交通事故で車にはねられたり、フロントガラスで顔面を強打したりした場合、脳や顔の骨だけでなく「眼球」やその奥にある「視神経」に重大なダメージを負うことがあります。
「眼の後遺障害」というと「失明」や「視力の低下」を思い浮かべる方が多いですが、それだけではありません。 モノが二重に見える、見える範囲が極端に狭くなる、まぶたが閉じなくなるなど、眼に関する後遺障害は非常に多岐にわたります。ここでは、代表的な3つの症状に関する後遺障害等級認定の基準を解説します。
1. 視力障害(視力の低下・失明)
視力障害の後遺障害等級は、両眼か片眼か、そして「メガネ等でどこまで矯正できるか(矯正視力)」によって、最も重い1級から13級まで細かく分類されています。
- 第1級1号:両眼が失明したもの
- 第2級1号:両眼の視力が0.02以下になったもの
- 第8級1号:片眼が失明し、もう片眼の視力が0.6以下になったもの
- 第10級1号:片眼の視力が0.1以下になったもの
- 第13級1号:片眼の視力が0.6以下になったもの
【認定のポイント】 重要なのは、ここでいう視力は「矯正視力(メガネやコンタクトレンズをした状態の視力)」であるという点です。裸眼視力が0.01に落ちてしまっても、メガネをかけて1.0まで見えるようになれば、自賠責上の視力障害には該当しません。
2. 複視(モノが二重に見える)と眼球運動障害
視力自体は正常でも、事故の衝撃で眼球を動かす筋肉(外眼筋)や動眼神経が麻痺してしまうと、左右の眼の焦点が合わなくなり、「モノが二重にダブって見える(複視)」という深刻な障害が残ります。 複視は、遠近感が狂うため、階段から転落する危険があるなど、日常生活や就労(特に運転やパソコン作業)に極めて大きな支障をきたします。
- 第10級2号(正面の複視):正面を見た時にモノが二重に見えるもの。生活への支障が大きいため等級が高くなります。
- 第13級2号(正面以外の複視):上下や左右を見た時だけ二重に見えるもの。
【認定のポイント】 複視を立証するためには、被害者の自己申告だけでなく、眼科での「ヘススクリーンテスト(またはヘスコージメーター)」という専用の検査を受け、眼球運動の異常を客観的なグラフデータとして提出する必要があります。
3. 視野障害(見える範囲が狭くなる)
網膜の剥離や視神経の損傷により、視力はあっても「見える範囲(視野)が極端に狭くなる」、あるいは「視野の一部が欠けて見えなくなる(半盲など)」症状です。
- 第9級3号:両眼に半盲症、視野狭窄、または視野変状を残すもの
- 第13級3号:片眼に半盲症、視野狭窄、または視野変状を残すもの
【認定のポイント】 ゴールドマン型視野計などの専門機器を用いて、視野の欠損角度を正確に測定し、後遺障害診断書に記載してもらう必要があります。
眼の後遺症は「専門医への受診」が最優先
交通事故で頭や顔を打った後、なんとなく見えにくい、目がかすむ、物がダブるといった違和感があった場合、「そのうち治るだろう」と放置するのは絶対にやめてください。 視神経のダメージは、早期に治療を開始しなければ回復が極めて困難になります。また、事故から数ヶ月経過してから眼科を受診しても、保険会社から「その視力低下は事故のせいではなく、単なる加齢やスマホの見過ぎではないか」と事故との因果関係を否定され、賠償の対象外にされてしまうリスクが非常に高まります。
眼に少しでも違和感があれば、整形外科での治療と並行して、直ちに眼科(できれば神経眼科などの専門医)を受診してください。 夕陽ヶ丘法律事務所では、眼の特殊な後遺障害認定に必要な検査の指示出しや、適切な後遺障害診断書の作成サポートを行っております。眼の後遺症でお悩みの方は、当事務所の弁護士までお早めにご相談ください。