交通事故の「逸失利益(将来の収入減に対する補償)」は、原則として「18歳から67歳(一般的な定年年齢)まで」を労働能力喪失期間として計算されます。
では、事故に遭った時点ですでに67歳を超えている高齢者や、定年退職して年金生活を送っている方の場合、逸失利益は一切請求できないのでしょうか? 保険会社はしばしば「もう引退している年齢なのだから、将来の収入減など発生しない(逸失利益はゼロである)」と主張してきます。しかし、実際には以下の条件を満たせば、高齢者であっても適正な逸失利益を獲得することが可能です。
67歳以上の高齢者でも逸失利益が認められるケース
1. 事故当時、現実に就労して収入を得ていた場合
年齢が67歳を超えていても、警備員、清掃員、スーパーのパート、自営業、農業などで現実に収入を得ていた場合、当然に逸失利益の対象となります。
- 喪失期間の計算:原則として「平均余命の2分の1」の期間を、今後働くことができた期間(労働能力喪失期間)として計算します。(例:70歳男性の平均余命が約16年の場合、その半分の「8年間」を喪失期間とする)
- 基礎収入:現実の収入額と、同年齢の平均賃金(年齢別賃金センサス)を比較し、適切な方を採用します。
2. 就労はしていないが、将来働く「高い蓋然性」があった場合
事故当時は無職であっても、「近所のコンビニの面接を受けて合格していた」「春から農作業を再開する準備をしていた」など、将来働くことが客観的に予定されていた(高い蓋然性があった)ことを証明できれば、逸失利益が認められます。
3. 家事労働を行っていた場合(高齢の主婦・主夫)
同居する家族のために炊事、洗濯、掃除などの家事を行っていた場合、高齢者であっても「家事労働者」として逸失利益が認められます。 ただし、若い専業主婦のように「全年齢平均賃金(約380万円)」がそのまま適用されることは少なく、年齢や身体能力の低下を考慮して、「年齢別平均賃金」へと減額修正されるのが一般的です。
年金生活者の逸失利益:請求できる年金とできない年金
高齢者の重要な収入源である「年金」。被害者が死亡した場合や重い後遺障害を負った場合、将来もらえるはずだった年金はどうなるのでしょうか?
裁判実務では、「年金も将来の重要な収入源(逸失利益)として認める」というルールが確立しています。ただし、年金の「種類」によって請求の可否が分かれます。
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請求できる(逸失利益になる)年金
- 老齢基礎年金(国民年金)
- 老齢厚生年金、退職共済年金
- 障害年金(事故前から受給していたもの)
- ※これらは、被害者自身が過去に保険料を納付した対価として受給する権利を持つため、逸失利益として認められます。
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請求できない(逸失利益にならない)年金
- 遺族年金
- 老齢福祉年金
- ※これらは被害者自身の保険料納付に基づかない「遺族の生活保障」などの福祉的性質が強いため、逸失利益の対象外とされます。
保険会社の「高齢だから」という言い訳を許さない
高齢者の交通事故賠償において、保険会社は「逸失利益ゼロ」を主張するだけでなく、慰謝料についても「高齢者は精神的苦痛が少ない」「寿命が短い」などという偏見に満ちた理由で値切ってくることがあります。
しかし、長年社会に貢献し、ようやく訪れた穏やかな老後の生活を奪われた精神的苦痛や経済的損失は、決して若者より軽いものではありません。 夕陽ヶ丘法律事務所では、高齢被害者のこれまでの人生の歩みや実際の生活状況(家事の分担状況や、趣味・社会活動など)を詳細にヒアリングし、「高齢だから」という保険会社の不当な切り捨てを許さず、弁護士基準での正当な賠償金を勝ち取ります。 ご自身やご家族が高齢で事故に遭われた方は、諦める前に一度当事務所にご相談ください。