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民事訴訟

【基礎】権利能力なき社団と当事者能力、当事者適格

2025/04/16 更新

権利能力なき社団

1 権利能力なき社団の定義

 権利能力なき社団は、団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものをいう(最判39年10月15日民集18巻8号1671頁参照)。

2 権利能力なき社団の権能

(1)権利能力なき社団の権利義務は、構成員に総有的に帰属する。
(2)権利能力なき社団は、登記名義人にはなれないが、第三者の契約主体となることができる。
(3)権利能力なき社団の債務は、社団の財産だけが責任財産である。構成員は、その責任を負わない。
(4)つまり、権利能力なき社団は、登記の名義人なることを除いて、ほぼ法人と同じ権限を有している。

権利能力なき社団と当事者能力

(1)権利能力なき社団は、団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものをいう(最判39年10月15日民集18巻8号1671頁参照)。
(2)民事訴訟法28条は、当事者能力については民法の権利能力の規定に従うとしている。民事訴訟法29条の「法人でない社団」は、民法の権利能力なき社団と同じ意味である。
(3)権利能力なき社団は、民事訴訟法29条の「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるもの」の要件を満たす限りにおいて、当事者能力を有する。

代表者の定め

(1)民事訴訟法29条は、「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるもの」をしており、訴訟物となっている権利義務の処分権を有するのに必要とされる総会の議決等の手続を経ていることが必要である。
(2)権利能力なき社団の権利義務は構成員に総有的に帰属する。したがって、代表者が他人である構成員の権利義務について争うことになる。
 したがって、権利能力のない社団の代表者が社団を当事者とする訴訟をするには、社団の規約等において訴訟で問題となった目的物を処分するのに必要とされる総会の議決等の手続による授権を要する。

最判平成6年5月31日民集48巻4号1065頁

 権利能力のない社団の代表者が社団を原告として、構成員全員の総有に属する不動産について総有権確認請求訴訟の訴訟をするには、社団の規約等において当該不動産を処分するのに必要とされる総会の議決等の手続による授権を要する。なぜなら、総有権確認請求訴訟についてされた確定判決の効力は構成員全員に対して及ぶ。敗訴した場合には構成員全員の総有権を失わせる処分をしたのと事実上同じ結果をもたらすことになる上、社団の代表者の有する代表 権の範囲は団体ごとに異なり、当然に一切の裁判上又 は裁判外の行為に及ぶものではないからである。

当事者適格の問題

1 問題点

(1)権利能力なき社団や、民法上の組合について、これらに民事訴訟法29条によって権利能力を認めるとして、社団の判決がその構成員に及ぶ(組合の判決が組合員に及ぶ)根拠が問題となってきた。

(2)例えば、権利能力なき社団の権利義務は構成員に総有的に帰属する。したがって、権利能力なき社団が他人である構成員の権利義務について争うことになる。その判決の結果が構成員に及ぶ理由は何か。

2 固有適格説

 会社に対する判決が会社の社員に及ぶのと同じく、権利能力なき社団に対する判決はその構成員に及ぶ、という考え方である。

3 訴訟担当説

(1)法人でない社団は、その構成員のために、訴訟担当として当事者適格を与えられた、という考え方である。

(2)訴訟担当の判決の効力は、当事者である社団(115条1項1号)のみならず、その構成員にも及ぶ(115条1項2号)と説明する。

参考
 長谷部由起子ほか「基礎演習民事訴訟法 <第3版> 」7頁

 越山和広「ロジカル演習 民事訴訟法」 14頁

給付訴訟
 法人でない社団は、「その構成員全員に総有的に帰属する債権について、社団に給付せよとの給付せよ。」と求める訴訟をする原告適格が認められる。

登記請求権
(1)法人でない社団の財産について社団名義で登記することはできない。
(2)構成員全員の共同名義とするか、代表者の個人名義とするしかない。
(3)法人でない社団は、その構成員全員に総有的に帰属する不動産について、代表者名義へに登記せよとの訴訟をする原告適格が認められる(最判平成26年2月27日民集68巻2号192頁)。

法人でない社団の財産に対する強制執行
 権利能力なき社団の債務は、社団の財産だけが責任財産である。法人でない社団を被告とする判決等によって、社団の財産に強制執行できる。

参考

 岡口基一「要件事実マニュアル(第7版)第1巻 総論・民法1」190頁

民事訴訟法28条 (原則)
 当事者能力、訴訟能力及び訴訟無能力者の法定代理は、この法律に特別の定めがある場合を除き、民法(明治二十九年法律第八十九号)その他の法令に従う。訴訟行為をするのに必要な授権についても、同様とする。

民事訴訟法29条(法人でない社団等の当事者能力)
 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。

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