交通事故のケガで整形外科に通院しているものの、「医師が全く話を聞いてくれない」「痛いと言っているのに『気のせいだ』と冷たくあしらわれる」「後遺障害の診断書作成を嫌がっている」など、主治医(担当医)に対する不満や不信感を抱える被害者は少なくありません。
もし現在の医師との信頼関係が完全に崩れてしまった場合、そのまま無理して通い続けるのは、精神的苦痛だけでなく、最終的な損害賠償(特に後遺障害認定)においても大きなマイナスとなります。ここでは、安全に病院を変更する(転院する)方法について解説します。
主治医と合わない場合に生じる「損害賠償上の不利益」
治療の質という医学的な問題とは別に、交通事故の損害賠償という観点から見ると、協力的でない医師のもとで治療を続けることには以下のような致命的なリスクがあります。
- カルテに症状が正確に記載されない 医師が患者の訴えを軽視していると、「首の痛みが続いている」「腕が痺れる」といった重要な症状がカルテ(診療録)に記録されません。カルテに記載がない症状は、後遺障害の審査において「存在しなかった」ものとみなされてしまいます。
- 必要な検査(MRI等)をしてくれない むちうちの神経症状を証明するためにはMRI画像などの客観的な所見が不可欠ですが、保守的な医師は「骨に異常はないからMRIは不要」と検査を拒否することがあり、証拠不足で後遺障害が非該当になる原因となります。
- 後遺障害診断書を詳しく(あるいは全く)書いてくれない 治療終了(症状固定)時に最も重要な書類である「後遺障害診断書」は医師しか作成できません。交通事故トラブルに巻き込まれることを嫌う医師は、この書類の作成を拒否したり、内容を適当に済ませたりする傾向があります。
転院を決断する適切なタイミング
「転院」は患者の正当な権利ですが、頻繁に病院をコロコロ変えるのは「あちこちの病院を渡り歩いているクレーマー」とみなされかねません。転院をするなら事故から1〜2ヶ月以内の早い段階が望ましいです。
事故から半年近く経ち、症状固定が目前に迫ったタイミングでの転院は極めて危険です。新しい病院の医師は「事故直後のあなたの状態」を直接診察していないため、「初診時から診ていない患者の後遺障害診断書は書けません」と作成を拒絶するケースが非常に多いからです。
安全な転院手続きの3ステップ
転院を決意した場合、後々のトラブルを防ぐために以下の順序で手続きを進めてください。
Step 1: 転院先の病院(候補)に事前確認する
まずは新しく通おうとしている病院に電話等で連絡し、「交通事故の治療(自賠責や任意保険の一括対応)を受け入れているか」「以前の病院からの転院を受け入れているか」を確認します。病院によっては交通事故患者や転院患者を断る方針のところもあります。
Step 2: 現在の主治医に「紹介状」と「画像データ」をもらう
一番気まずい場面ですが、勇気を出して現在の主治医に「自宅や職場から通いやすい病院に変えたいので」といった角の立たない理由を伝え、「紹介状(診療情報提供書)」と「MRIやレントゲンの画像データ(CD-ROM等)」を作成してもらってください。 これらがないと、転院先の医師が事故直後の状態を把握できず、治療の引き継ぎや将来の後遺障害診断書の作成に支障が出ます。
Step 3: 相手方の保険会社に転院の連絡をする
転院先が決まり、紹介状を手に入れたら、新しい病院へ行く「前」に、相手方の保険会社担当者へ電話をします。 「〇月〇日から、〇〇病院へ転院します。一括対応の連絡を新しい病院へお願いします」と伝えれば、保険会社が転院先の病院へ手続きを行ってくれます。これで窓口負担なしで新しい病院での治療がスタートできます。
現在の主治医との関係に悩み、転院すべきか判断がつかない場合は、行動を起こす前に弁護士にご相談ください。弁護士の視点から、後遺障害申請を見据えた最善の治療環境をアドバイスいたします。