交通事故の損害賠償金(慰謝料や逸失利益など)は、原則として「治療がすべて終了し(または症状固定となり)、後遺障害の等級が確定し、相手方との示談交渉が成立した後」に、一括して支払われます。
しかし、重傷を負った場合や死亡事故の場合、治療や後遺障害認定の審査に数ヶ月から1年以上かかることも珍しくありません。 その間、被害者は仕事を休まざるを得ず、給料がストップしてしまうことがあります(※相手の保険会社が休業損害を毎月支払ってくれるケースもありますが、過失割合で揉めている場合などは支払われないことがあります)。
「示談がまとまるまで、生活費や住宅ローンが払えなくて家族が路頭に迷ってしまう……」 このような被害者の当面の経済的困窮を救うために、賠償金の一部を「前借り」できる制度が用意されています。
1. 最も迅速に受け取れる「自賠責保険の仮渡金制度」
加害者が加入している自賠責保険に対して、被害者が直接請求できる制度が「仮渡金(かりわたしきん)」です。
この制度の最大のメリットは、「過失割合や損害額の確定を待たずに、ケガの程度(診断書)を提出するだけで、極めてスピーディー(請求から1〜2週間程度)に一定のまとまったお金を受け取れる」という点です。
仮渡金の金額(上限額)
仮渡金の金額は、被害者の状況(ケガの程度)に応じて法律で定額が決められています。
- 死亡の場合:290万円
- 重傷(※)の場合:40万円 (※背柱の骨折、大腿骨や骨盤の骨折、14日以上の入院を要する傷害で30日以上の医師の治療を要する場合など)
- 中等傷(※)の場合:20万円 (※上腕骨や下腿骨の骨折、14日以上の入院、または30日以上の医師の治療を要する場合など)
- 軽傷の場合:5万円 (※11日以上の医師の治療を要する場合)
このお金は、あくまで最終的な賠償金(自賠責の保険金)の「前払い」です。そのため、最終的な示談がまとまった際に、確定した賠償総額から「すでに受け取った仮渡金分」が差し引かれて(充当されて)精算されます。
2. 任意保険会社との交渉による「内払い(一部払い)」
相手が任意の自動車保険に加入している場合、仮渡金のような定額制度とは別に、交渉によって賠償金の一部を事前に支払ってもらう「内払い(うちばらい)」という方法もあります。
例えば、「毎月の休業損害だけは、示談を待たずに生活費として毎月振り込んでほしい」「当面の入院雑費や交通費として〇〇万円を先に支払ってほしい」と保険会社に請求し、保険会社が合意すれば支払われます。 ただし、これは保険会社側のサービス(裁量)によるものであり、法律で義務付けられているわけではないため、過失割合で激しく揉めている場合などは「示談がまとまるまでは1円も払いません」と拒否されることもあります。
3. 「被害者請求」による自賠責限度額の回収
ケガの治療が長引いているが、すでにかかった治療費や休業損害がかなりの高額になっている場合。 この場合は、仮渡金(最大40万円)ではなく、自賠責保険に対する「本請求(被害者請求)」を途中で行うことで、傷害部分の限度額である「最大120万円」までの保険金を、示談を待たずに受け取ることが可能です。
生活の不安は弁護士にご相談ください
交通事故の被害に遭い、身体の痛みに加えて「明日の生活費がない」という経済的プレッシャーにさらされると、被害者は精神的に追い詰められ、「もう安い金額でもいいから早く示談して現金をもらいたい」と、保険会社の不当な提示額で妥協してしまいがちです。 これは保険会社が最も喜ぶシナリオです。
夕陽ヶ丘法律事務所にご依頼いただければ、生活費に困窮している状況をお伺いした上で、仮渡金の請求や、任意保険会社に対する強力な内払い交渉、さらには労災保険の休業補償の活用など、被害者様が示談まで安心して生活を持ちこたえるための「資金繰りの法的サポート」を行います。目先の現金のために、本来もらえるはずの数百万〜数千万円の賠償金を諦めないでください。