や逸失利益を受け取るためには、医学的な知見と損害賠償法に精通した弁護士への相談を強くおすすめします。納得のいく解決に向けて、まずは専門家のアドバイスを求めてみてください。
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