交通事故の示談交渉において、賠償金の額を大きく左右するのが「過失割合(かしつわりあい)」です。自分に過失(責任)があるとされた分だけ、相手から受け取れる賠償金が減らされてしまいます(過失相殺)。
この極めて重要な過失割合ですが、被害者の方から最も多く寄せられるのが「過失割合って、警察が決めるんですよね?」という誤解です。ここでは過失割合が決まる本当の仕組みを解説します。
警察は過失割合を「決定」しない
結論から言うと、警察が交通事故の過失割合を決定することはありません。
警察の役割は、あくまで「刑事事件としての捜査(どちらが道路交通法に違反したか、処罰の必要があるか)」を行うことと、「事故の状況を記録する(実況見分調書の作成)」ことだけです。 警察には「民事不介入」という大原則があるため、当事者間の「損害賠償の責任割合(=過失割合)」という民事上の問題に介入して決着をつける権限は持っていません。
現場の警察官が「これは相手が悪いね」と慰めてくれたとしても、それは法的な決定ではありません。
では、誰が過失割合を決めるのか?
過失割合を最終的に決定するのは、「当事者同士(あるいはその代理人である保険会社や弁護士)の話し合い(示談交渉)」です。
実務上は、以下のような流れで決まります。
- 保険会社の提示: まず、加害者側の保険会社が「今回の事故は、当社の顧客が80%、そちらが20%の過失です」と提示してきます。
- 基準となる本: 保険会社は適当に決めているわけではなく、過去の膨大な裁判例をまとめた「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(別冊判例タイムズ38号)」という本(通称:緑の本)に記載された基本の割合をベースに提示してきます。
- 合意(示談): この提示に対して、被害者が「それでいいです」と同意して示談書にサインすれば、過失割合が確定します。
なぜ保険会社の提示で揉めるのか?
保険会社は過去の裁判例(判例タイムズ)をベースにしていると言いましたが、なぜそこで被害者と揉めるのでしょうか?
理由は簡単で、「事故の状況(前提事実)」についての認識が当事者間で食い違うからです。 例えば、交差点での事故において、
- 加害者の主張:「相手(被害者)の信号は赤だった。だから過失割合は相手が100%悪い」
- 被害者の主張:「私の信号は青だった。だから過失割合は相手が100%悪い」 このように前提が違えば、当てはめるべき「判例タイムズ」のページが全く異なってしまいます。
保険会社は、当然ながら自社の顧客(加害者)の言い分をベースにして過失割合を計算し、被害者に突きつけてきます。保険会社の「これが過去の裁判基準です」という言葉は、「加害者の言い分が全て正しいと仮定した場合の基準です」という意味に過ぎないのです。
納得がいかない場合は絶対にサインしない
もし、保険会社から提示された過失割合が、あなたの認識している事故状況と違う場合は、絶対に同意(サイン)してはいけません。一度同意して示談が成立してしまうと、後から覆すことは極めて困難になります。
相手の言い分を崩し、正しい過失割合を認めさせるためには、ドライブレコーダーの映像や警察の実況見分調書などの「客観的な証拠」が必要です。過失割合で少しでも納得がいかない点があれば、すぐに夕陽ヶ丘法律事務所にご相談ください。私たちがあなたに代わって、正当な過失割合を主張します。