交通事故のケガや車の修理対応などで心身ともに疲れ果てると、被害者の方は「もう面倒なやり取りは早く終わらせたい」「保険会社が提示してきた金額でいいから、早くお金をもらってすっきりしたい」という心理になりがちです。
相手の保険会社もその心理を熟知しており、巧みな言葉で示談書へのサインを急かしてきます。しかし、一度示談書にサイン(署名・捺印)してしまうと、原則として二度とやり直し(内容の撤回や追加請求)ができなくなります。
絶対に示談書にサインしてはいけない「3つのタイミング」を解説します。
1. 治療がまだ終わっていない(痛みが残っている)タイミング
最もやってはいけないのが、まだケガの治療中であるにも関わらず、保険会社に急かされて示談に応じてしまうことです。
「通院が面倒になった」「今示談すればまとまったお金が手に入る」と考えてサインしてしまうと、その後に痛みが悪化したり、別の症状が出てきたりしても、示談成立後の治療費はすべて自己負担(自腹)になってしまいます。
示談交渉を始めるのは、ケガが完治するか、医師から「これ以上治療を続けても劇的な改善は見込めない(症状固定)」と診断された後でなければなりません。
2. 後遺障害の等級認定の「申請前」や「結果が出る前」
むちうちや骨折などで、治療を続けても痛みやしびれ(後遺症)が残ってしまった場合、「後遺障害等級認定」の申請を行うことになります。
後遺障害が認定されるかどうかで、賠償金の額は数百万円単位で変わります。保険会社から「後遺障害の申請には時間がかかるので、今回はこれくらい(低い金額)で示談にして、手早く終わらせませんか?」と提案されることがありますが、絶対に乗ってはいけません。 後遺障害の申請を行う前に示談を成立させてしまうと、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求する権利を自ら放棄することになってしまいます。
3. 保険会社の提示額を「弁護士にチェックしてもらう前」
治療も終わり、後遺障害の結果も出た。いよいよ保険会社から「賠償金(示談金)の計算書」が送られてきた時。これが最後の関門です。
多くの方は「専門家である保険会社が計算したのだから正しいのだろう」と思い込み、内容をよく見ずにサインしてしまいます。しかし、保険会社が最初に提示してくる金額は「自社の利益を守るための低い基準(任意保険基準)」で計算されており、本来被害者が受け取るべき適正な金額(弁護士基準)の半分以下であるケースがほとんどです。
送られてきた計算書・示談書にはすぐに判を押さず、一度保留にして「この金額は適正か、弁護士基準ならいくらになるのか」を交通事故に強い弁護士に無料相談でチェックしてもらってください。
夕陽ヶ丘法律事務所では、保険会社からの提示額の妥当性を無料で診断いたします。「早く終わらせたい」というお気持ちは痛いほど分かりますが、人生を左右する正当な補償を手放さないためにも、サインをする前に必ずご相談ください。
保険会社が送ってくる「免責証書(承諾書)」の罠と恐ろしさ
交通事故の治療が終了し、賠償額の交渉が大詰めを迎えると、相手の保険会社から一枚の重要な書類が送られてきます。
一般的には「示談書」と呼ばれることが多いですが、実際の書類のタイトルは「免責証書(めんせきしょうしょ)」や「承諾書」となっていることがよくあります。
この書類にサイン(署名・捺印)をして返送することは、被害者にとって「法的に後戻りのできない最終決断」を意味します。ここでは、免責証書に隠された罠と、その法的な恐ろしさを解説します。
免責証書と示談書の違いは?
結論から言うと、法的な効力(効果)においては、免責証書も示談書も全く同じです。
- 示談書(和解契約書):加害者と被害者の「双方」が署名捺印し、お互いに合意内容を確認し合う形式の書類です。
- 免責証書:被害者「のみ」が署名捺印して保険会社に差し入れる(提出する)形式の書類です。手続きを簡略化するため、加害者の署名を集める手間を省きたい保険会社が実務上よく使用します。
つまり、名前が「証書」や「承諾書」となっているだけで、実態は「これですべて終わりにします」という示談の最終合意書なのです。
免責証書に書かれている「恐ろしい一文」
免責証書には、賠償金の支払い額や支払い口座などの記載とともに、必ず以下のような趣旨の一文が印刷されています。
「本証書に記載された金額を受領した後は、本件事故に関し、加害者および貴社(保険会社)に対して、名目の如何を問わず、今後一切の裁判上・裁判外の請求を行いません。また、その他一切の権利を放棄します。」
これが「免責条項(清算条項)」と呼ばれる最も恐ろしい罠です。
なぜ恐ろしいのか?(やり直しが一切きかない)
この一文が入った書類にあなたが判を押した瞬間、法的に以下のことが確定します。
- 「やっぱり足りない」は通用しない 後になって「弁護士基準で計算したらもっともらえたはずだ」「休業損害の計算が間違っていた」と気づいても、一切の追加請求はできなくなります。
- 痛みがぶり返しても自腹 示談後にケガが悪化したり、新たな後遺症が出てきたりしても、「今後一切の請求を行わない」と約束してしまったため、将来の治療費を加害者側に請求することはできません。(※示談当時には全く予測できなかった重大な後遺症が後から発覚したような、ごく一部の例外を除きます)。
保険会社は「サインすればすぐ振り込みます」と誘惑する
保険会社の担当者は、「この免責証書にサインして返送していただければ、すぐに口座にお振り込みしますよ」と、優しく、しかし確実に示談を成立させようとします。被害者はお金が必要な状況に置かれていることも多く、つい深く考えずにハンコを押してしまいがちです。
しかし、その「すぐ振り込まれるお金」は、本来あなたが受け取るべき正当な金額(弁護士基準)の半分程度に値切られている可能性が極めて高いのです。
「免責証書」や「示談書」が手元に届いたら、それは最終確認のラストチャンスです。絶対にその場でサインせず、「この金額は本当に妥当なのか?」を夕陽ヶ丘法律事務所の弁護士に無料でチェックさせてください。弁護士が介入することで、そこから賠償金が2倍、3倍に跳ね上がることは決して珍しくありません。