交通事故の被害の中でも、最も悲しく、ご家族に言葉に尽くせない絶望をもたらすのが、妊娠中の母親が事故に遭い、お腹の赤ちゃん(胎児)が死亡(流産・死産)してしまうケースです。
待ち望んでいた新しい命が、心無い加害者の過失によって突然奪われてしまった。 ご両親としては「我が子を殺されたのと同じだ。加害者に最大限の死亡慰謝料と賠償を請求したい」と考えるのは当然のことです。
しかし、この痛ましい事故における損害賠償のルールは、法律上、被害者の感情とは少し異なる特殊な扱いを受けることになります。
「胎児自身」に賠償請求権は認められない
日本の民法(第3条1項)では、「私権の享有は、出生に始まる」と定められています。つまり、法的な権利を持つ「人」として認められるのは「母体から生きて完全に生まれ出た瞬間」からである、というのが大原則です。
※例外的に、胎児が事故でケガをし、その後「生きて生まれた」後に後遺障害が残ったような場合は、胎児にも損害賠償請求権が認められます。
しかし、事故の衝撃によってお腹の中で亡くなってしまった(死産・流産)場合、法律上は「まだ人として生まれていなかった」とみなされるため、胎児自身には、死亡慰謝料や死亡逸失利益(将来稼ぐはずだった収入)を受け取る権利が発生しません。 したがって、親が胎児の死亡慰謝料を「相続」して請求するという形をとることは法的に不可能なのです。
「母親の傷害慰謝料の増額」として評価される
胎児自身に権利がないからといって、加害者が許されるわけではありません。 裁判実務では、流産や死産という結果を「母親(母体)に対する重大な傷害(身体の侵害)」であると法的に構成し、新しい命を失った両親の底知れぬ悲しみと絶望を、「両親(特に母親)自身の慰謝料の増額」という形でしっかりと賠償金に反映させます。
慰謝料はどれくらい増額されるのか?
事故のケガに対する通常の「傷害慰謝料(入通院慰謝料)」のベース額に対し、胎児死亡の慰謝料として上乗せされる金額の相場は、おおむね以下のようになっています。
- 妊娠初期・中期での流産の場合 通常の慰謝料に加え、+数百万円程度(100万円〜300万円前後など)の増額。
- 妊娠後期(出産間近)での死産の場合 出産が間近に迫っていた臨月などでの死産の場合、悲痛の度合いが極めて大きいと判断され、+500万円〜1,000万円以上という、より高額な増額が認められる傾向があります。
- 父親の固有の慰謝料 原則として母親の慰謝料に含まれて評価されますが、悲しみが特に甚大であると認められる場合は、父親自身にも数十万円〜数百万円の固有の慰謝料が別途認められるケースがあります。
将来の妊娠への影響(後遺障害)がある場合
もし、事故による骨盤骨折や子宮の損傷などによって、「今後、子供を産むことができない身体になってしまった」という場合は、重大な後遺障害(生殖機能の喪失・第8級など)として認定されます。この場合、別途高額な後遺障害慰謝料と逸失利益が請求の対象となります。
保険会社の「冷たい対応」からご家族を守るために
胎児を失ったご両親に対し、加害者の保険会社の中には「法律上、胎児はモノと同じ扱いなので死亡慰謝料は出ません。母親の打撲の治療費と少しの慰謝料だけです」といった、信じられないほど無神経で冷酷な説明をしてくる担当者が存在します。
このような心無い言葉に触れることは、ご両親の心の傷をさらに深くえぐる二次被害に他なりません。 夕陽ヶ丘法律事務所では、深い悲しみの淵にいるご両親に代わり、私ども弁護士が盾となって保険会社とのすべての交渉を遮断します。そして、失われた命の重さを決して軽視させず、過去の判例を駆使して「両親の精神的苦痛に対する最大限の慰謝料増額」を徹底的に追及いたします。 ご不安や怒りを抱え込まず、どうかまずは私どもにご相談ください。ご家族のお気持ちに寄り添い、全力でサポートさせていただきます。