交通事故で首に痛み(むちうち等)が残り、後遺障害の申請をしようとした際、非常に大きな壁として立ちはだかるのが「軽微な物損(けいびなぶっそん)」という問題です。
「軽微な物損」とは、車のバンパーに少し傷がついた程度など、車両の修理費用が数万円〜十数万円程度で済むような、衝撃が小さかったと推測される事故のことです。このような事故で後遺障害は認定されるのでしょうか。
なぜ「軽微な物損」だと後遺障害が認められにくいのか
後遺障害(むちうちの14級9号など)を認定する審査機関は、被害者の訴えだけでなく、「事故の規模(衝撃の大きさ)」を非常に重視します。
審査機関の基本的な考え方は、「車のフレームが歪むような大事故なら首に深刻なダメージを負うのも納得できるが、バンパーの塗装が少し剥げた程度の『コツン』という事故で、一生残るような後遺症(むちうち)になるのは医学的・物理的に不自然である」というものです。
そのため、車の修理費が安い事故の場合、審査機関は「この痛みは事故によるものではなく、本人の思い込みか、あるいは賠償金目当ての誇張だろう」と疑いの目を向け、高い確率で「非該当」と判定してしまいます。相手の保険会社もこの基準を知っているため、「軽微な事故なので治療は1ヶ月で終わりです」と強気に出てくるのです。
「車の損傷=ケガの重さ」ではないという反論
しかし、人体は金属の塊ではありません。車の損傷が少なくても、乗っている人間が大きなダメージを受けるケースは医学的に十分にあり得ます。
軽微な物損事故で適正な後遺障害等級を獲得するためには、「衝撃は小さかったかもしれないが、特殊な事情があって首に甚大なダメージを受けた」ということを、証拠をもって論理的に反論する必要があります。
軽微な物損を覆すための3つの主張ポイント
- 無防備な状態での「不意打ち」だった 人間は衝撃を予測していれば首の筋肉を固めてダメージを軽減できます。しかし、「赤信号で停車中に、後ろからノーブレーキで追突された」など、完全に無防備な状態での不意打ちだった場合、軽い衝撃であっても首の骨(頸椎)が鞭のように大きくしなり、重症化しやすいという医学的知見を主張します。
- 不自然な姿勢をとっていた 「追突された瞬間、後部座席の荷物を取ろうとして体を捻っていた」「助手席の子供の方を向いていた」といった不自然な姿勢(捻転姿勢)をとっていると、特定の神経や筋肉にダメージが集中し、重傷化しやすくなります。これを実況見分調書や本人の陳述書で証明します。
- 車種による衝撃吸収構造の違い 被害者の車が軽自動車で、加害者の車が大型トラックだった場合など、質量の違いにより被害者側に大きなエネルギーが加わったことを主張します。また、最近の車はバンパーが復元しやすい素材で作られているため、「見た目以上に衝撃は大きかった」と主張することも有効です。
弁護士による「陳述書」や「意見書」の提出が必須
軽微な物損事故の場合、単に医師に「後遺障害診断書」を書いてもらって提出するだけ(事前認定)では、ほぼ確実に非該当になります。
必ず「被害者請求」の手続きを利用し、上記のような「なぜ軽い衝撃でも重症化したのか」を論理的に説明する弁護士作成の陳述書(意見書)や、当時の状況を示すドライブレコーダーの映像、事故車両の詳細な写真などを追加資料として提出しなければなりません。
軽微な事故だからと諦める必要はありません。「車はたいして壊れていないのに痛みが引かない」とお悩みの方は、証拠集めのプロである夕陽ヶ丘法律事務所にご相談ください。