【基本】認否
2025/04/25 更新
民事訴訟での反論
(1)民事裁判では、相手方の書類について反論を書くのにルールがある。
(2)相手方の書面に対して、お互いに「①認める部分と②認めない部分を記載し、②認めない部分については、③事実はこうである。」と記載することになっている。
(3)民事訴訟法上は、「認否」について以下のとおり定めている。
認否
(1)一方当事者が事実を主張すれば、他方当事者は、その事実について認否する必要がある。
(2)事実の認否は、以下の4つである。
認める(自白)。否認する。不知(知らない)。沈黙である。
「請求原因(1)については認める。」「請求原因(1)は否認する。」「請求原因(1)は不知である。」と記載する。
(3)法的な主張については、「請求原因(3)については争う。」と記載する。
(4)否認する場合には、その理由(原告の主張が間違っており、真実(被告の主張は◯◯である))を記載しなければならない。(民事訴訟法規則79条3項)
民事訴訟法159条(自白の擬制) 1項 当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない。 2項 相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する。 3項 第1項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。ただし、その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは、この限りでない。 |
民事訴訟規則第79条(準備書面) 1項 答弁書その他の準備書面は、これに記載した事項について相手方が準備をするのに必要な期間をおいて、裁判所に提出しなければならない。 2項 準備書面に事実についての主張を記載する場合には、できる限り、請求を理由づける事実、抗弁事実又は再抗弁事実についての主張とこれらに関連する事実についての主張とを区別して記載しなければならない。 3 準備書面において相手方の主張する事実を否認する場合には、その理由を記載しなければならない。 4 第2項に規定する場合には、立証を要する事由ごとに、証拠を記載しなければならない。 |
認める(自白)の効果
1 裁判上の自白
(1)主要事実について認めると、裁判上の自白が成立する。
裁判所は、裁判上の自白が成立している事実については、そのまま存在すると認定しなければならない(審判排除効)。
(2)裁判上の自白が成立すると、以下の場合を除いてこれを撤回できなくなる。
①相手方の同意がある場合(最判昭34年9月17日民集13巻11号1372頁)
②刑事罰上罰すべき他人の行為により自白した場合(最判昭和36年10月5日民集15巻9号2271頁)
③自白が真実に反し、真実について錯誤があったときに限り、裁判上の自白を撤回できる(昭和25年7月11日民集4巻7号316頁)。
(3)真実でないことの立証がされれば、錯誤が推定される(最判昭和54年7月31日民集127号315頁)。
2 主要事実以外の自白
(1)主張事実以外の自白についても争いのない事実となるから、経験則上、裁判所はそれが真実であろうとして事実認定を進めていく。
(2)主要事実以外であるから、当事者はこれを争うときには、自白を撤回すべきであろう。
否認する。不知(知らない)。
(1)不知は事実を争ったものと推察される(民事訴訟法159条2項)。
(2)沈黙は、弁論の全趣旨から争っていると認められる時以外は自白したものとみなされる(民事訴訟法159条1項)。
(3)否認ないし不知とされた事実については、これの立証責任を負う者が立証することになる。
否認と、抗弁
(1)抗弁となるのは請求原因から生じる法律効果を妨げること、被告に立証責任があること、請求原因と両立することが必要である。
(2)両立しない事実であれば否認の理由である。
(3)否認の理由は主要事実ではない。
(4)抗弁は主要事実である。
弁論主義の第一テーゼや、裁判上の自白(審判排除効)は主張事実にのみ適用される。これらの分類は大切である。 |
実務と認否
実務と認否 1 認める。 事実を認める場合には、「◯◯という点は認め、その余は否認する。」という形で、認める部分を明示することが多い。争点だと認識していないような点について、認めてしまうことを避けるためである。 2 争点との関連性が不明である事実(認否の留保) 実務的には、「争点との関連性が不明である事実について、認否を留保する。」との認否もありえる。 3 争点との関連性が不明である事実(否認する) (1)実務的には、「争点との関連性が不明である事実について(認めるべき事実も含めて)否認する。」こともある。 (2)裁判所からは、争点と関連する事実については、しっかりと認否をとるように求めるが、争点と関連するか不明である場合については、上記のような対応にも寛大である。 4 「否認ないし不知」「否認ないし争う。」という書き方 (1)不知は事実を争ったものと推察される(民事訴訟法159条2項)。不知も否認も効力は同じである。 (2)したがって、「◯◯については否認ないし不知。」「◯◯については否認ないし争う。」と記載することもある。 5 「認める。」のか。「否認、不知」なのか。 (1)裁判所としては、結局、争いがあるのか、無いのか、が大事です。 (2)したがって、「認める。」のか。「否認、不知」なのかを書き分けることが大切です。 (3)逆に、裁判所にとって、「否認」なのか「不知」なのかは、ほとんど関心がありません。 |