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民事訴訟

【基礎】弁論主義(第一テーゼ)と主要事実(評価根拠事実、権利主張の要否)

2025/04/21 更新

「弁論主義の第一テーゼ」と主要事実

(1)弁論主義の第一テーゼは、「裁判所は、①当事者の②主張しない③事実を裁判の基礎として採用してはならない。」という原則である。

(2)弁論主義は主要事実にのみ適用される、と言われる。したがって、弁論主義の第一テーゼは、「裁判所は、①原告も被告もどちらの当事者も②主張しない③主要事実を認定することはでない。」という意味と理解してよいだろう。

主要事実
 主要事実は、実体法上の権利の発生、変更、消滅を発生させる、法律上の要件(要件事実)に該当する具体的な事実である

弁論主義と不意打ち

(1)民事訴訟においては、当事者は裁判の基礎となるべき事実及び証拠の収集、提出において、当事者がこれを決定する権限を有し、その義務を負う。弁論主義の根拠は、民事訴訟で審理の対象となる紛争については、もともと当事者が自由に話し合って解決することができるものであるからである(私的自治説)。

(2)弁論主義の第一テーゼとして、裁判所は、①原告も被告もどちらの当事者も②主張しない③主要事実を認定することはでない、という原則がある。

(3)この原則は、主張されていない事実が認定されることはない、という形で、当事者に対し争点を明示し、判決による不利益を予告する機能を持っている。

(4)したがって、当事者にとって不意打ちになる場合には、弁論主義に違反にならない場合であっても、裁判所の釈明義務違反になることがある。

過失と評価根拠事実

1 間接事実説

(1)民法709条の「過失」が主張事実であり、これを基礎づける具体的事実は間接事実である、とする考え方がある。

2 主要事実説

(1)民法709条の「過失」は法的評価である。これを基礎づける具体的事実が主要事実である、とする考え方がある。

(2)その根拠は、証拠より「過失」を認定することはできないこと、つまり、過失を基礎づける具体的事実を審理の対象すべきということである。

3 両説のポイント

(1)例えば、後方より追突されたケースでは、相手方の過失の内容を具体的に主張することは限界がある。具体的な事実を主張事実であるとすると、当事者が前方不注意の過失を争っていたが、当事者がハンドル操作の当事者が主張していない場合に、裁判所が後者が真実であると考えても、この事実を認定できなくなるのは妥当でない、と考えれば、間接事実を採用することになる。

 交通事故ではこちらが実務である。(大島 眞一「〔改訂版〕交通事故事件の実務-裁判官の視点-」11頁)

(2)これに対して、当事者が主張していない事実を認定されれば、これが存在しないと争う機会を奪われることになり、不意打ちであると考えれば、主要事実説を採用することになる。

 司法研修所でも、主要事実説が通説である。

留置権、同時履行の抗弁権(権利抗弁)

(1)同時履行の抗弁を主張する(民法533条)には、同時履行の抗弁権を行使するという権利主張が必要である。

(3)留置権の抗弁を主張する(民法295条)には、①当該物によって生じた債権があること、②当該物を占有していること、③当該物が自分以外の所有物であること、④留置権を行為する、という権利主張が必要である。

(4)裁判所が権利抗弁を認定するには、当事者が権利行使を主張することが必要である。当事者がこれを主張していないのに裁判所がこれを認めることは弁論主義に反する。また、権利抗弁を主張するかは当事者の判断であるから、裁判所には、当事者に対し、権利抗弁を行使するかどうか確かめる義務はなく、これを確かめなかったとしても、釈明義務違反にもならない。

 留置権については、上記について判例がある(最判昭和27年11月27日民集6巻10号1062頁)

公序良俗違反

(1)民法90条の「公序良俗違反」は法的評価である。これを基礎づける具体的事実が主要事実である(主要事実説)。

(2)公序良俗違反に違反する権利とは反社会的な権利主張である。当事者が主張しないからといって、このような権利行使を認めることはできない。したがって、当事者のどちらかが、具体的な事実を主張していれば、民法90条違反の主張がなくても、裁判所は民法90条違反を認定できる(最判昭和36年4月27日民集15巻4号901頁)。

(3)もっとも、当事者にとっては、公序良俗違反に違反するかどうか、を反論する機会を与えなければ不意打ちとなる。したがって、弁論主義違反とならないが、釈明義務違反となるという考えが有力である。

(1)弁論主義違反になるかどうかは別にして、不意打ちにならないように、以下のように裁判所は釈明するのが妥当であろう。
(2)裁判所は、「当事者から民法90条の主張はないのですが、裁判所としては、民法90条違反の余地があるか審理すべきと考えています。まずは、被告が民法90条に違反する、との書面を出して下さい。その後に原告がこれに対する反論を出して下さい。」という形で、釈明するべきだろう。

参考
 岡口基一「要件事実マニュアル(第7版)第1巻 総論・民法1」264頁
(1)同様に、当事者の主張なく、裁判所が認定してよいとするものに、過失相殺(最判昭和43年12月24日民集22巻13号3454頁)がある

代理

(1)当事者の主張なく、裁判所が認定してよいとするものに代理(昭和33年7月8日民集12巻11号1740頁)がある。
(2)実務上は、契約の成否が争われた場合に、Yとの契約、Y代理人Aとの契約(代理)、表見代理人との契約について、どの法律構成をとっても、Yが契約を成立させようとしたことを推認させる事実の有無が争点となる。したがって、当事者が代理の主張をしなかったとしても、裁判所がこれを認めても当事者の不意打ちにはならない。
(3)もっとも、この判例の結論については反対する(弁論主義違反になる。)のが実務の考え方である。

参考
 岡口基一「要件事実マニュアル(第7版)第1巻 総論・民法1」228頁

所有権

(1)所有権の取得事由や、所有権喪失事由についても、当事者が主張していない事実を認定することは弁論主義違反である。

(2)なお、所有権確認訴訟においては、所有権所得原因ごとに訴訟物を構成するのではなく、所有権の存否が訴訟物となり、所有権一切の存否について既判力が生じる。したがって、後訴訟にて、当事者が主張していない主張を追加して、前訴訟で確定した所有権の存否について争うことは許されない。

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