交差点で発生する交通事故の中で、最も典型的なパターンのひとつが「右直事故(うちょくじこ)」です。
これは、交差点を「直進」しようとする車両と、対向車線から交差点を「右折」しようとする車両が衝突する事故のことです。この右直事故における過失割合の基本的な考え方と、交渉で争点になりやすいポイントを解説します。
右直事故の大原則:「直進車優先」
道路交通法上、交差点においては「直進車(または左折車)」が優先され、右折車は直進車の進行を妨げてはならないという明確なルールがあります。
そのため、青信号同士の交差点への進入で発生した右直事故の場合、基本の過失割合は「直進車 20:右折車 80」となります。
なぜ直進車にも「20%」の過失が問われるのか?
直進車側からすれば、「自分は青信号を真っ直ぐ走っていただけなのに、なぜ20%も悪者になるのか」と納得がいかないでしょう。 しかし、法律上、交差点を通行するドライバーには「右折してくる車がいるかもしれないと予測し、安全な速度と方法で進行する義務(交差点安全進行義務)」があります。衝突を避けられなかった以上、前方不注意などの軽微な過失があったとみなされ、20%の過失が割り当てられるのが裁判の基準となっています。
過失割合が大きく変動する「信号の色」
上記の「20対80」は、双方が「青信号」で進入した場合です。信号の色が変わるタイミングでの事故は、過失割合が劇的に変化します。
- 直進車が黄信号、右折車も黄信号で進入: 直進車70:右折車30(直進車の黄信号無視が重く見られます)
- 直進車が赤信号、右折車は青信号(または黄信号)で進入: 直進車100:右折車0(直進車の完全な信号無視です)
- 右折の矢印信号(青の→)が出ているのに直進車が進入: 直進車100:右折車0
※実際の事故では、「私は黄色で入った」「いや赤だった」という信号の色の食い違いが非常に多発します。この場合、ドライブレコーダーの映像がなければ決着がつかず、過失割合の交渉が泥沼化してしまいます。
交渉で揉める2つの「修正要素」
信号の色以外にも、以下の要素が証明できれば過失割合を有利に修正できます(修正要素)。
1. 直進車の「スピード違反(速度超過)」
右折車側が主張するケースです。「自分は直進車との距離が十分あると判断して右折を開始したが、直進車が猛スピードだったため衝突してしまった」という場合、直進車の速度違反(時速15kmオーバー、30kmオーバーなど)を証明できれば、直進車の過失を10%〜20%加算することができます。 証明にはドラレコ映像の解析や、実況見分調書のブレーキ痕の長さなどが用いられます。
2. 右折車の「既右折(きうせつ)」
直進車側が主張するケースです。「既右折」とは、衝突した時点で、すでに右折車が右折をほぼ完了しており、あとは交差点から出るだけという状態だったことを指します。 この場合、直進車側は「目の前にすでに車がいるのだから、止まるなり避けるなりできたはずだ」とされるため、直進車の前方不注意の過失が大きく問われ、基本割合から直進車側に不利に修正されることがあります。
交差点での右直事故は、一瞬の判断ミスや相手の違反行為が絡み合い、単純な「20対80」では片付かないケースがほとんどです。保険会社の提示額に少しでも違和感がある場合は、ぜひ夕陽ヶ丘法律事務所にご相談ください。