この記事の要点まとめ
皮膚の加齢変化やケロイド化で痕が確認困難な場合における、他の代替資料(陳述書等)への移行。
予防接種を受けた証拠としての「管針(かんしん)の痕」
B型肝炎訴訟において、母子健康手帳や予防接種台帳が存在しない場合、満7歳までに集団予防接種等を受けたことを証明する重要な代替証拠となるのが「接種痕(腕に残る注射の痕)」です。
中でも、結核予防のためのBCG接種で用いられた「管針(スタンプ注射)」の痕は非常に特徴的です。管針は9本の短い針が円状に並んだ器具を腕に2回押し付けて接種するため、正常であれば「9個の点×2か所=合計18個」の痕が残ります。この18個の痕が確認できれば、集団予防接種を受けた強力な証拠として医師に「接種痕意見書」を作成してもらうことができます。
しかし、数十年の年月が経過する中で、「痕が完全に消えてしまった」「赤く盛り上がってケロイド状になり、18個の点が見えない」というケースも少なくありません。本記事では、管針の痕が確認できない場合の対策について解説します。
痕が消えたり、ケロイド化したりする理由
そもそも、なぜくっきりと残っていたはずの管針の痕が見えなくなってしまうのでしょうか。
1. 皮膚の加齢変化と自然退色
人の皮膚はターンオーバーを繰り返しており、浅い傷跡であれば年月とともに薄くなっていきます。管針の痕も同様で、特に皮膚の浅い部分にしか針が届いていなかった場合などは、30年、40年と経過するうちに自然に色が抜け、周囲の皮膚と同化して肉眼では確認できなくなることがよくあります。
2. ケロイド化による形状の変化
逆に、体質によっては注射の刺激に皮膚が過剰に反応し、傷跡が赤く盛り上がってしまう「ケロイド化」を起こす人がいます。ケロイド化してしまうと、本来18個の小さな点として残るはずの痕が、一つの大きな赤黒い塊のようになってしまい、管針特有の形状が判別不可能になってしまいます。
痕が確認できない場合の訴訟上の対策
「腕をいくら見ても注射の痕がない」「ケロイドになっていて18個の点が見えない」という場合でも、B型肝炎訴訟の給付金を諦める必要はありません。接種痕意見書が作成できない(あるいは不完全な)場合を想定し、別の方法で集団予防接種の事実を推認させるルートが用意されています。
代替資料(その他の証明書類)への移行
接種痕による証明が困難な場合は、以下のような資料を積み重ねることで、満7歳までに集団予防接種を受けたことを総合的に証明していきます。
- 住民票の除票・戸籍の附票:満7歳になるまで日本国内の一般的な市区町村に住んでいた(集団生活を送っていた)ことを証明します。
- 不存証明書・廃棄証明書:小学校の指導要録や健康診断票などの記録が、保存期間の経過によってすでに廃棄されていることを役所や学校に証明してもらいます。
- 具体的な陳述書(様式3-2):「〇〇小学校の体育館で注射を受けた」「痛くて泣いた記憶がある」など、予防接種を受けた当時の状況を本人自身の記憶に基づいて具体的に記述します。
- 目撃陳述書:当時の様子を知る親や、一緒に予防接種を受けた同級生などに、「確かに注射を受けていた」という証言を書いてもらいます。
国側も、加齢や体質によって接種痕が消えたり変形したりすることは医学的にあり得る事実として認識しています。そのため、痕がないという理由だけで直ちに給付が否定されるわけではなく、上記の代替資料をしっかりと揃えれば十分に認められる可能性があります。
自己判断せず、まずは医師の診察を推奨
「自分で見ても痕がないからダメだ」と自己判断するのは危険です。素人の目にはただのシミやシワに見えても、医師が診察室で専用のライトを当てて視診すれば、微かな色素沈着から「接種痕である」と認定できるケースも実際にあります。 まずは医療機関を受診し、医師の目でしっかりと確認してもらうことが重要です。
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