【基本】訴訟要件
2025/04/14 更新
訴訟要件
(1)訴訟要件とは、本案判決をするために必要な要件である。
(2)訴訟要件は、本案審理よりも先に審査すべきである。しかし、現在の手続では、訴訟要件の審査を経てから本案の審理に入るという二段階構造は取られていない。したがって、両方を同時に審理することもできる。
(3)訴訟要件を欠くことが明確になれば訴えは却下される。
口頭弁論終結時までに訴訟要件を満たせば、本案判決をすることができる。
訴訟要件が充足しているか不明であるが、本案について請求棄却となることが分かった場合に、請求棄却判決を出せるかは争いがある。
(4)訴え却下判決では、訴訟要件の存否について既判力が認められる。例えば、訴えの利益、当事者適格の存否の判断について既判力が及ぶ。
参考
勅使川原和彦「読解 民事訴訟法」 8頁、9頁
岡口基一「要件事実マニュアル(第7版)第1巻 総論・民法1」135頁以下
訴訟要件の具体例
訴訟要件としては、次のようなものがある。
【裁判所に関するもの】
(ア) 事件につき日本に国際裁判管轄権があること
(イ) 当事者が日本の裁判権に服すること
(ウ) 事件が法律上の争訟に当たり、司法の審判権の範囲内に属すること
【当事者に関するもの】
(ア)当事者が当事者能力を有すること
(イ) 当事者が当事者適格を有すること
【訴え又は請求に関するもの】
(ア)訴状の送達が有効であること
(イ)訴えの利益が認められること
(ウ) 重複する訴えの提起の禁止 (法142条)、再訴の禁止 (法262条 2項)など法律上その訴えが禁止されていないこと
(エ)仲裁合意(仲裁法13条1項, 14条1項)、不起訴の合意など当事者の合意によりその訴えが禁止されていないこと
管轄権
(1)管轄権も訴訟要件に挙げられるが、管轄違いの場合、裁判所としては申立てにより又は職権で事件を移送すべきである (法16条)。 もっとも、専属管轄以外のケースでは、応訴管轄が生じる場合がある (法12条)。
参考
司法研修所監修「民事訴訟第一審手続の解説 第4版 事件記録に基づいて」22頁以下
訴訟要件の審理
(1)訴訟要件の審理は、実体判断の審理と同時に行うこともあるし、訴訟要件の審理を先に行うこともある。
(2)実体判断(請求棄却)の方が先に審理できるのであれば、訴訟要件を確認せずに請求棄却の判決をすることもできる。
参考
岡口基一「要件事実マニュアル(第7版)第1巻 総論・民法1」125頁