交通事故で強い衝撃を受けると、腕や脚、肩などの骨折・脱臼を負うことがよくあります。 手術やギプス固定などの治療を経て「骨自体は癒合した(くっついた)」ものの、その後も後遺症として深刻な悩みの種となるのが、「関節が以前のように曲がらない・伸びない(機能障害)」と「ズキズキとした痛みが残る(神経障害)」という2つの問題です。
ここでは、骨折後に残る代表的な後遺障害の認定基準と、適正な等級を獲得するための測定時のポイントを解説します。
1. 関節が動かなくなる「機能障害(可動域制限)」の等級
関節の機能障害は、その重症度に応じて主に以下の3つの段階に分けられ、それぞれ異なる後遺障害等級(上肢・下肢)が定められています。
① 関節の「用を廃した」もの(第8級)
- 基準:関節が完全に強直してしまった(全く動かない)状態、または、健康な側の関節(健側)と比べて、動く範囲(可動域)が10%以下に制限されてしまった状態。
- 人工関節や人工骨頭を挿入し、かつ可動域が2分の1以下に制限された場合もこれに該当します。
② 関節の機能に「著しい障害を残す」もの(第10級)
- 基準:健康な側の関節と比べて、可動域が2分の1(半分)以下に制限されてしまった状態。
- 人工関節や人工骨頭を挿入した場合(可動域制限の程度を問わず)も、原則として10級に該当します。
③ 関節の機能に「障害を残す」もの(第12級)
- 基準:健康な側の関節と比べて、可動域が4分の3以下に制限されてしまった状態。
機能障害における「可動域測定」の最大の罠
機能障害の等級認定は、後遺障害診断書に記載された「関節の可動域の角度(数値)」のみによって非常に機械的かつ厳格に決定されます。 例えば、健側の可動域が180度の場合、患側が135度なら「4分の3」で12級ですが、136度と記載されてしまうと「非該当」になってしまうという、1度の違いが運命を分けるシビアな世界です。
ここで被害者が絶対に陥ってはいけない「罠」があります。 可動域の測定には、医師が手を添えて動かす「他動運動」と、患者が自力で動かす「自動運動」がありますが、自賠責の審査では原則として「他動運動」の数値が採用されます。
医師の中には、「少しでも曲がるようにしてあげたい」という親心から、痛がる患者の関節を無理やりグイッと力任せに曲げて角度を測定してしまう人がいます。これをされると、実際には痛くて生活で使えない角度まで「曲がった」としてカルテに記載され、本来もらえるはずの等級が認定されなくなってしまいます。 測定の際は、「痛みが走ったところで『痛いです、これ以上は無理です』と明確に医師に伝える」ことが極めて重要です。
2. 骨折部の「痛み」に対する「神経障害」の等級
関節の可動域制限(機能障害)の基準である「4分の3」には満たなかったものの、骨折した部位に慢性的な痛みや痺れが残ってしまった場合は、「神経障害」として後遺障害申請を行います。
- 第12級13号:骨折部が変形して癒合している、あるいはCTやMRI画像上で神経へのダメージが明確に確認できるなど、痛みの原因が客観的画像によって「証明」できる場合。
- 第14級9号:画像上の明らかな異常は乏しいものの、骨折という重大な外傷の事実、治療経過、症状の連続性などから、痛みが残っていることが医学的に「説明」できる場合。
画像検査(CT・MRI)の重要性
骨折後の機能障害や痛みを立証するためには、単なるレントゲン写真だけでは不十分なケースが多々あります。 レントゲンは骨の全体像を見るのには適していますが、関節内部の軟骨の損傷や、靭帯の断裂、骨の微細な癒合不全(くっついていない部分)を発見するためには、CTやMRIによる精密な画像検査が不可欠です。
機能障害の原因が「痛みで曲げられない(神経由来)」のか「骨や軟骨の癒着で物理的に曲がらない(器質的損傷)」のかを画像で明確に立証できなければ、審査機関から「自己申告で曲げていないだけだ」と疑われ、非該当にされてしまいます。
夕陽ヶ丘法律事務所では、症状固定の時期に合わせて「適正な可動域測定の受け方」をアドバイスするとともに、立証に必要な画像検査の指示出しなど、医学的ポイントを押さえた徹底的なサポートを行っています。骨折後の後遺症でお悩みの方は、測定前に一度ご相談ください。