交通事故において、シートベルトの強い締め付けや、バイク事故でハンドルが腹部に刺さるような激しい衝撃を受けると、骨折だけでなく、体内の重要な臓器(心臓、肺、肝臓、胃腸、腎臓、膀胱など)が破裂・損傷する「胸腹部臓器(きょうふくぶぞうき)の障害」を引き起こすことがあります。
外傷が治っても、一度損傷したり外科手術で一部を摘出した臓器の機能は完全には元に戻らず、一生にわたって食事制限、排泄の困難、呼吸の苦しさなどを抱えて生きていくことになります。これらの「見えない障害」に対する適正な等級認定の基準について解説します。
臓器別の主な後遺障害等級基準
胸腹部臓器の障害は、その機能の低下度合いや、日常生活・就労に与える影響の大きさによって、最も重い第1級から第13級まで幅広く分類されています。
1. 呼吸器(肺)の障害
事故による肋骨の多発骨折や肺挫傷、気胸などにより、肺の呼吸機能が低下した場合です。
- 動脈血酸素分圧(血液中の酸素濃度)の数値や、スパイロメトリー(肺活量の検査)の結果、および「坂道を登ると息が切れるか」「平地でも息が切れるか」といった運動耐容能によって、第1級、3級、7級、9級、11級に分類されます。
2. 循環器(心臓)の障害
心臓の筋肉や弁の損傷、ペースメーカーや除細動器の植え込みを余儀なくされた場合です。
- 心機能の低下の程度(METsなどの運動指標)や、ペースメーカーの植え込みの有無によって、第7級、9級、11級などに認定されます。
3. 消化器(胃、小腸、大腸、肝臓、胆嚢など)の障害
腹部への強い圧迫で臓器が破裂し、一部を摘出したり、人工肛門を造設した場合です。
- 胃:胃の大部分を切除し、消化吸収障害やダンピング症候群(食後のめまいや動悸)がある場合は第11級など。
- 小腸・大腸:人工肛門(ストーマ)を造設した場合は原則第9級。管理が困難な場合などは第7級以上。
- 肝臓・胆嚢:胆嚢を失った場合は第13級。肝機能の深刻な低下がある場合は程度に応じて上位等級へ。
4. 泌尿器(腎臓、膀胱、尿道)の障害
- 腎臓:片方の腎臓を摘出して失った場合は、もう片方が正常に機能していても第8級。両方の機能が低下して人工透析が必要になった場合は、その頻度によって上位の等級。
- 膀胱:膀胱の蓄尿機能が失われ、尿のコントロールができなくなった場合や、人工膀胱を造設した場合は第7級〜11級。
臓器障害における「逸失利益」の交渉リスク
内臓の損傷において、後遺障害慰謝料と並んで保険会社と激しく対立するのが「逸失利益(労働能力の喪失に対する補償)」の請求です。
例えば「片方の腎臓を摘出した(8級)」「脾臓(ひぞう)を摘出した(13級)」といったケースでは、等級基準上は後遺障害として認められます。しかし保険会社は、「残りの腎臓が動いているから、これまで通りデスクワークも力仕事もできるはずだ。だから労働能力は一切低下しておらず、逸失利益は支払わない(ゼロ円である)」と強硬に主張してきます。
弁護士による逸失利益の立証戦略
確かに「直ちに仕事ができなくなる」わけではないかもしれません。しかし、臓器を一つ失うということは、将来的に残った臓器に負担がかかって病気になった際のリスク(予備能力の喪失)が極めて大きくなり、疲労しやすくなるなど、目に見えない形で労働の質や耐久力に必ず悪影響を及ぼします。
夕陽ヶ丘法律事務所では、臓器喪失による潜在的なリスクや、日常生活での食事制限・感染症リスクによるストレスが、被害者の長期的な就労能力にいかにマイナスの影響を与えるかを医学的文献や過去の裁判例に基づいて精緻に立証し、保険会社の「逸失利益ゼロ」という主張を打ち崩します。
内臓に深刻なダメージを負うような重大事故に遭われた場合は、治療と並行して、できるだけ早い段階で当事務所の弁護士にご相談ください。将来の不安を払拭する最大限の賠償獲得をお約束します。