【対処法・弁護士の役割】たとえ運送会社のカルテが破棄されていても、過去に通院した「かかりつけ医」の診療録や、別の公的機関に残るデータなどを多角的に調査・収集することで、立証の道を開くことができます。個人での対応は困難を極めるため、証拠集めに精通した弁護士への早期相談が解決への最短ルートとなります。
日本を支える物流や移動のインフラとして、日々ハンドルを握ってきたタクシー運転手やトラックドライバーの皆様。ご自身やご家族の健康診断でB型肝炎ウイルスへの感染を指摘され、「過去の集団予防接種が原因かもしれない」と思い至る方もいらっしゃいます。
国に対してB型肝炎給付金を請求するためには、「一次感染者(またはその相続人)であること」、そしてそれを証明するための「客観的な証拠資料」を揃えなければなりません。
しかし、長年運送業界で働いてきた方々からよくいただくご相談の中に、「会社の健康診断の記録が見つからない」「運送会社から、もう保存期間を過ぎて廃棄したと言われた」という切実な悩みがあります。
ここでは、運送会社の定期健診記録が保存期間切れとなっている場合の対策や、かかりつけ医のデータ活用法について、実務に精通した視点から詳しく解説します。
タクシー・トラック運転手のB型肝炎給付金請求における立証の壁
B型肝炎訴訟を国に対して起こし、給付金を受け取るためには、主に以下の事実を証明する必要があります。
- 昭和16年(1941年)7月2日〜昭和63年(1988年)1月27日生まれであり、集団予防接種等の受ける機会があったこと(またはその二次感染者・相続人であること)
- 現在、B型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 母子感染や他の感染原因(輸血や覚醒剤の使用、性交渉など)がないこと(※母親がHBs抗原陰性であること、または年長きょうだいが全員陰性であること等の立証)
このうち、「持続感染していること」や「過去にカルテ等の資料が存在したこと」を証明する上で、会社の定期健診の結果やカルテは非常に強力な証拠となります。
特に、運送業界では労働安全衛生法に基づき、年1回(深夜業従事者などは年2回)の定期健康診断が義務付けられています。そのため、ドライバーとしての勤務期間中の健康診断において、肝機能検査の数値やHBs抗原検査の結果が記載されたカルテは、感染の事実を証明する極めて重要なパズルピースとなります。
運送会社の定期健診記録はなぜ保存期間切れになるのか?
「昔の勤務先から、健診カルテはもう残っていないと言われた」 このようなトラブルに直面する運転手の方は非常に多いです。
法律上、一般的な健康診断結果の保存期間については、労働安全衛生規則において「5年間」と定められています(※一部の特殊健診等を除く)。そのため、運送会社や事業所によっては、法律の定め通りに5年が経過した時点で古い健康診断データを順次シュレッダー等で処分しているのが実情です。
また、中小企業の多い運送業界では、経営者の交代や事業所の移転、さらには会社の倒産や廃業によって、過去の労務管理データ自体が完全に散逸してしまっているケースも珍しくありません。
「会社に記録がないなら、給付金請求はもう諦めるしかないのか…」と絶望される方がいらっしゃいますが、会社保管のカルテが廃棄されていたとしても、直ちに請求の道が閉ざされるわけではありません。
諦めるのは早い!かかりつけ医のデータ活用法と代替手段
運送会社の定期健診記録が保存期間切れであった場合、弁護士は以下のような代替手段や他の証拠収集ルートを模索します。
1. かかりつけ医(個人病院・クリニック)の診療録の調査
会社で受けた健康診断で異常値が見つかったり、再検査を指示されたりして、個人的に近くの病院やクリニックを受診した経験はありませんか?
会社が保管する健康診断のカルテの保存期間が切れていたとしても、ご自身が受診した「かかりつけ医」のカルテや診療録は、医療法に基づいて最低5年間(※病院の自主的な方針や電子カルテの普及により、それ以上の期間保管されていることも多い)保存されているケースがあります。
過去に「肝臓の数値が高い」「B型肝炎の疑いがある」と言われて受診した医療機関の診察券や、お薬手帳、古い領収書などが残っていれば、そこに当時のカルテ開示請求を行うための重要な手がかりが隠されています。
2. 健康保険組合や協会けんぽ等の公的記録の活用
会社の健康診断であっても、そのデータや結果の通知が、加入していた健康保険組合(組合健保)や全国健康保険協会(協会けんぽ)などの医療保険者に一部保管されているケースがあります。
弁護士が代理人となり、法的権限を用いてこれらの公的・半公的機関に対して照会を行うことで、当時の健診結果の断片や受診履歴が発見できる場合があります。
3. 他の病院での検査データの活用
ドライバーズドックなどの特殊な健康診断を受けていた場合や、年齢を重ねてから別の疾患(生活習慣病など)で総合病院を受診した際の血液検査データの中に、偶然B型肝炎ウイルスに関する検査結果が含まれていることがあります。
過去の入院・通院履歴をくまなく洗い出し、あらゆる医療機関からカルテを取り寄せることで、必要な立証資料を構築していきます。
弁護士とともに複雑な証拠集めを乗り越える
タクシーやトラックの運転手として働きながら、日々の激務の合間に、昔の健診記録やカルテを探し出すのは並大抵の苦労ではありません。「どこに連絡すればいいのか分からない」「会社が協力的ではない」と悩んでいるうちに、時間だけが過ぎてしまうことも少なくありません。
B型肝炎給付金の特措法に基づく提訴期限は2027年3月31日と定められており、残された時間は限られています。
B型肝炎訴訟・給付金請求に精通した弁護士であれば、会社保管の記録が保存期間切れであったとしても、かかりつけ医のデータの掘り起こしや、他の公的機関からの証拠収集、さらには不足する資料を補うための陳述書の作成など、総合的なアプローチで立証をサポートしてくれます。また、国から支給される給付金には弁護士費用補助手当(給付金額の4%)も上乗せされます。
「私の場合は古い記録がないから無理かもしれない」とご自身で判断してしまう前に、まずは一度、B型肝炎の給付金請求に詳しい弁護士へご相談ください。あなたのこれまでの歩みと、残された微かな手がかりから、確実に給付金への道を切り拓くための最善策を提案してくれます。

