交差点での信号待ち中などに、後ろから「コツン」と追突される軽微な交通事故。事故直後は「車に少し傷がついた程度で、体も痛くないし大丈夫」と思い、警察を呼んで物損事故として済ませてしまう方が多くいらっしゃいます。
しかし、交通事故における鉄則は「どんなに軽微な事故で、その時痛みがなくても、必ずその日(遅くとも数日以内)に整形外科を受診する」ことです。これを怠ると、後から取り返しのつかない不利益を被ることになります。
なぜ「直ちの受診」が絶対条件なのか?
交通事故の賠償実務において、加害者(保険会社)が被害者の治療費や慰謝料を支払うためには、「その怪我が間違いなく今回の交通事故によって生じたものである」という因果関係が証明されなければなりません。
「むちうち」の症状は数日後に遅れてやってくる
交通事故で最も多い「むちうち(頸椎捻挫・腰椎捻挫)」は、事故の強い衝撃で首や腰の筋肉・神経がダメージを受ける症状です。しかし、事故直後は興奮状態(アドレナリンの分泌)にあるため、痛みを感じにくいという医学的特徴があります。
そのため、事故当日は平気でも、翌朝起き上がれなくなったり、2〜3日後に首の痛みや頭痛、吐き気が急激に現れることが非常に多いのです。
初診が遅れると「因果関係」が否定される
もし痛みを我慢したり、仕事が忙しいという理由で事故から1週間〜10日経ってから初めて病院に行ったとします。 すると相手の保険会社は、「事故から1週間も経っているのだから、その首の痛みは事故のせいではなく、寝違えたか仕事で重い物を持ったからではないか?」と主張してきます。
法的な観点からも、事故から初診までの期間(空白期間)が空けば空くほど、事故と怪我の因果関係を証明することは困難になります。初診の遅れは、因果関係を否定され、治療費が一切支払われない(全額自己負担になる)最大のリスクなのです。
整骨院ではなく「整形外科」を選ぶべき理由
事故直後の初診は、接骨院や整骨院ではなく、必ず医師のいる「整形外科(病院・クリニック)」を受診してください。
- 診断書を書けるのは医師だけ: 警察に人身事故として届け出るための「診断書」を発行できるのは医師(整形外科医など)だけです。柔道整復師(整骨院)は診断書を書けません。
- 画像診断(レントゲン・MRI)が必要: 骨折や神経の圧迫がないかを確認するためにはレントゲンやMRI撮影が不可欠ですが、これらの医療行為も病院でしか行えません。
すでに受診が遅れてしまった場合は?
もしこの記事を読んでいる時点で事故から数日が経過しており、まだ病院に行っていない場合は、明日にでも直ちに整形外科を受診してください。
すでに保険会社から「時間が経ちすぎているので治療費の支払いは対応できない(一括対応の拒否)」と言われてしまった場合でも、健康保険を使って自費で通院を開始し、後から自賠責保険へ直接請求(被害者請求)を行うことで治療費を回収できる可能性があります。
このような複雑な交渉や手続きが必要になった場合は、一人で抱え込まず、交通事故に強い弁護士へ早急にご相談ください。弁護士が医学的証拠と法的なロジックを組み立て、保険会社に因果関係を認めさせるための交渉を行います。