交通事故の示談交渉や後遺障害の異議申し立て(再審査)において、弁護士が状況を打開するために頻繁に行う手続きが「カルテ(診療録)の開示請求」です。
患者が病院にカルテのコピーを求めるのは少しハードルが高く感じられるかもしれませんが、カルテの中には「相手の保険会社の主張を崩す決定的な証拠」が眠っていることがよくあります。ここでは、カルテ開示の重要性と活用法について解説します。
後遺障害認定における「カルテ」の絶大な力
後遺障害(特にむちうちなどの14級9号)が認定されるための絶対条件の一つに、「事故直後から症状固定まで、一貫して同じ症状(痛み・痺れ)が続いていること(症状の一貫性・連続性)」があります。
後遺障害診断書の「落とし穴」
後遺障害診断書は、治療が終わる一番最後の日に作成されます。しかし、忙しい医師は「初診時に患者がどこが痛いと言っていたか」を忘れてしまっていることがあり、診断書に「事故直後からの症状」が正確に反映されないケースが多々あります。 これにより、審査機関から「事故から3ヶ月経ってから初めて腕の痺れを訴え始めた(=事故とは無関係の別の原因だろう)」と判断され、非該当にされてしまうのです。
カルテが「症状の一貫性」を証明する
そこでカルテを開示します。カルテや看護記録を1ページずつめくっていくと、「事故の翌日の初診カルテに『右腕にしびれあり』としっかり書かれている」「リハビリ担当の理学療法士の記録(サマリー)に、毎回の施術で首の痛みを強く訴えている記載がある」といった事実が見つかることがあります。
これらのカルテ記録のコピーを証拠として提出することで、「被害者は最初からずっと痛みを訴えていた(医師が診断書に書き漏らしただけだ)」という事実を客観的に証明でき、非該当から14級へと結果が覆る大きな要因となります。
保険会社との「因果関係」トラブルにも有効
相手の保険会社から「事故から1ヶ月も経ってから膝の痛みを訴え始めたのだから、膝の治療費は払わない(事故との因果関係なし)」と治療費を打ち切られるトラブルがあります。
この場合もカルテを開示し、「実は事故直後から膝が痛いと医師には伝えていたが、首の痛みが激しすぎて首のレントゲンしか撮っていなかっただけ」という事実がカルテの隅にでも記載されていれば、保険会社の主張を跳ね返す強力な根拠になります。
弁護士がチェックする「カルテの3つのポイント」
交通事故に強い弁護士がカルテを取り寄せた際、主に以下の点を血眼になって探します。
- 初診時の訴え: 事故直後に、どの部位の痛みを訴えていたか(頭、首、腰、手足など)。
- 神経学的検査の記録: 医師が後遺障害診断書に書き忘れた「ジャクソンテスト陽性」「反射異常」などの記録が、日々のカルテの中に残っていないか。
- 理学療法士の記録: 医師のカルテよりも、実際に体を触ってリハビリを行う理学療法士の記録の方が、患者の痛みの度合いや可動域の制限について詳細に書かれていることが多く、宝の山になります。
カルテ開示は弁護士に任せるのがスムーズ
カルテの開示請求は被害者本人でも可能ですが、病院所定の複雑な書類への記入や、数千円〜数万円のコピー代・手数料の精算など、手間がかかります。また、膨大なカルテ(数百ページになることもあります)の中から、「賠償交渉において法的に意味のある一文」を見つけ出すのは、専門知識がなければ不可能です。
夕陽ヶ丘法律事務所では、事案に応じて積極的にカルテ開示請求を行い、隠された証拠を見つけ出して被害者の権利を守ります。後遺障害の非該当や保険会社の対応に納得がいかない方は、ぜひ一度ご相談ください。