旧予防接種法下での集団予防接種における市町村と都道府県の役割分担
昭和期における市町村長(実施主体)と都道府県(指導主体)の行政責任の法的解釈。
集団予防接種における国と自治体の行政責任
B型肝炎訴訟において、被害者(原告)が訴えた相手は「国(日本国)」です。しかし、実際に皆さんが子どもの頃に集団予防接種を受けた場所は、お住まいの市町村の小学校や保健所などであったはずです。なぜ、地元の市町村ではなく、国を相手取って裁判を行い、国が責任を負うことになったのでしょうか。その背景には、当時の法律に基づく行政の仕組みと責任の所在があります。
実施主体としての市町村と指導主体としての国
昭和23年に制定された旧予防接種法では、集団予防接種を実際に実施する責任(実施主体)は各市町村の長(市長や町長など)にありました。市町村長は、法律に基づいて住民に予防接種を受けるよう指示し、地元の医師などを手配して接種会場を運営していました。
一方で、国(厚生大臣)や各都道府県知事は、その予防接種が安全かつ適切に行われるように、市町村長や現場の医師を「指導・監督する」という役割を担っていました。つまり、現場での具体的な作業は市町村に任せつつも、全体の安全基準や方針を決定する権限と責任は国にあったのです。
なぜ国の責任が問われたのか
B型肝炎訴訟で争点となった「注射器の使い回し」は、ある特定の市町村だけで起きた特殊な事故ではなく、全国のあらゆる現場で日常的かつ組織的に行われていた慣習でした。
平成18年の最高裁判決などでは、「注射器の使い回しによる感染の危険性は医学的に明らかであったのだから、指導・監督する立場にある国は、全国の市町村や現場の医師に対して『絶対に使い回しをしてはならない(一人ごとに筒も針も交換すること)』と強く指導する義務があった」と判断されました。
つまり、現場で直接注射を打った医師や市町村の責任にとどまらず、全国的な安全管理を怠り、漫然と危険な状態を放置し続けた「国の重大な過失」が認められたのです。だからこそ、B型肝炎特措法による給付金制度は、特定の自治体からではなく、国が責任をもって全額を賠償する仕組みとなっています。
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