交通事故で大切な家族を奪われたご遺族にとって、「加害者の保険会社からいくら賠償金が支払われるか(民事上の責任)」と同じくらい、あるいはそれ以上に重要な関心事となるのが、「加害者がどのような刑罰を受けるのか(刑事上の責任)」です。
飲酒運転、著しいスピード違反、スマホのながら運転、ひき逃げなど、悪質で危険な運転によって人命を奪った加害者に対しては、「危険運転致死傷罪」や「過失運転致死傷罪」として刑事裁判が開かれます。
かつて、この刑事裁判は「国(検察官)と加害者(被告人)」の間だけで行われ、被害者や遺族は法廷の傍聴席から黙って見ていることしかできない「蚊帳の外」の存在でした。 しかし、犯罪被害者の権利を守る法改正により、現在ではご遺族が自ら裁判の当事者として参加し、声を上げることができる「被害者参加制度」が設けられています。
【損をしないための対策と弁護士活用のメリット】この制度の利用には裁判所の許可や検察官との綿密な打ち合わせが必要ですが、遺族だけで手続きや法廷対策を進めるのは精神的・時間的にも大きな負担となります。交通事故や刑事事件に精通した弁護士のサポートを受けることで、被害者参加の手続き代行から、尋問の構成、厳罰を求める効果的な意見陳述の準備までトータルで代理・支援してもらうことができます。
被害者参加制度で「できること」
被害者参加制度(刑事訴訟法)を利用することが許可されたご遺族(または重傷を負った被害者本人)は、法廷のバー(柵)の内側に入り、検察官の隣の席に座って、以下の重要な権限を行使することができます。
1. 被告人(加害者)に対する直接の質問
加害者が法廷で「前を見ていた」「ブレーキを踏んだ」「反省している」などと真実とは異なる嘘の証言をした場合、ご遺族自らが加害者に対して直接質問をし、矛盾を追及して真実を問い詰めることができます。
2. 情状証人に対する質問
加害者の刑を軽くするために、加害者の親や上司などが「情状証人」として法廷に立ち、「私が監督するから刑務所に入れないでほしい」と訴えることがあります。この証人に対しても、監督の具体性や過去の態度の甘さなどを厳しく質問することができます。
3. 裁判官に対する「意見陳述(求刑)」
裁判の終盤に、ご遺族が証言台に立ち、「家族を奪われた悲しみがいかに深いか」「加害者の態度はどれほど許しがたいものか」を裁判官に向かって直接訴えかけることができます。さらに、「執行猶予などあり得ない、懲役〇年の実刑にしてほしい」という具体的な処罰についての意見(求刑)を述べることも認められています。
ご遺族の無念を「裁判官の心」に届けるために
刑事裁判において、裁判官が刑の重さ(実刑にするか、執行猶予をつけるか)を決める際、「被害者感情(ご遺族の処罰を求める強い意思)」は極めて重要な判断要素となります。 書面で提出された調書だけでなく、法廷の場でご遺族の生の声と涙が響き渡ることで、裁判官に事件の重大性をより強く認識させ、安易な執行猶予判決を防ぐ効果が期待できます。
弁護士が「被害者参加弁護士」として代行・同席します
しかし、愛する家族を奪った憎き加害者と同じ空間に長時間居合わせ、直接言葉を交わすことは、ご遺族の精神を極限まで削り取る過酷な行為でもあります。
「意見は言いたいが、とても最後まで耐えられない」「法律の知識がないから、どう質問すれば効果的かわからない」というご遺族のために存在するのが、「被害者参加弁護士」の制度です。
交通事故における損害賠償の示談交渉に加え、刑事裁判における被害者参加のサポートも重要な法的支援の一つです。専門の弁護士が遺族の代理人として法廷に立ち、加害者の供述を法的な尋問技術で追及するとともに、遺族の意見を論理的な陳述として裁判官へ伝えます。このように、民事と刑事の両面から総合的な法的アプローチを行うことが、悪質な死亡事故や重傷事故の被害者およびその家族を救済するうえで不可欠となります。

