梅旧院判決と墓地の許認可の諸問題
2021/04/17
初めに
(1)梅旧院判決は、①墓地の経営許可の問題と、②ビル型納骨堂の問題が顕在化した事案です。
(2)梅旧院には、暴力団との関わりを疑わせる事情があります。しかし、このことも、梅旧院事件が特殊な事案であることを示すものではありません。むしろ、墓地の経営許可の制度が現実にあっていないこと、合法的な形で経営することが難しいため、反社会的勢力の関与を招き易い土壌を作っているという事情があります。
(3)以下、梅旧院事件を通じて、①②の問題について解説します。
墓地経営の許認可
(1)お墓は宗教人や公共団体しか経営できません。名義貸しは違法であり、お墓(ビル型納骨堂)の許可の取り消し事由にも該当します。
(2)そもそも、お墓は永続性が必要な事業であります。お金儲けを前提とする営利法人が経営すれば、他の事業への投資などで破綻等するリスクがあります。そのため、名義貸しは違法とされています。
(3)例えば、厚生労働省は、「墓地経営・管理の方針等について」という指針を出しています。その中で、墓地の土地等の抵当権の設定も不適切だと指摘されています。抵当権が実行されれば、第三者の所有になるからです。
名義貸の問題
(1)お墓は宗教人や公共団体しか経営できません。宗教法人名義で許可を得て、実質的に営利法人がお墓を運営することを名義貸しといいます。名義貸しは違法であり、お墓(ビル型納骨堂)の許可の取り消し事由にも該当します。
(2)墓地を新設する場合には、多額の資金が必要です。広告するにも、新しい墓地を作るにも、多額の資金が必要ですし、宣伝等のノウハウが必要です。しかし、抵当権の設定が禁止されると、銀行から資金を借りて工事資金にあてることもできません。宗教法人にそのようなお金を出したり、宣伝していったりするノウハウがあるはずもありません。
(3)ビル型納骨堂を建設するには多額の費用がかかります。
(4)広告を出しているような墓地や、ビル型納骨堂のほとんどはグレーな形で運営されているという実体があります。
(5)合法的に経営することが難しいということは、反社会的勢力の関与を招き易い土壌を作ってしまっています。
(6)私見ですが法改正が必要だと考えます。法律があることによって、逆に、違法状態を招くことは大きな問題だと感じます。
梅旧院判決と名義貸の問題
(1) 梅旧院判決では、名義貸し状態であったことが認定されました。
(2)私が調べたなかでは、墓地(納骨堂)の経営について、名義貸しであるかどうかを当事者が争ったうえでこれを認められた判例を他にはしりません。
(3)名義貸しの認定には、お金の流れを掴むことが必要です。外部からはこれを判断することはできません。したがって、名義貸しを認定してもらうためのハードルはかなり高いといえます。
ビル型納骨堂
(1)ビル型納骨堂には、2つの問題があります。ビル型納骨堂は、墓地ではなく、エレベーターの維持費等の維持費がかかることと、いずれ立替が必要になることです。
(2)ビル型納骨堂の場合には運営費をプールし、運営計画がなければ、維持することができません。しかし、これを保証する制度はありません。
梅旧院判決では、「営利法人が全ての売上を吸い上げて、今後運営していくだけの資金がプールされておらず、今後の運営が現実的に困難である」ことが認定されています。
(3)ビル型納骨堂では、いずれビルの立替が必要です。これはマンション問題と同じであり、建替え時に遺骨をどうするのかの定めを明確にしておく必要があります。
この点は、梅旧院との契約では明確に定めはありませんでした。梅旧院判決では、この点を問題視しましたが、裁判所は何らの判断を示しませんでした。
利用者からすれば、永代供養をしてもらえると思っていたのに、遺骨を突然返されたり、ビル型納骨堂が取り壊されて遺骨がどこかに移動されてしまったりリスクがあります。
(4)今後、上記の2点については、何らかの法規制が必要です。
監督官庁の監督の不徹底
(1)梅旧院の事件では、運営会社が脱税事件で逮捕され、大きな新聞報道がされました。
(2)運営会社が売り上げを独占していることが推察され、名義貸しが疑われることが明らかであったにも変わらず、監督官庁は、未だに、名義貸しについての調査も、経営許可の取り消しもしていません。
墓地の運営許可の取消後の手続
(1)梅旧院判決の事実認定を前提にすれば、梅旧院の墓地(納骨堂)の経営許可は取り消されなければなりません。
(2)しかし、その後、墓地の利用者をどうやって保護していくかという、問題も未解決です。
(3)墓地(納骨堂)の経営許可を取り消すと問題が大きくなります。そのために監督官庁が目をつむっている部分も理解できなくないですが、これらも含めて、墓地(納骨堂)の経営許可が取り消し後の手続についても、ルール化することが必要です。
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