交通事故で車外に放り出されてアスファルトで顔をこすったり、割れたガラスで顔や首を切ってしまったり、あるいは重傷を負って緊急手術をした痕が身体に生々しく残ってしまうことがあります。
このように、治療を終えても人の目につく場所に傷跡(瘢痕・線状痕)や陥没が残ってしまった状態を、後遺障害における「醜状障害(しゅうじょうしょうがい)」と呼びます。 特に、顔面や頭部、首など、日常的に露出している部位(外貌)の傷跡は「外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)」と呼ばれ、被害者のその後の人生・対人関係に深刻な精神的苦痛をもたらすため、専用の等級基準が設けられています。
「外貌醜状」の3つの後遺障害等級基準
外貌醜状(顔・頭・首の傷跡)の等級は、傷の「種類」と「大きさ(長さや面積)」によって、以下の3つの等級に分類されます。
第7級12号(外貌に「著しい醜状」を残すもの)
顔をパッと見ただけで、誰でもすぐに傷跡があるとわかるほど大きな傷です。
- 頭部:手のひら大(指の部分は含まず)以上の瘢痕、または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
- 顔面:鶏卵大以上の瘢痕、または10円硬貨大以上の組織陥没
- 頸部(首):手のひら大以上の瘢痕
第9級16号(外貌に「相当程度の醜状」を残すもの)
- 顔面:長さ5センチメートル以上の線状痕(直線的な切り傷の痕など)で、人目につく程度以上のもの
第12級14号(外貌に「単なる醜状」を残すもの)
- 頭部:鶏卵大以上の瘢痕、または頭蓋骨の鶏卵大以上の欠損
- 顔面:10円硬貨大以上の瘢痕、または長さ3センチメートル以上の線状痕
- 頸部(首):鶏卵大以上の瘢痕
知っておくべき「男女の等級格差撤廃」について
実は、2010年(平成22年)6月まで、外貌醜状の後遺障害等級には「著しい男女格差」が存在していました。 全く同じ大きさの顔の傷であっても、「女性の方が顔に傷を負った精神的苦痛は大きいはずだ」という時代遅れの固定観念により、女性は7級・12級、男性は12級・14級というように、男性の等級が女性より不当に低く設定されていたのです。
しかし、京都地方裁判所での訴訟において「この男女差は法の下の平等を定めた憲法14条に違反する」という画期的な判決が下され、国が基準を改定しました。 現在では、男女に関係なく、完全に同一の基準(上記の7級・9級・12級)で平等に等級が認定されるようになっています。男性だからといって賠償金が不当に低くなることはありませんのでご安心ください。
醜状障害における「逸失利益」の大きな壁
外貌醜状の賠償において、実務上最も激しく保険会社と揉める争点があります。それが「逸失利益(いっしつりえき:将来の減収に対する補償)」の請求です。
骨折などで関節が動かなくなった場合、「仕事に支障が出る」ことは明らかですが、顔に傷があるだけ(身体の機能は正常)の場合、保険会社は「顔に傷があっても、パソコン作業や事務仕事などの労働能力は低下しないから、逸失利益は一切支払わない(ゼロ円である)」と強硬に主張してきます。
しかし、これは誤りです。 顔に大きな傷があることで、営業職や接客業、モデル・芸能関係など、対人業務において配置転換を余儀なくされたり、再就職が不利になることは十分にあり得ます。また、傷跡を隠すための心理的負担が仕事の効率を低下させることも考慮されるべきです。
裁判においては、被害者の職業、年齢、傷の部位や目立ち具合を総合的に考慮し、醜状障害であっても労働能力喪失(逸失利益)を認める判決が多数存在します。
適正な賠償には弁護士の交渉力が必須
顔や身体の傷跡は、被害者にとって一生消えない深い心の傷となります。 それにもかかわらず、保険会社から「逸失利益ゼロ」という冷酷な提示を受け、泣き寝入りしてしまう被害者が後を絶ちません。
「傷跡の大きさが微妙で等級が認定されるか不安」「面接調査にどう対応すればいいかわからない」「逸失利益を否定されてしまった」という方は、交通事故の賠償実務に精通した夕陽ヶ丘法律事務所へご相談ください。傷の測定に向けたアドバイスから、裁判基準による逸失利益の徹底的な交渉・立証まで、被害者様の尊厳を守るために全力で闘います。