交通事故の被害に遭い、いざ賠償の話を進めようとした段階で「加害者が任意保険に入っていなかった(無保険車だった)」と判明するケースは少なくありません。
任意保険の加入率は全体で約7~8割と言われており、裏を返せば約4台に1台は何らかの無保険(対人・対物未加入等)であるのが実情です。 相手が無保険の場合、多額の治療費や慰謝料を相手のポケットマネーから直接回収しなければならず、極めて困難な道のりとなります。しかし、被害者が泣き寝入りを避けるための「3つの救済措置」が存在します。
救済措置1:自賠責保険への「被害者請求」
すべての自動車・バイクに加入が義務付けられている「自賠責保険」に相手が加入していれば、最低限の補償を受けることができます。
通常は相手の任意保険会社が窓口となりますが、無保険の場合は被害者自身が相手の自賠責保険会社に対して直接賠償金を請求する「被害者請求(第16条請求)」を行います。 自賠責保険の支払限度額は以下の通りです。
- 傷害(ケガ)による損害:最大120万円(治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料などの合計)
- 後遺障害による損害:等級に応じて75万円(14級)〜最大4,000万円(1級)
- 死亡による損害:最大3,000万円
軽傷であれば自賠責の120万円の枠内で治療費と慰謝料を賄える可能性がありますが、重傷の場合は120万円をすぐに突破してしまい、残りの金額は加害者本人へ直接請求することになります。
救済措置2:自身の保険(人身傷害保険・無保険車傷害特約)の活用
相手からの回収が難しい場合、最も確実なのは自分自身が契約している自動車保険(任意保険)を活用する方法です。
人身傷害保険
自分や同乗者がケガをした場合、相手の過失や保険加入の有無に関わらず、自分の保険会社から約款に定められた実損額(治療費や慰謝料相当額)が支払われる非常に強力な保険です。これを優先して使うことで、当面の治療費の不安を解消できます。
無保険車傷害特約
相手が無保険で、かつ被害者が後遺障害を負ったり死亡したりした場合に、本来相手から支払われるべき賠償金を自分の保険会社が肩代わりして支払ってくれる特約です。(※ケガのみで完治した場合には使えないのが一般的です)
救済措置3:加害者本人への直接請求と訴訟・差押え
自賠責の限度額を超えた部分や、自賠責では対象外となる「車の修理代(物損)」については、加害者本人に直接請求するしかありません。
しかし、任意保険に入っていない加害者は経済的に困窮していることが多く、「無い袖は振れない」と支払いを拒否したり、連絡を無視したりするケースが多発します。 この場合、最終的な手段として民事裁判(損害賠償請求訴訟)を提起することになります。
裁判で勝訴判決を得た後、相手がそれでも支払わない場合は、強制執行手続き(給与の差し押さえ、預貯金の差し押さえなど)を行い、強制的に資金を回収します。
相手が無保険だった場合は速やかに弁護士へ
相手が無保険と判明した瞬間、被害者は「自分で相手と直接交渉する」「自分の保険会社と調整する」「自賠責への請求手続きを自分で行う」という非常に重い負担を背負うことになります。
弁護士に依頼することで、煩雑な自賠責への被害者請求を代行し、あなたの自動車保険の特約の活用方法をアドバイスするとともに、相手方本人への直接交渉や法的措置(裁判・差押え)を一手に引き受けることが可能です。ご自身の保険に「弁護士費用特約」が付帯していれば、費用の自己負担なしで弁護士に依頼できる可能性が高いため、必ず確認してください。
加害者が任意保険に入っていなかった場合の自賠責への「被害者請求」
日本の道路を走る車・バイクの約4台に1台(約25%〜30%)は、民間の「任意保険」に加入していないという恐ろしい統計データがあります。
もし、あなたをはねた加害者が無保険(任意保険未加入)だった場合。 加害者には「保険会社」という後ろ盾がないため、あなたが請求する数百万円〜数千万円の損害賠償金(治療費、休業損害、慰謝料など)は、加害者本人のポケットマネー(貯金や給料)から直接払わせるしかありません。
しかし、任意保険の数万円の保険料すら払えない(またはケチる)加害者に、何百万円という賠償金を払える資産があるはずもなく、多くの場合「お金がないから払えません」と開き直られ、被害者が泣き寝入りを強いられるという最悪の事態に陥ります。
このような事態を防ぎ、確実に賠償金を回収するための「3つの法的手段」について解説します。
1. 最優先:「自賠責保険」への被害者請求
加害者が任意保険に入っていなくても、車を所有する以上必ず加入が義務付けられている「自賠責保険(強制保険)」には加入している可能性が高いです。
被害者は、加害者を通さずに、直接この自賠責保険に対して賠償金を請求することができます(これを被害者請求と呼びます)。 自賠責保険には支払いの上限額(限度額)が定められていますが、この枠内であれば確実に国(自賠責)からお金を回収できます。
- 傷害による損害(ケガの治療費、休業損害、慰謝料など):上限120万円
- 後遺障害による損害:第14級(75万円)〜 第1級(最大3,000万円)
- 死亡による損害:上限3,000万円
軽いむちうち程度のケガであれば、この自賠責の枠(120万円)の中で治療費から慰謝料まですべてまかなえるケースも多くあります。
2. 決定打:ご自身の「無保険車傷害保険」を使う
死亡事故や重い後遺障害が残る重大事故の場合、被害総額が数千万円から1億円以上に跳ね上がり、自賠責保険の上限(3,000万円)だけでは到底足りなくなります。加害者本人も破産するしかない額です。
このような「自賠責では足りない分」をカバーしてくれるのが、ご自身やご家族が加入している自動車保険についている「無保険車傷害保険(特約)」です。 (※これは相手が無保険の場合だけでなく、相手の任意保険の限度額が極端に低く設定されていて賠償金が足りない場合などにも使えます)。
この特約を使えば、本来加害者が支払うべきだった賠償金(自賠責の超過分)を、自分の保険会社が代わりに上限なく(または2億円などの限度額まで)支払ってくれます。 現在、この特約は多くの自動車保険に「自動付帯」されているため、保険証券を必ず確認してください。(※自分が車に乗っていない歩行中や自転車中の事故でも、家族の保険でカバーされる場合があります)。
3. ご自身の「人身傷害保険」を使う
もう一つ、ご自身の保険についている「人身傷害保険(人身傷害補償特約)」を使う方法もあります。 これは、相手が無保険であるかどうかにかかわらず、また自分に過失がある場合でも、ご自身のケガの治療費や休業損害、慰謝料などを、ご自身の保険会社が契約で定めた基準に従って(スピーディーに)支払ってくれる保険です。
加害者本人の給料や財産を「差し押さえる」
上記のような保険(自衛策)が一切使えず、どうしても加害者本人から取り立てるしかない場合は、弁護士が介入して裁判を起こします。
裁判で「〇〇万円を支払え」という判決(債務名義)を獲得した後、加害者が支払いを拒否し続ける場合は、裁判所の権力を使い、加害者の給与(毎月の手取りの4分の1など)や、預貯金、自宅などの財産を強制的に「差し押さえる(強制執行)」ことになります。 ただし、加害者が無職で財産もない(自己破産した)場合は、回収不能となるリスクが残ります。
無保険の加害者との交渉は、「無い袖は振れない」と逃げ回る相手からいかにしてお金を引き出すか(あるいはどの保険を組み合わせて使うか)という、極めて高度な戦略が必要となります。弁護士費用特約がご自身の保険に付いていれば無料で依頼できますので、無保険の相手とのトラブルに巻き込まれたら、絶対に一人で悩まず夕陽ヶ丘法律事務所にご相談ください。