「過失相殺後の既払い金控除」の計算順序

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、弁護士による交通事故示談交渉・後遺障害等級認定の実務経験に基づき、最新の法令および裁判所基準(弁護士基準)に沿ってわかりやすく解説しています。

「過失相殺後の既払い金控除」の計算順序のポイント

交通事故にあわれた際、相手方保険会社との交渉や各種手続において以下のポイントを把握しておくことが極めて重要です。

  • 控除前減額か控除後減額か。

弁護士基準(裁判所基準)での適正解決に向けて

交通事故の被害では、保険会社の提示額(自賠責基準や任意保険社内基準)と、裁判所や弁護士が適用する弁護士基準(裁判所基準)との間に大きな乖離が存在するケースが多々あります。

2020年4月の民法改正に伴う最新の法定利率(年3%)や適正な慰謝料計算基準に沿って対応することで、賠償額が増額する可能性が高まります。妥協される前に、まずは当事務所の無料相談をご利用ください。

交通事故における「過失相殺後の既払い金控除」の正しい計算順序

Q 保険会社から提示された示談案で「既払い金を引いてから過失相殺する」と言われましたが、正しい計算順序ですか?
A 【正しい計算順序】損害賠償額の計算では、総損害額に対して被害者の過失割合を反映させて過失相殺を行い、その算出した額から治療費などの既払い金を控除するのが最高裁判所の判例に基づく原則(過失相殺後の既払い金控除)です。
【注意点と対策】保険会社が提示する「控除前減額(先に既払い金を引く計算)」のまま示談に応じると、被害者が受け取る賠償金が不当に少なくなるリスクがあります。計算順序の違いで金額が大きく変わるため、示談書にサインする前に弁護士へ相談し適正な弁護士基準での計算を求めることをおすすめします。

交通事故の示談交渉において、避けて通れないのが「過失相殺」「既払い金の控除」という二つの概念です。特に、治療費や休業損害などを保険会社から先行して支払われている場合、最終的な賠償額を算出する際に、どのタイミングでそれらを差し引くのかという「計算順序」が非常に重要になります。

結論から申し上げますと、実務上の原則は「損害額から過失相殺を行い、その残額から既払い金を控除する」という順序です。なぜこの順序が重要なのか、計算結果にどのような違いが出るのかを詳しく解説します。

過失相殺と既払い金控除の計算ルール

交通事故の損害賠償額は、被害者側にも過失がある場合、その割合に応じて減額されます。これが過失相殺です。一方で、治療中に保険会社から支払われた治療費や休業損害は「既払い金」として扱われます。

原則的な計算式

一般的な計算式は以下の通りです。

  1. 全損害額 × (1 - 被害者の過失割合) = 過失相殺後の損害額
  2. 過失相殺後の損害額 - 既払い金 = 最終的な受取額

この順序で行う理由は、「被害者が本来負担すべき過失分を、既払い金から差し引くことはできない」という考え方に基づいています。もし、過失相殺を行う前に既払い金を差し引いてしまうと、被害者の過失分まで既払い金で補填したことになり、被害者にとって不利な計算結果となってしまうのです。

計算順序が逆になった場合のリスク

仮に、過失相殺の前に既払い金を控除してしまうとどうなるでしょうか。

例えば、損害額が500万円、過失割合が20%(被害者側)、既払い金が100万円だったと仮定します。

【正しい計算(過失相殺が先)】 (500万円 × 0.8) - 100万円 = 300万円

【誤った計算(既払い金控除が先)】 (500万円 - 100万円) × 0.8 = 320万円

一見すると、誤った計算の方が受取額が多くなるように見えますが、これは既払い金が「損害額全体」に充当されると仮定した場合のケースです。実際には、過失相殺を先に行うことで、「既払い金が過失分をカバーしてしまう」という不利益を回避しています。特に、既払い金が多額にのぼる場合、計算順序を間違えると数百万円単位で最終受取額が変わる可能性があるため、注意が必要です。

実務で注意すべき「既払い金」の性質

計算順序だけでなく、どの費用が「既払い金」として控除対象になるのかを把握しておくことも重要です。

控除対象となる主な費用

保険会社が支払った以下の費用は、原則として損害賠償額から控除されます。

  • 治療費(病院へ直接支払われたものを含む)
  • 入通院慰謝料の一部として支払われた内払金
  • 休業損害
  • 交通費

控除されないケースや例外

一方で、以下の費用は損害賠償額から控除すべきではない、あるいは計算方法が異なる場合があります。

  • 人身傷害補償保険からの支払分:自身の加入する保険から支払われた場合、過失相殺の対象外となることがあります。
  • 自賠責保険の限度額:自賠責保険から支払われた金額は、最終的な賠償額から差し引かれますが、計算の組み立てが複雑になることがあります。

特に、保険会社が提示する示談案には、既払い金の計算が詳細に含まれています。もし提示された金額に納得がいかない場合や、計算順序が不明瞭な場合は、示談書にサインをする前に必ず内訳を確認してください。

示談交渉で不利にならないために

保険会社から提示される「示談提示書」には、過失相殺と既払い金の控除が反映された最終的な金額のみが記載されていることがよくあります。

被害者自身で計算を検証するためには、以下の情報を整理しておくことが不可欠です。

  • 損害賠償の総額(各費目の詳細)
  • 確定した過失割合
  • これまでに保険会社から支払われた金額の合計(明細書を取り寄せること)

もし、保険会社の提示額が妥当かどうか判断がつかない場合は、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。特に、過失割合の認定や、既払い金の控除対象範囲については、法的な解釈が分かれることもあります。

正しい計算順序を理解し、自身の権利が不当に侵害されていないかをチェックする姿勢を持つことが、納得のいく解決への第一歩となります。不明点があるまま示談に応じることは避け、疑問を一つずつ解消しながら交渉を進めていきましょう。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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