【基本】訴訟と時効
2025/04/14 更新
時効
(1)実務上は、時効のチェックから始まる。1番大事な問題である。
(2)最低限は以下をチェックする。そして、
消滅時効
(1)権利を行使できることを知ったときから①5年を経過して、②援用の意思表示がされると、時効により債権が消滅する。
民法166条(債権等の消滅時効) 1項 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。 一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。 二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。 2項 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する (省略) 民法167条(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効) 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1項第2号の規定の適用については、同号中「10年間」とあるのは、「20年間」とする。 |
(2)不法行為については、権利を行使できることを知ったときから②3年(生命身体については5年)を経過して、②援用の意思表示がされると、時効により債権が消滅する(民法724条、724条の2)。
民法724条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効) 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。 一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。 二 不法行為の時から20年間行使しないとき。 民法724条の2(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効) 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。 |
債務の承認
(1)債務の一部の弁済、期限の延長の申し出など、債務の存在を認める行為は、債務の承認となる(民法152条1項)。
(2)債務の承認があれば、時効の更新が成立する。債務の承認をしたときから、新たな時効が進行する(152条1項)。
参考
岡口基一「要件事実マニュアル(第7版)第1巻 総論・民法1」310頁
民法152条(承認による時効の更新) 1項 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。 2項 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。 |
時効の完成猶予
催告
(1)内容証明等で請求することは民法150条の「催告」である。その請求から6ヶ月以内に訴状が裁判所に提出されたときは、時効は完成猶予となる(民法150条)。
(2)時効の完成猶予の効果は、内容証明等の請求が相手方に届いたときである。
訴訟提起
(1)訴訟提起は、民法147条1項1号の「裁判上の請求」である。訴状が裁判所に届いた時点で、時効は完成猶予となる(民法150条)。
(2)なお、時効の完成猶予の効果は、訴状が被告に届いたときではなく、訴状が裁判所に届いた時点に生じる。
参考
岡口基一「要件事実マニュアル(第7版)第1巻 総論・民法1」313頁
協議を行う旨の合意
(1)時効完成前に、「一定の期間だけ時効を完成させずに話し合いをする。」という合意ができる(民法151条)。
(2)1年間もしくは1年間以内の合意した期間まで、時間の完成を猶予できる。
民法151条 (協議を行う旨の合意による時効の完成猶予) 1項 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。 一 その合意があった時から一年を経過した時 二 その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時 三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時 2項 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年を超えることができない。 3項 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。 4項 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。 5項 前項の規定は、第一項第三号の通知について準用する。 |
判決等で確定した権利
判決が確定した場合、裁判上の和解が成立した場合、時効は10年となる(民法169条)。
民法169条(判決で確定した権利の消滅時効) 1項 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。 2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。 |