【基礎】当事者適格
2025/04/16 更新
当事者適格
(1)当事者適格は、訴訟物たる権利義務との関係において、訴訟の当事者となる資格である。
(2)当事者適格は、訴訟物たる権利義務の帰属主体に与えられるのが原則である。しかし、訴訟物たる権利義務の帰属主体に代わって、当事者適格が与えられる場合を訴訟担当という。
(3)当事者適格は、訴訟担当について議論がされてきた。
つまり、①訴訟担当が認められる要件、②訴訟担当に対する判決が、訴訟物の権利義務の主体に帰属する根拠、③訴訟物の権利義務の主体の手続保障の点が問題となってきた。
任意的訴訟担当と法定訴訟担当
1 訴訟担当の種類
(1)訴訟担当が認められる根拠について、訴訟物たる権利義務の主体からの授権に基づく場合(任意的訴訟担当)と、法律に基づく場合(法定訴訟担当)がある。
(2)法定訴訟担当にも、法律に基づく任意的訴訟担当と、法律に基づかない訴訟担当に分かれる。
2 法律に基づく任意的訴訟担当
法律に基づく任意的訴訟担には、民事訴訟法30条の選定当事者制度、サービサー法の債権回収会社、区分所有法の管理者がある。
参考
名津井吉裕ほか「事例で考える民事訴訟法 」90頁
3 法律に基づかない任意的訴訟担当を認める合理的必要性
(1)法律に基づかない任意的訴訟担当としては、業務執行組合員が、組合のための訴訟担当を行う場合がある。
(2)法律に基づかない任意的訴訟担を認めるためには、合理的必要性が要求される。なぜなら、任意的訴訟担当を広く認めると、第三者が他人の訴訟活動をすることができ、弁護士資格制度を骨抜きにしかねない。無資格者が訴訟活動を代行すれば、司法制度が混乱するからである。
最判昭和45年11月11日民集24巻12号1854頁は、法律の定めのない任意的訴訟担当を認めるには、弁護士資格制度等を骨抜きにしないこと、法律の定めがないくても任意的訴訟担当とする合理的必要性が必要であるとした。また、「業務執行組合員は、組合規約に基づいて、自己の名で組合財産を管理し、対外的業務を遂行する権限を与えられている」場合には任意訴訟担当を認めた。
4 法定訴訟担当
(1)法定訴訟担当については、債権者代位訴訟(民法423条)、差押債権者による取立訴訟(民事執行法155条、157条)、株主代表訴訟(会社法847)などがある。
遺言執行者、相続財産管理人などについては、法定訴訟担当か、代理人なのか争いがある。
(2)法定訴訟担当については、訴訟物たる権利義務の帰属主体の同意がないところで、第三者が訴訟をすることになるから、訴訟物の権利義務の主体の手続保障の点が問題となる。
参考参考
名津井吉裕ほか「事例で考える民事訴訟法 」106頁
権利能力なき社団や組合と当事者適格
1 問題点
(1)権利能力なき社団や、民法上の組合について、これらに民事訴訟法29条によって権利能力を認めるとして、社団等の判決がその構成員に及ぶ根拠が問題となってきた。
(2)例えば、権利能力なき社団の権利義務は構成員に総有的に帰属する。したがって、権利能力なき社団が他人である構成員の権利義務について争うことになる。その判決の結果が構成員に及ぶ理由は何か。
2 固有適格説
会社に対する判決が会社の社員に及ぶのと同じく、権利能力なき社団に対する判決はその構成員に及ぶ、という考え方である。
3 訴訟担当説
(1)法人でない社団は、その構成員のために、訴訟担当として当事者適格を与えられた、という考え方である。
(2)訴訟担当の判決の効力は、当事者である社団(115条1項1号)のみならず、その構成員にも及ぶ(115条1項2号)と説明する。
参考
長谷部由起子ほか「基礎演習民事訴訟法 <第3版> 」7頁
越山和広「ロジカル演習 民事訴訟法」 14頁