【基礎】民法上の組合と当事者能力、当事者適格
2025/04/19 更新
民法上の組合
1 民法上の組合の定義
民法上、各当事者が、出資をして、共同の事業を営むことを約することによって、民法上の組合が成立する(民法667条1項)。
民法第667条 (組合契約) 1項 組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。 2項 出資は、労務をその目的とすることができる。 |
2 民法上の組合の権能
(1)民法上、組合財産は組合員の共有となる(民法668条)。
(2)組合は登記名義人にはなれないが、第三者の契約主体となることができる。
(3)民法上、組合の債務は、組合の財産が責任財産となるとともに、各組合員の固有の財産もその責任の対象となる(民法675条)。
訴訟の選択肢
(1)組合員全員で原告または被告となることができる。(この場合には、固有必要的共同訴訟となる。)
(2)判例は、代表者の定めがある民法上の組合は、民事訴訟法29条の「法人でない社団」として当事者能力を認められる(最判昭和37年12月18日民集16巻12号2422頁)。つまり、組合の名前で訴訟活動ができる(当事者能力)。
民法上、組合の債務については各組合員も責任を負う(民法675条)。組合に対する判決が各組合に及ぶのか、及ぶとしてどのような理屈なのかは議論がある。会社の判決が会社の社員に及ぶのと同じと考える考え方もあれば、業務執行組合員の訴訟行為が、組合のための訴訟担当だとすれば、組合に対する判決の効力は、当事者である社団(115条1項1号)のみならず、その構成員にも及ぶ(115条1項2号)と説明する考え方もある。 参考 「民事訴訟法判例百選(第6版〕)」20頁以下 |
(3)業務執行組合員は、組合規約に基づいて、自己の名で組合財産を管理し、対外的業務を遂行する権限を与えられていれば、組合財産に関する訴訟につき、任意的訴訟担当として、自己(業務執行組合員)の名前で訴訟活動ができる(最判昭和45年11月11日民集24巻12号1854頁)(任意的訴訟担当)。
任意的訴訟担当(業務執行組合員の訴訟行為が、組合のための訴訟担当)であると理解すれば、組合に対する判決の効力は、当事者である社団(115条1項1号)のみならず、その構成員にも及ぶ(115条1項2号)と説明することにある。
参考
岡口基一「要件事実マニュアル(第6版)第2巻 民法2」215頁
任意的訴訟担当を広く認めると、第三者が他人の訴訟活動をすることができ、弁護士資格制度を骨抜きにしかねない。無資格者が訴訟活動を代行すれば、司法制度が混乱するだろう。 最判昭和45年11月11日民集24巻12号1854頁は、法律の定めのない任意的訴訟担当を認めるには、弁護士資格制度等を骨抜きにしないこと、法律の定めがないくても任意的訴訟担当とする合理的必要性が必要であるとした。また、「業務執行組合員は、組合規約に基づいて、自己の名で組合財産を管理し、対外的業務を遂行する権限を与えられている」場合には任意訴訟担当を認めた。これは、平常時において当事者として業務遂行をしていた者に対し、紛争時においても当事者として活動することを認めるものであり、事情を一番知る者としてこれを認める合理的必要性があると判断したものである、との説明が可能である。また、合理的必要性がある場合に限って任意的訴訟担当を認めるのであれば、弁護士代理の原則にも反しないだろう。 参考 名津井吉裕ほか「事例で考える民事訴訟法 」89頁 |
業務執行組合員
(1)業務執行組合員となる要件は、①組合が成立していること、②組合の規約に基づいて、組合財産(組合員の合有となっている財産)について、対外的に組合の代表者として交渉する権限を与えられていること、③組合の代表者として対外交渉(訴訟活動)をすることを示していることである(民法670条)。
(2)また、任意的訴訟担当として、業務執行組合員が、業務執行組合員の名で組合財産(組合員の合有となっている財産)について訴訟活動をするには、法律の定めのない任意的訴訟担当を認める合理的必要性として、「業務執行組合員に対し組合規約に基づいて、紛争の対象となっている組合財産を処分する権限が与えられている。」ことが必要とされる(最判昭和45年11月11日民集24巻12号1854頁)。
参考
岡口基一「要件事実マニュアル(第6版)第2巻 民法2」215頁
民法670条(業務の決定及び執行の方法) 1項 組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行する。 2項 組合の業務の決定及び執行は、組合契約の定めるところにより、一人又は数人の組合員又は第三者に委任することができる。 3項 前項の委任を受けた者(以下「業務執行者」という。)は、組合の業務を決定し、これを執行する。この場合において、業務執行者が数人あるときは、組合の業務は、業務執行者の過半数をもって決定し、各業務執行者がこれを執行する。 4項 前項の規定にかかわらず、組合の業務については、総組合員の同意によって決定し、又は総組合員が執行することを妨げない。 5項 組合の常務は、前各項の規定にかかわらず、各組合員又は各業務執行者が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときは、この限りでない。 |
組合の代表者
(1)民事訴訟法29条は、「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるもの」をしており、代表者への授権が求めらてている(法人でない社団の代表権の問題)。
(2)したがって、適切な代表権が与えられているとうには、「組合規約に基づいて、紛争の対象となっている組合財産を処分する権限が与えられている。」ことが必要となるだろう。
参考
岡口基一「要件事実マニュアル(第6版)第2巻 民法2」213頁