整形外科と整骨院・接骨院の併用におけるリスクと損害賠償上の注意点

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、弁護士による交通事故示談交渉・後遺障害等級認定の実務経験に基づき、最新の法令および裁判所基準(弁護士基準)に沿ってわかりやすく解説しています。

交通事故で「むちうち」などのケガを負った場合、病院(整形外科)の受付時間が短くて通いにくい、あるいはマッサージや電気治療をしっかり受けたいという理由から、「職場の近くで夜遅くまで開いている整骨院(接骨院)に通いたい」と希望される被害者の方は非常に多くいらっしゃいます。

整骨院での施術自体は症状緩和に有効な場合がありますが、法的な損害賠償の実務においては「自己判断での整骨院通い」は極めてリスクが高い行為です。ここでは、整形外科と整骨院を安全に併用するための絶対条件を解説します。

Q 交通事故で整形外科と整骨院(接骨院)を併用しても、治療費や慰謝料はきちんと支払われますか?
A 【法律上の結論とリスク】自己判断で整形外科に通わず整骨院だけで治療を続けると、保険会社から医学的必要性を否定され、治療費の不払いや、通院日数に基づく入通院慰謝料の減額・不支給といった不利益を受けるリスクが生じます。損害賠償実務では、医師の指示と定期的な整形外科の受診(月1〜2回以上)が絶対条件となります。
【損をしないための対策と弁護士活用】治療費と適正な慰謝料全額を確保するには、必ず事前に医師の許可を得て整形外科に通いながら整骨院を併用してください。また、保険会社から治療費打ち切りや整骨院の施術費拒否を告げられた場合は、交通事故に強い弁護士へ早期に相談・依頼することで、弁護士基準(裁判所基準)に基づく適正な賠償金を回収し、経済的・精神的な不安を根本から解消することができます。

なぜ整骨院の治療費が認められないトラブルが起きるのか?

前提として、整形外科にいるのは「医師(ドクター)」であり、彼らが行うのは「医療行為」です。一方、整骨院にいるのは「柔道整復師」であり、彼らが行うのは医療行為ではなく「施術」です。

交通事故の損害賠償において、相手方に請求できる治療費は「医師が医学的に必要かつ相当と認めた治療の費用」に限られます。 したがって、医師が「整骨院に行く必要はない」と判断しているのに、被害者が勝手に整骨院に通った場合、保険会社から「それは医学的に不必要なマッサージ代だ」とみなされ、施術費を全額自己負担させられるリスクがあるのです。

整形外科と整骨院を併用するための3つの絶対条件

整骨院の施術費をきちんと保険会社に支払ってもらい、かつ適正な慰謝料を受け取るためには、以下の3つの条件を必ず守ってください。

1. 必ず「整形外科」を先に受診し、定期的に通院を続ける

事故直後の初診は必ず整形外科に行き、レントゲン等の検査を受けて診断書をもらってください。その後も、最低でも月1〜2回は必ず整形外科に通院し、医師に経過を診てもらうことが不可欠です。整形外科への通院を完全にやめてしまうと、治療終了(症状固定)とみなされてしまいます。

2. 主治医(整形外科医)から整骨院への通院の「許可」をもらう

整骨院に通う前に、必ず主治医に対して「家の近くの整骨院にも併用して通いたいのですがよろしいでしょうか?」と相談し、同意を得てください。可能であれば、カルテに「整骨院での施術を許可する」旨を記載してもらうか、口頭でも明確な許可を得ることが重要です。

もし主治医が整骨院の併用を強く反対する場合は、別の整形外科(整骨院への併用に理解のある医師)への転院を検討する必要があります。

3. 保険会社へ事前に連絡を入れる

主治医の許可が出たら、相手の保険会社の担当者に「医師の許可を得たので、〇〇整骨院にも通います」と伝え、一括対応(保険会社から整骨院への直接支払い)の手続きを済ませてから通い始めてください。

後遺障害認定における最大の落とし穴

「痛みが取れないので整骨院ばかりに通い、整形外科には数ヶ月行かなかった」というケースが最も悲惨な結果を招きます。

半年間治療を続けても痛みが残り、「後遺障害」の申請をしようとした際、申請に必要な「後遺障害診断書」を書けるのは医師だけです。 数ヶ月ぶりに整形外科を訪れて診断書をお願いしても、医師からすれば「その間の医学的な経過(どのような痛みがあり、どう変化したか)を診ていないので、責任を持って診断書は書けない」と断られてしまいます。

結果として後遺障害等級が非該当となり、本来もらえるはずだった数百万円の賠償金を失うことになります。

「治療の主導権は常に整形外科医に持たせ、整骨院はあくまで日常的なケア(補助)として利用する」というスタンスを絶対に崩さないでください。通院方法や保険会社の対応に不安がある場合は、お早めに弁護士にご相談ください。

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FAQよくある質問

Q. 保険会社から「整骨院には通わないでください」と言われました。通ってはいけないのでしょうか?

A. 保険会社が通院先を強制することはできません。しかし、医師の指示(許可)がないまま整骨院に通うと、後からその施術費が「必要かつ相当な治療ではない」として支払いを拒否されるリスクがあるため、保険会社は念押しをしています。必ず主治医の許可を得てから通院してください。

Q. 完全に整骨院だけに絞って通院してもいいですか?

A. 絶対に避けてください。整骨院のみの通院になると、医師による医学的な経過観察が行われないため、万が一後遺症が残った際に「後遺障害診断書」を書いてもらえなくなり、賠償額が劇的に下がってしまう致命的なリスクがあります。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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