昭和23年(1948年)7月1日「予防接種法」施行と初期の集団接種の実施体制
旧予防接種法の制定背景、結核・天然痘等の集団予防接種義務化と注射器使い回しの始まり。
集団予防接種とB型肝炎感染の始まり
B型肝炎訴訟の背景には、かつての日本で行われていた集団予防接種という歴史的な事実が深く関わっています。昭和23年(1948年)に「旧予防接種法」が制定された当時、日本は戦後の混乱期にあり、結核や天然痘、ジフテリアなどの感染症が猛威を振るっていました。これらの感染症から国民の命を守るため、国は集団予防接種を義務化し、全国の市区町村で一斉に実施されることとなりました。
しかし、この集団予防接種の現場では、極めて重大な問題が起きていました。それが「注射器の使い回し」です。当時の医療現場では、現在のような使い捨て(ディスポーザブル)の注射器は普及しておらず、ガラス製の注射筒(シリンジ)と金属製の注射針を消毒しながら繰り返し使用するのが一般的でした。
なぜ注射器の使い回しが起きたのか
集団予防接種では、限られた時間内に数十人から数百人という非常に多くの児童や生徒に対してワクチンを接種する必要がありました。しかし、当時の医療現場では、十分な数の注射器が用意されていなかったり、消毒に手間がかかったりするという物理的な制約がありました。そのため、一人ひとりに新しい注射器を使用するのではなく、複数の児童に対して同じ注射器(注射筒や注射針)を連続して使用するという「使い回し」が日常的に行われてしまっていたのです。
この注射器の使い回しが、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染を広げる最大の原因となりました。B型肝炎ウイルスは血液を介して感染します。もし、使い回された注射器の前の順番の人がB型肝炎ウイルスの持続感染者(キャリア)であった場合、注射針や注射筒に微量の血液が付着し、それが次の順番の人に接種されることで、次々とウイルスが感染していくことになったのです。
国の責任と被害の拡大
このように、国民を感染症から守るために国が推進した集団予防接種が、結果としてB型肝炎ウイルスの集団感染という悲劇を引き起こしてしまいました。国は集団予防接種を実施するにあたり、注射器の使い回しによる感染の危険性を認識し、それを防ぐための適切な指導や対策を講じる義務がありました。しかし、十分な対策がとられないまま長年にわたって集団予防接種が続けられたことで、推定40万人以上とも言われる非常に多くの方々がB型肝炎ウイルスに感染することとなってしまったのです。
これが、後に国を相手取って争われることとなる「B型肝炎訴訟」の根本的な原因であり、出発点となりました。現在、給付金の対象となっているのは、昭和23年7月1日から昭和63年1月27日までの間に満7歳になるまでに集団予防接種等を受けた方々です。この期間に予防接種を受けた記憶がある方や、母子健康手帳に記録が残っている方は、給付金の対象となる可能性があります。
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