交通事故でむちうちや骨折などのケガを負い、治療が終わっても痛みが残ってしまった場合、「後遺障害等級」の認定申請を行います。
この時、被害者の多くが「相手の保険会社が等級を決めているのだろう」と誤解していますが、それは間違いです。後遺障害の審査と認定は、公正を期すために「自賠責損害調査事務所(正式名称:損害保険料率算出機構)」という第三者機関が行っています。
この機関がどのようなルールで審査を行っているのかを知ることが、適正な等級を獲得するための第一歩となります。
損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)とは?
損害保険料率算出機構は、「損害保険料率算出団体に関する法律」に基づいて設立された、非営利の公益法人です。 その下部組織として全国の主要都市に設置されているのが「自賠責損害調査事務所」であり、ここで交通事故の後遺障害に関する審査業務が専門に行われています。
相手の任意保険会社(事前認定)や、自賠責保険会社(被害者請求)に提出された後遺障害の申請書類は、すべて最終的にこの調査事務所へ送られ、調査・判断が下されます。
なぜ第三者機関が審査するのか?
もし加害者側の保険会社が自分で後遺障害の等級を決定できるとしたら、「賠償金の支払いを減らすために、すべて非該当にする」といった不公平な判断が横行してしまいます。 これを防ぐため、当事者(加害者・被害者・保険会社)の利害に関係のない中立な専門機関が、法律と医学的基準に則って客観的に審査する仕組みになっています。
知っておくべき「審査のルールと特徴」
自賠責損害調査事務所の審査には、被害者が絶対に知っておかなければならない「3つの鉄則」があります。
1. 徹底した「書面審査主義」であること
調査事務所の担当者や顧問医が、被害者と直接面談して「どこがどう痛むのか」を直接診察することはありません。審査はすべて、提出された「後遺障害診断書」「レントゲン・MRI画像」「カルテ等の医療記録」という書面とデータのみで行われます。 つまり、どれだけ日常生活で激しい痛みや不便を抱えていても、「書類に書いていないこと(画像に写っていないこと)は、存在しないものとして扱われる」という非常にドライな世界です。
2. 「他覚的所見」が極めて重視されること
被害者の「痛い」「しびれる」という自己申告(自覚症状)だけでは、原則として後遺障害は認められません。 審査では、その痛みを裏付ける医学的な証拠、つまりMRIの画像に神経の圧迫が写っているか、神経学的検査(スパーリングテスト等)で陽性反応が出ているかといった「他覚的所見」の有無が厳格にチェックされます。
3. 不明点があれば「医療照会」が行われること
提出された書類だけでは判断がつかない場合や、後遺障害診断書の記載に矛盾がある場合、調査事務所は被害者の主治医に対して直接「医療照会(質問状の送付)」を行うことがあります。この回答内容によって等級が大きく左右されるため、日頃から主治医と良好なコミュニケーションを取っておくことが重要です。
書面審査だからこそ「被害者請求」と「弁護士」が必要
「書面だけで判断される」ということは、逆に言えば「いかに調査事務所を納得させられる完璧な書類(証拠)を準備して提出するか」が勝負のすべてとなります。
相手の保険会社任せにする「事前認定」では、必要最低限の書類しか提出されないため、非該当になるリスクが高まります。 一方、弁護士に依頼して「被害者請求」を行えば、弁護士が医学的根拠を補強する意見書を作成したり、有利な検査データを意図的に追加添付したりと、書面審査の特性を逆手に取った戦略的なアプローチが可能になります。
「自分の痛みは、診てもらえれば絶対にわかってもらえるはずだ」という期待は捨ててください。確実な認定を勝ち取るためには、専門知識に基づく「書類の武装」が不可欠です。後遺障害申請をお考えの際は、夕陽ヶ丘法律事務所にぜひお任せください。