ビル型納骨堂と途中解約
2021/05/24
墓地の使用契約の性質
(1)墓地の使用契約について、厚生労働省の「墓地経営・管理の指針等について」では、墓地使用権型、埋蔵管理委託型という二つの契約を紹介しています。
(2)墓地使用権型は、代々墓が子孫へと承継されていくことを前提とした墓地の契約を想定しております。これに対して、埋蔵管理委託型では、承継を前提としない墓地の契約を想定しています。
(3)一般的な墓地使用では、墓地使用権は承継されるものとの前提であり、墓地使用権型といわれます。
永代供養(墓地委託型)
(1)承継を前提としない、墓地の使用契約を埋蔵管理委託型と呼びます。誤解を招くネーミングですが、「永代供養墓地」と呼ばれることもあります。
(2)「永代」とのネーミングですが、相当な期間を過ぎれば改葬することが予定されていたり、経営者の判断で自由に改葬することができるとされていたりすることが注意が必要です。
(3)改葬とは、墓地等の遺骨を別の場所に移して供養することをいいます。墓地の経営者としては、契約が終了すれば、墓石を撤去し、遺骨を他の遺骨と一緒に別の場所で合葬することを予定しています。
契約書にて、「契約期間」が明記され、「その契約期間後に、どのように改葬するのか」が明記されかつ、一般の利用者十分に説明されているのであれば問題ありません。しかし、「墓を代々墓が子孫へと承継できる」ような宣伝をしながらも、墓地の経営者の判断で自由に改装できることになっているケースでは、法律的な問題があります。
ビル型納骨堂
(1)ビル型納骨堂では、いずれビルの立替が必要です。これはマンション問題と同じであり、建替え時に遺骨をどうするのかの定めを明確にしておく必要があります。
(2)私見ではありますが、ビル型納骨堂の場合には、立替計画等が定まっていない限りは、相続人等が使用権を承継することは難しく、墓地委託型の契約であると認定するべきだと考えます。
墓地の性質と返還請求権
1 途中解除と、使用料の返還請求
(1)納骨壇使用契約は建物賃貸借契約の性質を中心としつつ準委任契約の性質を併せ持つ混合契約であるとして、民法617条1項前段の適用又は類推適用及び借地借家法28条の反対解釈により,納骨壇の使用者は,いつでも本件納骨壇使用契約の解約の申入れをすることができる、という判例があります。(平成26年 5月27日 東京地裁)。
(2)これに対して、墓地使用契約については、一定期間の使用権を設定するものではなく、永続的ないし永代的な使用権を設定するものであり、墓地使用契約の解約を申し入れたとしても、墓地使用料の返還請求ができないという判例もあります(平成19年6月29日 京都地裁)。
(3)私見ではありますが、ビル型納骨堂については永続的を認めることは難しいというのは前述したとおりです。
2 梅旧院判決
(1)梅旧院判決では、原審は、納骨檀の使用期間の定めがなく、相続人が使用権を引き継ぐことができるものであり、賃貸借契約のように一定期間の使用権をせっていするものではない。つまり、納骨堂使用契約は永続的ないし永代的な使用権を設定するものである。したがって、途中解除をしても、使用料の返還が求められない、と判断されました。
(2)これに対して、高裁では、そもそも、代金相当額の不法行為請求が認められたために、途中解約については判断がされませんでした。
(3)もっとも、高裁では、納骨堂の使用契約について、改葬や、相続人等による使用権の承継について、審理のやり直しが行われました。
審理をやり直しをしたということは、高裁が原審の判断に疑問をもったということであり、実際にこの点が判断されていれば、結論は変わっていたものと信じています。
« 前の記事
名義貸しの立証次の記事 »
ハラスメント問題のいろいろな解決策