墓地等の経営許可の取消訴訟の原告適格
2023/05/12
判決の内容
(1)墓地、埋没等に関する法10条は、納骨堂を経営しようとする者は、都道府県知事や市長の許可を得なければならないと規定している。
(2)大阪市の規則では、「市長は、墓地等(納骨堂を含む)の300メートル以内に、学校、病院、人家から300メートル以内にあるときには、これらの生活環境を著しく損なう場合には、許可しない。」という趣旨の記載があった。
(3)以上の事実の前提で、大阪市において、納骨堂から300メートル以内の人家に居住するは、納骨堂の経営許可が適切であったか、本件許可の取消訴訟をすることができる(原告適格を有する)。
なお、「納骨堂の経営許可が適切であったか」は本件許可の取消訴訟において判断される問題です。
最判令和5年5月9日
判例タイムズ1513号72頁
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92062
解説
経営許可
(1)納骨堂を経営しようとする者は、都道府県知事等の許可を得なければなりません(墓地、埋没等に関する法10条)。
(2)例えば、納骨堂の許可が違法に取得された場合、都道府県知事等が許可を取り消すことができます。
原告適格
(1)第三者が、本件許可の取消訴訟をすることができる(原告適格を有する)でしょうか。
(2)本来的には、納骨堂の経営許可は、都道府県知事等と(納骨堂の経営許可を求める)申請者間の問題です。また、監督官庁が、適切に、許可を取り消す運用ができれば問題も生じません。
しかし、監督官庁には許可を出すノウハウはあっても、調査・取り消しのノウハウがなく、適切な取締ができていないのも現実です。
(3)そもそも、許可制度が取られているのは、(納骨堂の経営許可を求める)申請者間と、利用者や地域住民の利益のバランスを保つためであります。許可制度が一定の者の利益を守るためにあるのであれば、その一定の者についても、本件許可の取消訴訟をすることができる(原告適格を有する)と考えてよいでしょう。
(4)行政事件訴訟9条は、取消訴訟をすることができる(原告適格を有する)者を法律上の利益を有する者と規定しています。同条のいう(原告適格を有する)者にあたるかは、問題となる法律の趣旨によって決まります。
墓地、埋没等に関する法10条と、原告適格
(1)墓地、埋没等に関する法10条は、納骨堂を経営しようとする者は、都道府県知事や市長の許可を得なければならないと規定しています。
(2)大阪市の規則では、「市長は、墓地等(納骨堂を含む)の300メートル以内に、学校、病院、人家から300メートル以内にあるときには、これらの生活環境を著しく損なう場合には、許可しない。」という趣旨の記載がありました。
(3)以上の事実から、最高裁は、「大阪市において、納骨堂から300メートル以内の人家に居住するは、納骨堂の経営によって生活環境を損なう可能性があり、強い利害関係を有し、法律(墓地、埋没等に関する法)は、これらの者について法律上の利益を有する者と考えている。」と判断したものです。
本判決の射程
(1)大阪市の規則では、「市長は、墓地等(納骨堂を含む)の300メートル以内に、学校、病院、人家から300メートル以内にあるときには、これらの生活環境を著しく損なう場合には、許可しない。」という趣旨の記載がありました。
(2)同様の規定がある地域では、納骨堂から300メートル以内の人家に居住するは、納骨堂の経営許可が適切であったか、本件許可の取消訴訟をすることができる(原告適格を有する)ことを示した判例です。
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