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民事訴訟

【基礎】弁論主義(第ニテーゼ)裁判上の自白

2025/04/20 更新

弁論主義の第一テーゼ

(1)弁論主義の第一テーゼは、「裁判所は、当事者間に争いのない事実は、そのまま裁判の基礎として採用しなければならないてはならない。」という原則である。

(2)弁論主義の第一テーゼは、「裁判上の自白の要件と、効果」として議論される問題である。

(3)したがって、なお、裁判上の自白については、(ア)不要証効、(イ)審判排除効(裁判所に対する拘束力)、(ウ)不可撤回効力(当事者に対する拘束力)の3つが含まれている。

裁判上の自白

(1)裁判上の自白は、当事者が口頭弁論または弁論準備手続においてする、相手方の陳述と一致する自己に不利益な事実の陳述をいう。

(2)裁判上の自白の成立要件は、①相手方の主張と一致すること、②口頭弁論または弁論準備手続における主張であること、③事実の主張であること、④自己に不利益な主張であることである。

①相手方の陳述と一致すること

(1)両当事者の陳述が一致していることが必要であり、その先後は問わない。

(2)一方が不利益な陳述をした後に、相手方が同内容の陳述をした(相手方の陳述した事実を認めた)

②口頭弁論または弁論準備手続における主張であること

(1)「主張されている」とは、訴状、答弁書、準備書面(以下、「主張書面」という。)に事実が記載されて、期日にて、例えば、当事者が「準備書面のとおり陳述します。」と口頭で述べたことが必要である。

 また、期日にて、例えば、当事者が口頭で「時効を援用します。」と陳述し、裁判所が手続調書にその旨を記載する方法で、「主張する」こともある。

(2)例えば、証拠として提出されている契約書等から判明している事実であっても、それは、当事者が主張した事実ではない。

 尋問手続で、当事者が証言した内容(から判明している事実)も証拠である。それは、当事者が主張した事実ではない。

③事実の主張であること

1 主張事実に限られるのか。

(1)(ア)不要証効については、間接事実、補助事実についても裁判上の自白が成立する。
 これに対して(イ)審判排除効、(ウ)不可撤回効は、主要事実に限られる。

(2) これに対して、(イ)審判排除効、(ウ)不可撤回効力についても、主要事実だけでなく、重要な間接事実についても、弁論主義の対象となる、という考えもある。

(3)主要事実だけが弁論主義の対象となるのは、間接事実は、主要事実の推認に役立つ事実であり、証拠と同じ働きをする。例えば、Aさんが金回りがよくかったという間接事実があるとして、これに弁論主義が適用された結果、裁判所が他の証拠との関係で真実と違うと考えたとしても、その事実認定しなければならなくなるからである。

 釈明権の議論では、「裁判所には司法権として、事実を解明しその真実に適合した判決をする責任がある。」とされています。私見にはなりますが、裁判所がある事実認定できない、もしくはある事実を認定させられるということがあれば、証拠に基づいて、裁判所が正しいと思える事実を認定することができなくなるという危惧が問題視されているようである。

(4)間接事実について、弁論主義の対象となる、という考え方からは以下の反論がありえる。

 例えば、Aさんが金回りがよくかったという間接事実について、当事者がこれを争わないのであれば、裁判所は、経験則上その事実は存在すると考えるべきである。この経験則をルールとしても自由心証主義に反しない。

 民事訴訟については紛争の長期化を避けるためには、争点をしぼることが有益である。つまり、当事者が争わない間接事実についてもは、裁判所がその存在を前提に認定してもよい。」と考えて、争点を減らすことが有益である。したがって、間接事実についても裁判上の自白が成立することを認めるべきである。

(5)実務上は、主要事実だけが弁論主義の対象とする。しかし、例えば、Aさんが金回りがよくかったという間接事実について、当事者がこれを争わないのであれば、当事者としては、「裁判所もその事実は存在するものとして考える」と予想している。
 したがって、裁判所は、「この点は当事者が争いのない事実としているのです。しかし、裁判所としては、△△の証拠からすれば、☓☓とのではないか、という疑問を持っています。当事者双方ともこの点について主張を補充する書面を出して下さい。」という形で、釈明されるのが通常です。

 裁判所にっても、当事者の主張する事実や証拠を頼りに裁判を進めるしかありません。したがって、裁判所からしても、争いのない事実については、これと事実が真実であると考える状況はほとんどありません。イレギュラーがない限りは、「間接事実について、弁論主義の対象となる。」のと同じ状態で審理が進みます。
 しかし、裁判所が自由に事実を認定できなければ(争いのない間接事実であっても、これに反する事実も認定できなければ)、より妥当な解決(判決)を出すことができません。したがって、判決(裁判所の認定)について予見を与えて反論の機会を付与しつつ、弁論主義の適用される場面は主要事実に限る、という結論をとっています。

参考

 越山和広「ロジカル演習 民事訴訟法」 70頁以下
 長谷部由起子ほか「基礎演習民事訴訟法 <第3版> 」95頁以下

2 権利自白を認めるか。

(イ)審判排除効、(ウ)不可撤回効の場面では、権利自白を認めるか問題となる。

 これは、当事者が、争点の前提となる法律関係について主張が一致している場合に、当事者が主張する内容に、審判排除効(裁判所はその存在を認めなければならないのか。)、(ウ)不可撤回効力(当事者が主張を主張を撤回することは認められないのか。)が認められるか、問題となる。

 例えば、法定利率が間違っている場合には、裁判所は、法律を正しく適用する義務があるので、これに拘束されない。

 例えば、所有権については日常会話でも使われ、一般人も、その人が所有するという言葉の意味を理解している。例えば、10年前からAが土地の所有者であったことを前提に、AからBへの所有権移転が争点となっている場合には、Aの所有であったという所有権について権利自白を認めてもよいだろう。

 参考

  越山和広「ロジカル演習 民事訴訟法」 70頁以下

④自己に不利益な主張

1 不利益要件が問題となる場面

(1)不利益要件は、 不可撤回効力によって、どちらの当事者が撤回不可能となっているのか、を明確にする要件である。そうだとすれば、不可撤回効力が問題になっている場面でのみ問題となる要件である、と考えることもできる。

(2)④自己に不利益な主張であることは裁判上自白の要件であるという考え方もあれば、不可撤回効力が問題になっている場面でのみ問題となる要件である、との考え方もある。

 不利益な主張

(1)不利益な主張とは、立証責任を負う事実の主張である、という考え方(立証責任説)と、相手方が立証責任がある事実を、反対当事者が認めた場合にその撤回を含む(敗訴可能性説)という考え方もある。

参考

 勅使川原和彦「読解 民事訴訟法」 59頁、63頁

 長谷部由起子ほか「基礎演習民事訴訟法 <第3版> 」92頁以下

(ア)不要証効

(1)当事者の間で争いのない事実は、当事者が立証しなくても、裁判所はその存在を認定できる(179条)。

(2)証明不要効を考えるうえでの、裁判上の自白の成立要件は、①相手方の主張と一致すること、②口頭弁論または弁論準備手続における主張であること、③事実の主張であることである。

(3)証明不要効の場面では、③の事実の主張については、主要事実だけでなく、間接事実や、補助事実も対象となる。

民事訴訟法179条(証明することを要しない事実)
 裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。

参考

 勅使川原和彦「読解 民事訴訟法」 45頁

(イ)審判排除効

(1)審判排除効力とは、裁判所は、裁判上の自白が成立している事実については、そのまま存在すると認定しなければならない、という効力である。

(2)審判排除効力を考えるうえでの、裁判上の自白の成立要件は、①相手方の主張と一致すること、②口頭弁論または弁論準備手続における主張であること、③事実の主張であることである。

(3)(イ)審判排除効、(ウ)不可撤回効の場面では、③事実の主張は、主要事実に限られる。

(ウ)不可撤回効

1 不可撤回効の効果

(1)主張の撤回は本来自由である。不可撤回効は、裁判上の自白が成立すると、当事者はその撤回ができなくなる(不可撤回効力)、という効力である。

2 撤回が許される場面

(1)裁判上の自白の撤回が許されるのは、以下の場合である。

 ①相手方の同意がある場合(最判昭34年9月17日民集13巻11号1372頁)

 ②刑事罰上罰すべき他人の行為により自白した場合(最判昭和36年10月5日民集15巻9号2271頁)

 ③自白が真実に反し、真実について錯誤があったときに限り、裁判上の自白を撤回できる(昭和25年7月11日民集4巻7号316頁)。

(3)真実でないことの立証がされれば、錯誤が推定される(最判昭和54年7月31日民集127号315頁)。

参考
 名津井吉裕ほか「事例で考える民事訴訟法 」134頁以下

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