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夕陽ヶ丘法律事務所ブログ

2021/05/23

名義貸しの立証

名義貸しの立証

(1)梅旧院判決では、高裁は「名義貸しである」ことを認めました。
(2)お墓は宗教人や公共団体しか経営できません。名義貸しは違法であり、お墓(ビル型納骨堂)の許可の取り消し事由にも該当します。
(3)しかし、広告を出しているような墓地や、ビル型納骨堂のほとんどはグレーな形で運営されているという実体があります。
(4)他の弁護士の先生から、「名義貸し」をどのように立証したのか、というご質問を受けたために、以下、参考になればと思い解説致します。

名義貸しの定義

(1)名義貸しについては、厚生労働省の「墓地経営・管理の指針等について」では、以下のおうに表現されている。

(2)「名義貸し」については、その実態はなかなか究明できない場合もあり、何をもって具体的に「名義貸し」というのかは難しいが、問題となる事例としては例えば次のような場合が考えられる。まず寺院(宗教法人)に対して石材店等の営利企業(仮にA社とする。)が墓地経営の話を持ちかけ、この寺院はA社より資金その他について全面的なバックアップを得て墓地経営の許可を受ける。ところが当の寺院は墓地販売権を始めとした墓地経営については実質的に関与しない取り決めがA社との間で交わされている。そしてA社は墓地使用権とともに墓石を販売して多大な収益を得るが、これは一部を除いて寺院の収入とはならない。しかしながら、使用者とのトラブルについては、最終的な責任者は寺院にあるとしてA社は責任を回避する。そして、運営の安定性を欠いたままで、後には資金力のない寺院と墓地だけが残る、といったような事例である。
 出典 厚生労働省の「墓地経営・管理の指針等について」

(3)梅旧院事件では、営利法人が宗教法人を支配し、実質的な名義貸しであること、営利法人が宗教法人を支配し売り上げを全て吸い上げたこと、運転資金が確保されておらずビル型納骨の継続的な運営が難しい状態にあることが明言されています。

梅旧院事件での名義貸しのスキーム

(1)納骨堂の営業許可は宗教法人である梅旧院が取得しています。
(2)納骨堂の運営は、営利法人である光明殿が行っています。なお、対外的には、光明殿は「梅旧院から運営の委託を受けている。」と説明していました。(3)梅旧院が名目上所有している納骨堂には、光明殿の関係者が抵当権を設定されています。つまり、何かあれば、光明殿は、納骨堂を売却しその代金を取得できる状態になっていました。
(4)一般利用者からのお金は、光明殿の口座で受け取ります。光明殿は、立替えた経費を理由にそのお金を全て取得します。梅旧院に返金しません。
(5)納骨堂の名称は、「梅旧院光明殿」という名称を使っていました。対外的に、光明殿からお金を受け取っても不思議でないような外観を作っていました。

地裁判決と高裁判決

(1)地裁判決は「名義貸しではない。」と判断し、高裁判決は「名義貸しである。」と判断しました。
(2)弁護士として提出した証拠は一緒です。高裁では、熱心かつ、決算書の読める裁判官に巡り合えたのが、判断が分かれた理由だと思われます。「名義貸しである」との認定には、決算書は使われていませんが、判決文には裁判所がしっかりと決算書についての言及がされています。

高裁の判決

(1)高裁の判決では、以下の理由から名義貸しであると認定しました。
(2)光明殿が代金を受け取るが、光明殿は梅旧院に入金しなかった。(梅旧院所有の)納骨檀の建物に光明殿(及び代表者)に5億円の抵当権が設定されているのに、梅旧院が光明殿の委託契約を解除しておらず、梅旧院の代表者が納骨堂の経営の問題点を自覚していないこと。
(3)本人尋問で、梅旧院の代表者が「納骨堂の経営者は光明殿ある。」と述べていることを理由に、名義貸しであることを認定しました。

弁護士の主張

(1)弁護士は、以下のような事実から、納骨堂の経営者は光明殿であり、実態として名前貸しであると主張していました。
(2)本人尋問にて、梅旧院の代表者が「納骨堂の経営者は光明殿ある。」と認めていること。
(3)納骨壇の宣伝や、納骨檀で働く従業員の雇用、お客さん対応その他、納骨壇運営を全て光明殿が行っていること。
(4)本納骨檀の売上は全て光明殿が取得し、1円も梅旧院に渡されていないこと。
(5)光明殿は「納骨檀の売上は全て光明殿が取得していた理由について、光明殿が納骨檀の経費を立替ており、その費用(経費)と相殺していたからである。」と説明する。しかし、お金の流れとしては、光明殿が納骨檀の経営として、納骨檀の売上を全て自分で取得し、その費用を自分で支払ったのと同じである。光明殿はこれを会計上立替え金として計上しているに過ぎないこと。
 本当に相殺をしていれば相殺額を計算した書類が存在するはずであるが、これが存在しないこと。
(6)「光明殿が納骨檀の管理の委託先に過ぎない。」のであれば、光明殿の代表者が借入までして納骨壇の運営資金を拠出していることは不自然であること。(7)「光明殿が納骨檀の管理の委託先に過ぎない。」のであれば、梅旧院が、暴力団に資金供与していたとして法人税法違反・背任罪で逮捕された後も、納骨檀の管理を委託し続けるというのが不自然であること。
(8)納骨堂には、光明殿及び光明殿の関係者の抵当権が設定されている。光明殿はいつでも抵当権を実行して、納骨檀を売却する等の権限を有している。つまり、光明殿は、抵当権を通じて、本納骨檀を物権的に支配していると評価できること。

弁護士の立証活動

(1)納骨檀の経営の実態は、内部のものにしか分かりません。
(2)弁護士としては、名義貸しが疑われるとして、どうやって立証すればよいか、を考えなければなりません。
(3)文書提出命令にて、光明殿と梅旧院の業務委託契約(特に、業務委託の報酬の定め)や、決算書の提出を求めました。
(4)また、納骨堂や、梅旧院の不動産登記を取得すると、光明殿や、不自然な人物が抵当権を設定していることが分かりました。

決算書の分析

(1)私個人としては、決算書の分析については力を入れていました。おかげて、光明殿の決算書からは不適切な部分を多数見つけることができました。(2)決算書の読める裁判官・弁護士は意外に珍しいです。
(3)私は、公認会計士1名、税理士1名と顧問契約を締結しており、弁護士案件にて決算書を分析する必要がある案件では、個別に時間を頂戴して決算書の分析を頼んでいます。
(4)弁護士として分析する観点と、会計士として分析する観点は異なります。会計士に決算書を渡して分析を頼んでも、狙った回答はもらえません。自分で、決算書の本を何冊か読んで、自分なりの分析を伝えて、補足として意見をもらうような形でなければなかなか分析は進まないイメージです。
 私の場合には、弁護士案件で決算書が出てくるたびに、簡単な決算を読み漁り、自分の分析を、会計の専門家にぶつける方法で勉強してきました。
(5)例えば、決算書を分析した結果については、令和元年6月18日付の準備書面(6)で以下のような主張をしました。

本人尋問

(1)梅旧院及び光明殿の本人尋問(反対尋問)では、いろいろな事実を聞き出すことに成功しました。
(2)経営の実態について、何点か仮説を立てて、その仮説にしたがって、聞いてきました。梅旧院事件では、いろいろなことを語らせることに成功しました。(反対尋問にて、スタンダードなやり方ですが、事前検討をしたうえで、本人尋問を行いました。)

 例えば、光明殿が実質的な経営をしていたのであれば、梅旧院に売り上げの報告をしていないのではないかと推測し、梅旧院の代表者や光明殿の代表者に売り上げの報告はどのようにされているのか、を聞く等の質問を投げかけました。

 梅旧院に設定されている抵当権の権利者は、光明殿の代表者の関係者ではないか、と推測し、抵当権の設定者について聞く等の質問を投げかけました。

(3)尋問の結果として、例えば、梅旧院の代表者からは「納骨堂の経営者は光明殿ある。」と認める発言まで飛び出しました。
例えば、光明殿の代表者からは、「納骨堂に設定されている抵当権の権利者が光明殿の関係者であること」や、「納骨堂の運営資金が枯渇していること」等を聞き出すことができました。なお、枯渇の原因は、決算書上、光明殿の代表者が巨額の役員報酬をもらっていることが原因です。

結論

(1)名義貸しの立証は、①事実上の運営の指揮を誰がしていたのか、②お金の流れ(決算書の分析)、③問題が起きているのに、運営の委託契約を解除できていない事実や、④不動産の抵当権の有無を調べることになります。
(2)したがって、「名義貸し」を主張する弁護士としては、業務委託契約や、決算書の提出を求めて、これを分析していくことになると思われます。
(3)経営許可段階であれば、運営資金をどこから出す予定なのか等を中心に調査することになると思います。

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